原発輸出と公的保証―JBIC/NEXIの原発指針―へのパブリックコメント

原発輸出と公的保証―JBIC/NEXIの原発指針―へのパブリックコメント

一般に、発電所などのエネルギープラントや交通システム、上下水道といったインフラ輸出には政府系金融機関の関与が重要とされている。そのようなプロジェクトは多くが大規模なものとなり、一般の事業会社や金融機関だけで抱えるにはリスクが大きくなりすぎるからだ。そこで、国は、いくつかの枠組みを構築している。例えば政府が相手国に直接資金を供与したり(政府開発援助(ODA))、国際協力銀行(JBIC)が当該インフラを購入する外国企業やその企業に貸し付ける金融機関へ融資をしたり、他の民間金融機関と協調融資を行うことで、金融機関のリスクを分散したりする。また日本貿易保険(NEXI)は、海外との取引で発生するリスク(例えば輸出先企業の倒産や、輸出先国が新たな規制を作るなどして、輸出や投資で損失が生じるなど)を補償する保険を提供している。

2015年12月から実施されてきたJBIC・NEXIの「原子力関連プロジェクトにかかる情報公開指針(仮称)」についての意見聴取会合は9月26日の第10回会合でほぼ終了した。

以下にパブリックコメントを掲載する。

 

  1. 全体について、この指針はJBIC/NEXIの努力義務を定めるものであり、この義務に違反した場合においてJBIC/NEXIに特段の罰則が生じるものではないと理解している。であればこそ、あいまいな表現は排除するべきだと考える。
  2. 第1部1項Para9でJBIC/NEXIは融資等の意思決定後も「一定期間、必要に応じ、情報公開配慮が確実に実施されるよう借入人等に対するモニタリングや働きかけを行う」とあるが、同Para3において、JBIC/NEXIは透明性・アカウンタビリティを確保したプロセスおよびプロセスへのステークホルダーの参加が「重要であることに留意」している。特に原子力プロジェクトにおいては、ステークホルダーへの影響は大きく、長期に及ぶ。加えて透明性・アカウンタビリティはプロジェクトの安定的な継続にも寄与し、結果として、融資・付保を行ったJBIC/NEXIのリスク低減にもつながる。よって、プロジェクト実施期間中は継続的にモニタリングを継続すべきであり、「一定期間」に限定するべきではないと考える。
  3. 第1部1項Para10でJBIC/NEXIは適切な情報公開がなされるよう、「なるべく」早期の段階から働きかけるとあるが、「なるべく」というあいまいな表現を使うべきではない。
  4. 第1部3項(3)Para3でJBIC/NEXIは「融資等の意思決定の後一定期間、借入人等を通じてモニタリングを行う」とあるが、一定期間に限定するべきではない。
  5. 第1部3項(6)Para2でJBIC/NEXIは「指針に沿った適切な情報公開配慮がなされない場合には、融資等を実施しないこともありうる」とあるが、「実施しない」とするべきだ。
  6. 第1部4項(2)Para2でJBIC/NEXIは「融資契約締結後の後一定期間、借入人等を通じ、プロジェクト実施者等による情報公開配慮のうち重要な項目につき、実施結果の確認を行う」とあるが、一定期間に限定するべきではない。
  7. 第1部5項Para2 でJBIC/NEXIは「情報公開配慮上重要な文書につき、当行ウェブサイト等で、その入手後できるだけ速やかに公開する」としているが、言語は少なくとも現地で使用されている言語及び英語で開示されるべきだ。原子力は極めて専門的な分野であり、使用される用語も非専門家には理解困難である。加えて今後原発プロジェクトが進められる国、特に新規原発導入国においては、原子力の専門家は数少なく、住民サイドに寄り添う専門家の存在は期待しにくい。住民は国外の専門家に対しアドバイスを求めることが想定されるが、現地語のみでは住民が国外の専門家に問い合わせることは極めて困難だ。第1部1項Para3他でステークホルダーとの協議の重要性に留意しているが、現地語のみで資料が公開された場合、現実的にはステークホルダーとの協議は実施不可能となる。
  8. 情報公開のタイミングについて具体的な記述が存在しないが、意思決定前、プロジェクトについてステークホルダーが理解するための十分な期間を明示するべきだ。

 

※JBIC/NEXIについての詳細は、原子力資料情報室通信2017年2月号(No.512)、2017年11月号(No.521)をご参照ください。