原子力小委員会 信頼獲得とはほど遠い中間整理
『原子力資料情報室通信』第527号(2018/5/1) より
原子力小委員会 信頼獲得とはほど遠い中間整理
総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会は、3月20日に課題とされた項目について一通りの議論を終え、論点整理を行った。これに基づき3月26日、同調査会の基本政策分科会へ報告された。基本政策分科会では、その他の委員会の審議結果ならびにエネルギー情勢懇談会の提言、そして一般からの意見をもとに、2030年までをターゲットとしたエネルギー基本計画を改定する。7月頃とされている。
20日の原子力小委員会では、「対話・広報の取組」について議論した。データに基づく政策情報の提供が重要と言いつつ、資料に記載されたデータは誤解を招く出し方で、決して良いものではなかった。原子力文化財団が行った調査結果に基づくものだが、問いは「原子力に対するイメージ」で、肯定的なイメージと否定的なイメージをそれぞれ尋ね、さまざまな回答例の中から、危険、信頼、必要性に関する回答例の割合のみを抽出している。イメージは原子力の必要性に関する判断ではないにもかかわらず、この2項目を一つの図に示すと、必要又は不必要と感じている人の割合を比較してしまうというミスリードが生じてしまう。データの重要性は言うまでもないが、御都合主義で纏められたデータを「客観的」と主張しても、政府への信頼は得られないだろう。
また、「対話による理解」促進では、一方向だけの情報発信だけでは「安心」につながらないので、「双方向の対話」を進めるという。しかし、これが成立するのは、双方が意見を変えうることを前提とした場合だ。何を言っても意見を変えない政府の姿勢では、双方向の対話は成立しない。
その後、これまでの議論を整理して原子力小委員会は終わった。審議結果は1枚の表となって、エネルギー基本計画の改定を審議している基本政策分科会に報告された。
原子力の直面する最重要課題が「社会的信頼の獲得」だとの認識に基づくが、その対応策は旧態依然としたもので、確実な福島廃炉と復興、自主的な安全性の向上、地域振興策の強化、原子力産業基盤の強化、最終処分を進めるための対話活動の強化などが並んでいる。
結局のところ、再処理を含めて再稼働することが信頼の回復になる、そのための強化策といった図式でまとめられている。信頼無ければ再稼働への了解が得られない、故に再稼働は信頼の結果だという論理展開だ。なお、バックエンド対策では再処理について、プルトニウム回収量のコントロール(操業調整)が掲げられている点は注目しておきたい。
このような纏めで信頼が確保されるとはとても考えられない。そもそも信頼喪失の根本原因が十分に分析されていないし、それをする気がないのだから、まともな対策が出てこないのは当然だ。筆者は脱原発の方向の確定こそ信頼の獲得の出発だとの持論を述べた。
再エネは主力電源に
2050年のエネルギー戦略に関するシナリオについて検討してきたエネルギー情勢懇談会は、4月10日に提言「エネルギー転換へのイニシアティブ」を纏めた。現在は、「戦後5回目のエネルギー選択」の時期だとの認識が展開され、そして「福島第一原発事故が原点であるという姿勢」で「原子力の位置づけを考察し続ける責務がある」としている。具体的には、2050年に向けて再エネを主力電源に押し上げるという方向が明確に示された。原発については、可能な限り依存度を低減する方針を堅持し、脱炭素化の選択肢だとの位置づけになった。重要電源でもベースロード電源でもない位置づけだ。これを受けてのエネルギー基本計画改定になるだろう。
(伴英幸)