タイのNGO38団体、山口県上関原発に反対する祝島島民に激励の声明

タイ原発開発監視ネットワークのメンバーNGO38団体が、上関原発建設に反対する祝島(いわいしま)の島民を激励する声明を発表しています。

詳細はこちら(メコン・ウォッチHP)
mekongwatch.org/resource/news/20101025_01.html

中国電力の山口県上関町原子力発電所建設と埋立てに反対する祝島の人びとを応援する 原子力開発監視タイ民衆ネットワークの声明

祝島は日本の内海に位置し、面積7.67平方キロ、周囲12キロほどの小さな島である。現在の島民人口は約500名で、自然に適った農業として、枇杷の栽培、枇杷茶の生産、米作りなどを行い、重要な水産業として、蛸壺を使った漁業、海草採り、海苔の生産などを行い、日本の島で見られる伝統的な暮らしを営んでいる。また、4年ごとに開催され、1000年以上も続く島の歴史を物語る「神舞(かんまい)」という祭りでは、対岸の国東半島から船で渡ってくるご神霊を迎えるために櫂伝馬船などを出し、祝いの舞いを舞うなど、古代の島民文化を今に至るまで伝えている。

祝島から約3.5キロ離れたところに位置する上関町田ノ浦では、中国電力が約135万KWの原子力発電所の建設を計画している。29年も前に、たった3.5キロの沖合での原発建設計画が明らかになった直後、祝島島民の大半は計画に反対を表明した。というのも、計画は島民の営む自然な農業や漁業に打撃を与え、とりわけ、「スナメリ」と呼ばれるクジラの一種やナメクジウオなどの海洋生物、希少種の鳥類、絶滅危惧種のハヤブサなど、海中にあるこれら生物の生息地に影響を及ぼすと考えたからである。祝島の周辺は豊かさをたたえ、生物多様性に富み、実際、日本政府も瀬戸内海国立公園の一部に指定してきたほどである。

祝島島民は30年近くも原発建設反対運動を続け、島の内外でさまざまな形態の活動を展開するために、原子力発電所に反対する祝島島民の会を結成した。とりわけ重要な活動として、毎週月曜日午後6時に島民たちが屋外に出て、島の港に集合し、「原発反対」と記した鉢巻を巻いて旗を掲げ、島内各所をデモ行進する街頭行動がある。約30年間にわたり、1ヶ月に4度、これまでに1,077回を数えたデモ行進では、参加者のシュプレヒコールが島中に響きわたる。

きれいなふるさとを守ろう!
原発反対!エイエイオー!
きれいな海や山を守ろう!

祝島島民たちは、島の内外で原発建設計画反対の立場を表明する集会を開催し、中国電力が原発建設に向けた埋立てを実施するために海中にブイを設置しようとした際には、多数の船をくり出して現場をおさえ、ねばり強く埋立てや作業の中止を求めた。ところが、そのたびに住民リーダーたちは、暴力的な作業妨害や器物損壊、あるいは公務執行妨害といった名目で訴えられ、今日では多数の住民が裁判を抱えている。2008年初頭、中国電力は原発建設のための埋立てを始める意図で、山口県に埋立て許可を申請し、県もこれを了承した。一方、祝島の島民たちは、島内および日本全国から約85万筆の埋立て反対署名を集めて提出した。2008年10月に住民代表が始めた、中国電力の埋立て差止め請求訴訟も係争中である。

最新の動きとして、先週、祝島での原発をめぐる紛争を注視してきたタイ民衆ネットワークは、祝島島民たちから、中国電力が島民や全国の市民の声をまったく無視して、海に船を出し、原発建設のための埋立てに向けて囲いを作ろうとしているという知らせを受けた。現在、島民は海と自分たちの島を守るために船を出し、中国電力の行動に対して抗議し、海を台無しにする埋立てを止めるよう要求している。しかし、中国電力と山口県は、原発建設のために埋立てを実施しようとしている。

タイ民衆ネットワークも、祝島島民と同様、現在、タイ政府の原発建設推進政策に直面しており、祝島をめぐる問題の推移を島民に対する共感の目で見守るとともに、人権やコミュニティーの権利を侵害し、島民と全国の市民の声と要求を無視して原発建設を進めようとする中国電力と山口県の強硬な行為が引き起した事態と紛争に対して不安を感じている。

タイ民衆ネットワークは、原発建設や埋立てが祝島島民を含む周辺の住民、とりわけ建設地と近郊に住む漁民に直接的な打撃を及ぼし、生計喪失に至る事態を案じている。漁民たちは豊かな環境自然資源を失い、また、埋立ては、瀬戸内海全体にも影響を及ぼすだろう。

現在、祝島の島民たちは非常に緊迫した状況に直面している。原子力開発監視タイ民衆ネットワークは、原発建設に反対する祝島の島民と日本の市民の闘いに連帯を表明し、励ましを送りたい。また、原発建設のために海、コミュニティー、自然資源を破壊することに反対し、中国電力と山口県に権利の侵害を止めるよう要請するとともに、今後とも状況を注視したいと思う。

連帯の気持ちをこめて

仏歴2553年(西暦2010年)10月15日

・原子力開発監視タイ民衆ネットワーク
・生態文化研究グループ(Eco-Culture Study Group)
・ウドンタニ県環境保全グループ(Udonthani Environment Conservation Group)
・東北タイ人権平和情報センター(Northeast Human Rights and Peace Information Center)
・コミュニティー資料センター(Community Resources Centre/CRC)
・タイ鉱山被害住民ネットワーク
・原子力ウォッチ(Nuclear Watch)
・パランタイ(Palang Thai)
・バイオタイ財団(BioThai Foundation)
・生態系啓発推進計画(Project for Ecological Awareness Building/EAB)
・タイ環境正義ワーキンググループ(Thai Working Group for Climate Justice)
・スリン県持続可能エネルギーネットワーク
・消費者財団(Foundation for Consumers)
・持続可能・代替開発協会(Sustainable, Alternative Development Association/SADA)
・チェンマイ県地球温暖化防止ネットワーク
・生態系回復財団(Project for Ecological Recovery)
・鉱山資源公共政策推進計画(Public Policy on Mineral Resources/PPM)
・北部下流域土地・水・森林資源ネットワーク
・ヌンマプラーン郡開発住民機構(オー・ポー・ノー)
・ピサヌローク県民衆環境ネットワーク
・社会政治改革のための住民ネットワーク(コー・ポー・ソー・モー)
・タイ住民財団
・環境法律計画(EnLAW)
・社会ボランティア財団(モー・オー・ソー)
・NGO調整委員会中部(コー・ポー・オー・ポー・チョー)
・北部NGOネットワーク
・北部下流域社会管理機構
・農村開発農業改革計画
・社会のための法律家グループ
・ヌンマプラーン環境保全会
・ルーイ県故郷を愛する人びとの会
・ルーイ県ヒンレックファイ山を保存する会
・プレー県ソーイ川流域住民
・ターク県メータウ・カドミウム被害住民の会
・ランパーン県メモ患者権利ネットワーク
・パヤー推進機構
・ジェーム川流域ネットワーク
・持続可能性のための代替エネルギー計画(Alternative Energy Project for Sustainability/AEPS)

以上38団体(2010年10月20日)