東電告発の検察審査会への申立人になって下さった皆様へ
検察審査会への申立人になって下さった皆様へ
報告が大変遅くなりました。おわび申し上げます。
皆さんの委任状846人分をそえて東京第一検察審査会に不服申立書を提出したのが昨年の12月4日。審査会より申立人1名に意見を聞きたいと連絡があり、急遽、福島の佐藤さんに連絡、上京してもらったのが3月18日。全く異例のことなので、申し立てが認められるかと思ったのですが、一週間して私たちの期待は裏切られました。しかし、申立人が多かったことと、改めて地元の申立人の話を聞き、捨て置けない気持ちがつのったのでしょうか。これまた異例の「議決の理由」が付言され、私たちの告発が決して無駄ではなかったことと、東電が取るべき道を示し検察審議会全員一致で努力するよう願う、ということが明記されています。
しかし、一連の不正損傷隠しが発覚して以来、東電は原発事業者として、その期待に報いていると言えるでしょうか。3000点を超す異物(靴、工具、シート、資材、ビデオなど)が次々とプールから発見され、緊急冷却装置につながるプールを長年、ゴミ捨て場にしていたのかと職場の退廃ぶりに驚かされました。又、柏崎・刈羽原発の管理区域外へ、ごまかして汚染物質を運び出していた事が内部情報により明らかにされるや、もみ消そうと、圧力をかけたり改ざんを命じたりしたことなどをみても、何ら過去の不正損傷隠しを反省してはいないのです。
東電本社交渉においても私たちは多種多様な事故、トラブルの説明を聞きましたが、次々と新たな局面で事故が発生している有様です。あまりに多く、速やかに対応し、安全を保てるとはとても思えません。美浜原発事故後、経済産業省が各電力会社に配管点検を命じ、東電はその報告書を問題なし、とまとめ9月18日に提出、ところがその後、25日に改訂版で点検箇所数が約700カ所足りなかったと報告しました。理由は、単なる数え間違い、転記ミスと説明されましたが、またまた不正かと不信感が増すばかりです。柏崎・刈羽原発の作業員から、工事で減肉した配管をたびたび目撃している、不安だが、東電に言ってもだめなので何とかしてほしいと地元の団体に話があったそうです。それに、先の報告書結果は過去の書類検査であり、サンプル調査なのに、全て実測したかのような印象を与えるチラシを地元に配布しているのは、全く不誠実としか言いようがありません。
酷暑だった夏、東電の原発は10基が発電、7基は点検修理で止まっていました。それでも停電せず、記録的な暑さを乗りきることができたのです。東電はもっと需要が伸びると見込んでいたようですが、昨年多くの企業がとった節電・省エネルギー対策は今年も効果を発していました。電力自由化で他の供給会社から電力をまとめて買う集合住宅ももっとでてくるでしょう。流れは確実に変わっています。
株主総会で、東電は原発の古いところは取り替え、修理して、40年間は働かせたいと言いましたが、とんでもない話です。又、わずかな溶接のずれでも配管の水流に変化を及ぼし金属を削るそうです。何年も使っているものが、見えないところで劣化していくのですから古い、問題を抱えた原発から順番に廃炉にしていかなくてはなりません。私たちは今後、老朽化原発を廃炉にすることに、より一層の力を注ぐ必要があるでしょう。
原発は未来のない産業です。その最後を私たちの目でしかと見届ける日が一日もはやく来るように、それぞれの立場でできることをやっていきましょう。最後に、この告発、不服申し立てに賛同してくださった方々にお礼申し上げます。力不足で至らないところがありましたでしょうがお許し下さい。本当にありがとうございました。
事務局 岡村
(脱原発東電株主運動ニュース ‘03.12.14 発行より転載 )
会計報告
2003年10月2日~2004年9月10日
収 入
繰越金(切手含む) 261397円
カンパ(切手含む) 828002円
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合 計 1089399円
支 出
通信・送料 328610円
紙代・印刷代 97510円
電話・FAX代 46000円
交通費 31720円
事務消耗品 34969円
資料代 52610円
弁護士謝礼 190000円
事務所費(Air) 120000円
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合 計 901419円
差し引き 187980円
※ 送料は昨年10月、申し立て人呼びかけのときの発送と今回の報告発送の2回分です。剰余金については、共同事務所Airや原発を止めるための活動につかわせていただきます。
ご了承ください。2004年9月10日 会計担当 岡村・向井
東電不正損傷隠し告発事件に最終結論
検察審査会が異例のコメント
弁護士 高見澤 昭治
2002年に発覚した東京電力の福島第1、第2、柏崎・刈羽原子力発電所での長期にわたる重大な損傷隠し、偽装工作による国の法定定期点検の誤魔化し、それに自主点検記録の改ざん問題について、このたび刑事事件として最終結論が下されました。
原子力発電所における危険極まりない損傷隠しについては、マスコミも一時は大きく報道しましたが、企業と行政の結託によって幕引きがされてしまいました。それに対して危機感を持った福島や新潟を中心とした3000人を超える住民が、110名の弁護士を代理人として、関係者を偽計業務妨害罪や電気事業法違反などを理由に刑事告発しました。ところが、東京検察庁は不当にも2003年10月3日時効等を理由に全ての関係者と罪名ついて不起訴処分としました。 それを不服として、同年12月4日に市民の中から選ばれたい委員で構成される東京地方検察審議会に不服を申し立て、資料等の追加を行うなどしてきましたが、大変残念なことに本年3月26日付けで、同審査会から「本件不
起訴処分は相当である」という議決書が送られてきました。刑事手続きとしては、これ以上方法がなく、あれほど社会的に問題になった東京電力の原子力発電施設における犯罪的な損傷隠しについて、一人として責任を問われずに終わることになりました。
現在問題になっている三菱自動車の欠陥隠しについては、元社長以下が逮捕されていることと比べると、現実に重大事故が生じ、死傷者が出ていないという違いはあるにしても、事故が生じた時の被害の広がりと深刻性を考えると納得できないものがあります。そうした思いが強かったためでしようか。東京検察審査会の議決書には、以下の文章が「議決の理由」に明記されています。
「なお、付言すれば、原子力発電所周辺の住民にとって、今回の事件での情報不足により不安な日々を送り、また、行政及び企業側に不信感を抱き告発するに至ったことは容易に推察される。住民の長年にわたる努力は、原子力発電所の安全を確保するための法律の一部改正という一歩前進した形で現れており、決して無駄な告発ではなかったと思われる。重ねて、東京電力に対しては、独占的に原子力発電を扱う企業として、その責任の重大性を認識し、細心の注意を払って安全に電気事業業務を遂行することが、企業の持つべき社会的信頼性の向上につながるであろうし、そのように努力することを願うのが当検察審査員全員一致の意見である。」
私たちは、不起訴処分に対する不服申し立てにあたって、検察官の不起訴がいかに誤っているかを事実と法律に基づいて詳細に主張しましたが、議決書には「検査官がした不起訴処分の裁定を不相当と判断できる事情が発見できない。また、公訴時効が完成している告訴事実については、訴訟要件を欠くことが明らかであり、検察官の裁定を覆すに足りる証拠もない」というだけで、それ以上の根拠も理由も全く付されていません。そのために検察審査会がどのような審査を行い、それぞれの告発事実について具体的にどのような検討が行われたか不明ですが、上記のような「付言」を議決書に書き込むには、極めて異例であり、熱い議論が交わされたことは間違いないものと思われます。
原子力発電所が運転されている限り、住民は常に重大な危険にさらされているといっても過言ではありません。事実、今年8月9日には関西電力美浜発電所の配管が爆発し、5名が死亡6名が負傷するという大事故が発生しました。会社側は2次系冷却水の配管だから、放射能漏れとは無関係だとして、減肉という現象を知りながら28年もの間、検査をせずに放置したというのですから、驚くと同時に怒りを感ぜざるをえません。
美浜原発の事故については、ようやく強制捜査が入り、刑事責任が明らかになると思いますが、電力会社も行政も東京地方検察審査会の議決書のこの部分を巌しく受け止め、2度と損傷隠しなど許されないことを肝に銘じるべきです。
告発運動に協力したたくさんの皆さんに感謝するとともに、自分たちの安全と生活を護るために、私たちもこれまで以上に企業と行政のわずかな損傷や事故・不正行為を見逃すことなく、監視活動や抗議行動を続けていくことを改めて誓いあいたいと思います。