国策としての原子力産業推進を優先した不当判決は許さない!

国策としての原子力産業推進を優先した不当判決は許さない!

 原子力発電所で働き、被曝し骨髄がんの一種の多発性骨髄腫になった長尾光明さんが東京電力に賠償を求めた訴訟に対し、東京地裁(松井英隆裁判長)は5月23日、請求を棄却した。長尾さんは2004年1月、被曝が原因だったとして労災認定を受けたが、判決は「多発性骨髄腫とは認められない」と診断そのものを否定した。
 そして、診断を否定しておきながら、「仮に(多発性骨髄腫と)認められたとしても、放射線被ばくと疾患との因果関係は肯定できない」と奇妙な論理を展開し、さらに現在の国の放射線被曝の法廷限度以内の被曝で多発性骨髄腫に罹患することはないとまで言っている。ここには、この判決が極めて政治的な意図で書かれたものであることが示されている。
 この判決は、放射線被曝の影響をきびしくとらえ、多発性骨髄腫など白血病類似疾患や固形がんをも補償対象として認めている世界的な流れに逆行するものである。
 私たちは、人のいのちや健康よりも、国策としての原子力産業の推進を優先しようとする政治的圧力に屈したこの不当判決を許すことはできない。
 長尾さんは困難だった労災認定を勝ち取った後、「原発でたくさんの労働者が被曝している。長年経って、仕事をやめた後で出た病気が労災認定されたことは他の労働者の励みになると思う。元気なうちは皆さんに協力したい」と、病気と闘いながら裁判を闘い、「日本の原子力発電所の暗闇を照らすような判決を」と心から望んでいた。長尾さんの遺志をしっかり受け継ぎたい。

 6月5日、長尾さんの訴訟を引き継いだご遺族は、この判断を不服として控訴しました。
 これからもご支援をよろしくお願いします。

渡辺美紀子

→判決要旨
cnic.jp/files/court/nagao_hanketsu080523.pdf