憂慮される中国の核燃料サイクル関連施設
イスラエル・米国によるイランの原子力関連施設攻撃でも明らかなとおり(本誌10ページ)、原子力の平和利用と核開発には密接な関連性がある。近年、中国では大規模な核燃料サイクル施設開発が進んでいる。本稿では、核兵器国中国で、いったいどのような施設が建設されているのか、概要を衛星写真を用いて紹介したい。
【1】 CFR-600

まず紹介したいのは中国が福建省で建設中の高速増殖炉CFR-600(2基)である。図1を見ると、2014年には島だった場所が埋め立てられて完全に変貌したことがわかる。高速増殖炉はその名の通り、プルトニウムを増殖できる原子炉で、かつて日本には高速増殖原型炉もんじゅが存在した。中国の説明によれば、この炉は高速炉の増殖能力実証のための実証炉である。増殖されるプルトニウムは核分裂性の比率が極めて高く、核兵器に使いやすい。CFR-600用の燃料は2018年6月に中露間で締結された協定に基づきロシアが供給する。2022年に初期燃料は提供済みである。なお協定によると、提供した燃料やCFR-600で生成されるプルトニウムも平和利用に限定されることになっている。ただしどのように転用を防ぐのかは不明だ。
2025年の写真を見ると、上側から排水が放出されている。中国側は未発表だがCFR-600はすでに稼働していると推定できる。筆者が衛星画像を確認したところ、2023年夏頃から排水が放出されていることから、このころから1号機が試運転を開始したと思われる。2号機は衛星写真から建設中であることが確認できるが、かなり完成に近づいている。
【2】 404工場

甘粛省にある404工場は核兵器用のプルトニウム生産工場だった。プルトニウム生産用の黒鉛炉である801原子炉(1960年建設開始、1966年初臨界、1986年運転終了)、軍事用パイロット再処理施設である717工程(1968年運転開始、1970年運転終了)、大型再処理施設である418工程(1970年運転開始、1987年運転終了)という3つの軍事施設が存在した。1987年、当時の李鵬副総理が404工場の再処理中止と軍民転換、民生用再処理工場の建設という方針を示し、運転を終了したとみられる。いずれの原子炉も1990年に廃止措置が始まった。
404工場は現在、中国核工業集団公司傘下の中核404有限公司が運営している。同社の会社概要には、「原子力施設の廃止措置および放射性廃棄物の管理、核燃料の処理および核廃棄物の処理、原子力工学の設計、技術の研究開発、実験および技術試験などの事業に従事している」と記載されている。
2013年の衛星写真を見ると、施設は大きく3つのエリアに分かれることが確認できる。左側が原子炉エリア、真ん中が717工程エリア、右側が418工程エリアである。一方、2024年の衛星写真では、原子炉エリアは廃炉に伴う廃棄物管理用の簡易的な建物が増えた以外、それほど大きな変化はないが、717工程エリアと418工程エリアは様変わりした。
418工程エリアは、現地の写真と衛星写真を照らし合わせることで軍事用エリア(下側)と民生用エリア(上側)に区分できる。民生用の再処理施設は1998年から2005年にかけて建設され、2010年に使用済燃料を用いたホット試験が実施されている。また、使用済燃料中間貯蔵施設や再処理用の使用済み燃料貯蔵用プールの拡張工事が実施された。
他に中国の競争入札サイトを確認すると、MOX燃料工場が建設されているが、3つのエリアのうちどこなのかは特定できない。
【3】 中核甘粛核技術工業団地

404工場と同じ甘粛省に使用済み燃料再処理工場を3つとMOX燃料工場を建設中だ(中核甘粛核技術工業団地)。この団地の建設主体は中国核工業集団公司傘下の中核龙瑞科技有限公司となっている。再処理工場の処理能力は年200トンHM、第一再処理工場は2015年に建設開始、完成は2025年目標とされる。公式発表はないが、2020年から第二再処理工場の建設が始まったとみられる(運転開始見込み2030年)。MOX燃料工場(20トン/年)は、中国の競争入札サイトによれば、2018年に地質調査が発注されている。
2021年甘粛省大規模建設プロジェクト投資計画によれば、この施設の建設期間は2015年~2028年、総投資額3000億元(6兆円)と記載されている。なお、近隣には低レベル放射性廃棄物処分場も建設されることになっている(再処理施設から南西に20km)。
【まとめ】
中国の核燃料サイクル施設の開発は急激に進んでいる。特に甘粛省における施設建設は急ピッチだ。一方で、中国がIAEAの査察対象としているのはわずか3施設で、その中には再処理施設は含まれていない。また、中国は自国の民生用プルトニウム保有量についても2016年末分以降報告していない。そのため、中国の核開発の状況は極めて不透明となっている。
(松久保 肇)


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