長計策定会議日誌(9)

長期計画策定会議日誌(9)

原子力資料情報室 伴英幸

日誌を書く間もなく、核燃料サイクルを維持・継続する方針が11月1日の第11回策定会議において確認されてしまった。
第9回策定会議で直接処分のコスト試算が確定し、シナリオ間の総合評価案が出された。第10回会議では検討してきた4つのシナリオの総括的な評価を受けた形で、2つの政策オプションが事務局から提案された。「使用済み燃料を再処理し回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用することを基本方針とする」路線と「今後は使用済み燃料を再処理せずに直接処分することを基本方針とする」路線に絞られた(いずれも第11回策定会議資料4号)。事務局が二者択一を迫った形である。
第11回会議で、伴は後者を条件付で支持すると表明した。再処理しない案を支持したのは伴のみだった。主張内容は、総合評価の結果から再処理しない路線を基本方針とするべきだ、六ヶ所再処理工場の扱いはこの基本路線の上で、改めて議論をするべきだというものである。条件とは案の中に議論されていない原発の基幹電源としての位置づけがなされていたからだ。また、直接処分支持といっても、シナリオで検討したような50年貯蔵の後に処分すればよいといったことを支持するものでもない。
この段階で意思表示するべきか、議論が尽くされていないことを訴えるべきか、迷った。議論が尽くされていないことを主張するべきとの意見も傍聴している方々の中には多いのではないかと思った。策定会議に寄せられた意見を議論していないことは事実。そしてそれを議論に持ち込むのは皆に意見を求めた伴の責任でもあるだろう。
しかし、策定会議で何かが十分に議論されたことがあるだろうか? 議長が会議の進め方の議論をしたいと提起しても、再処理路線に賛成だといった結論を先に述べる委員が多い、果ては、他の委員から、何度も同じ主張を繰り返している委員が多いと指摘される、そんな場である。この日の会議では各委員が2つの路線選択に関する意見を述べる場と設定されていた。ここで、手続きの不備や議論の不十分さを訴えても、圧倒的多数で再処理路線が選択されてしまうだろう。議論不十分という意見と、再処理路線支持の意見が出た結果、再処理路線が支持されたという結論になれば、再処理に反対の意見はなしと総括されてしまうだろう。
他の委員の意見では、結論はまだ早すぎる(大規模設備を稼動させることのリスクの議論がなされていない)との意見、2つの政策選択肢はどちらも硬直的で、ベターな修正案を含めて議論をするべきであるといった意見も出されていたが、自分としては上述の事態を避けたかった。
確認された方向性とは、「(六ヶ所再処理工場の)再処理能力の範囲で使用済み燃料の再処理を行うこととし、これを超えて発生知る使用済み燃料は中間貯蔵することとする。中間貯蔵された使用済み燃料の処理の方策は、この基本方針を踏まえて2010年ごろから検討を開始する。この検討は再処理の政策的意義を踏まえつつ柔軟性にも配慮して進めるものとし、その処理に必要な施設の建設・操業が六ヶ所再処理工場の操業終了に十分間に合う時期までに結論を得ることとする。…」である。
これに対して、山地委員は「中間貯蔵された使用済み燃料の処理の方策」という表現の真意を質した。2000年長計では、「六ヶ所に続く再処理工場は2010年ごろから検討」と表現されていたが、提案された文は単に「処理」となっていて「再処理」となっていない。果たして、再処理しないことを含むのか… 近藤委員長は基本方針に沿うのだから再処理もしくは中間貯蔵の継続の検討であって、再処理しないことは含まれないと、やや苦しい返答だった。返答を聞いていて、伴は「再処理」から「再」が取れていることの意味を重いと見てよいと思った。
この日の会議を受けて、三村青森県知事はウラン試験のための安全協定締結へ歩みを進めるだろう。また、経産省では再処理を支援するための制度作りが本格化するだろう。再処理継続の方向性の確認はまさにこのためだったのではないか。
策定会議では、六ヶ所再処理工場を廃止に持ち込むことが出来なかった(工場の稼動はまだ止められる可能性は高いが)が、多くの市民はこの結論に納得していないだろう。今回もブルドーザーのように政策選択が行われた。この選択に福島県知事のいう「国民合意」が得られるとは、とうてい考えられない。なお、新長期計画は、今後原発の位置づけ、研究開発など一連の内容を議論した後に、策定会議案としてまとめられ、所定の手続きを経て決定される。その時期は来年の11月頃と予想されている。