ベトナムへの原発輸出で「事実上合意」

ベトナムへの原発輸出で「事実上合意」

 10月31日、ハノイでの菅首相とズン首相の会談で、ベトナムの第2期原発計画2基を日本から輸出することで事実上の合意を見た。共同声明(http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_kan/vietnam_1010_ksk.html)の中で「建設のパートナーに日本を選ぶことを決定した」と明記されたのが「事実上の合意」なのだと、日本政府は説明している。第1期計画の2基については同日、ロシアとベトナム両政府間で建設協定が締結され、ロシアの国営企業ロスアトムがベトナム政府と請負契約を結んだという。

 今後は「具体的には、日本原子力発電(株)とベトナム電力公社(EVN)が共同して行う原子力発電導入可能性調査が速やかに開始されるとともに、先般設立された国際原子力開発(株)とEVNとの間で原子力発電所の建設・運転・保守等に関する具体的な検討が加速化されることを目指し、ベトナム側と調整を進めてまいりたい。また、関係省庁とも連携し、ベトナムにおける人材育成や安全規制その他の関連諸制度の整備等にも最大限取り組んでまいりたい」と、大畠経済産業大臣の談話・声明(http://www.meti.go.jp/speeches/data_ed/ed101031aaaaj.html)は述べている。

 日本原発「初の輸出」は自民党政権下でさえ実現できなかった”快挙”だと、政府は大はしゃぎのようだが、その結果の責めをどう負おうとしているのか。建設計画地とされるニントゥアン省ビン・ハイの住民をはじめとするベトナム国民はもとより、同国政府に対しても正しい情報提供がなされてきたとはとても思えない。情報格差を利しての原発輸出は、まさに「最悪の公害輸出」である。

 菅首相は「日本からの提案」としてベトナム側の条件を受け入れる意向を示したと伝えられるが、具体的な中身は明らかでない。10月22日付の日刊工業新聞によれば、次の6条件がベトナム側から求められていたらしいが、日本国内でもうまくいっていないものを、どうするつもりなのか。

1.先進的な設備の導入
2.人材育成
3.資金
4.燃料供給
5.使用済み燃料を含めた放射性廃棄物処理
6.技術移転

 お先は真っ暗である。11月1日付の日本経済新聞は「費用対効果でみれば十分な成果が得られるかは微妙」「運営参画は海外事業拡大のチャンスではあるが、事故が発生すれば経営を揺るがす事態にも発展しかねない」と懸念を表明した。新会社「国際原子力開発」に窓口を一本化したところで、メーカーはライバル同士。同日付の読売新聞も「今後、ベトナムが提示する発注条件などで個別企業の利益に大きく左右される」と”オールジャパン体制”の実情を報じている。

(西尾漠)