「原発輸出に重大な懸念」、NGO79団体等が要請書 原発のリスク評価と調査報告書の公開を
2010年12月15日 プレスリリース
グリーン・アクション
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
原子力資料情報室
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
「原発輸出に重大な懸念」、NGO79団体等が要請書
~原発のリスク評価と調査報告書の公開を~
12月15日、NGO79団体(国内52海外27)および個人132人(国内129海外3)は、大畠章宏経済産業相に対して、日本政府の公的資金による原発輸出の安易な推進は、核の拡散および原子力の安全性上、および環境社会上の大きなリスクをもたらすとし、日本資金によって実施される海外における原子力発電所建設の実現可能性調査(フィージビリティ・スタディ)に原発建設におけるリスク評価の実施、および調査報告書の公開を求める要請書を提出した。
現在、日本政府は、アメリカ、タイ、ベトナム、カザフスタン、ヨルダンといった国々に対する日本企業による原発輸出を実現するため、トップ外交、技術協力、実現可能性調査など様々な側面からの公的支援を実施している。2010 年10 月末には、日越首脳会談において、ベトナム政府が原発2基の建設の協力パートナーに日本を選ぶことを決定したと発表された(注1)、合意の中には、日本の資金を使った実現可能性調査(フィージビリティ・スタディ)の実施、事業に対する低利貸付なども含まれている。ベトナムにおける原子力発電所の建設計画に関するフィージィビリティ・スタディは、資源エネルギー庁が19.99億円を助成し、日本原子力発電株式会社が実施する。将来、日本企業が原発建設を受注することになれば、国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)などの公的資金支援が供与されることが予想されている(注2)。
要請書では、「現在の原発輸出促進政策は、原発が抱える核拡散、事故、放射性廃棄物、労働者被ばく、その他の環境社会リスク、また財務リスクを過小評価した結果である」ことを指摘、「ガバナンスや技術面、民主的な参加プロセス等において更なる課題を抱える発展途上国で原発事業を進めることは地元社会にとって大きなリスクを伴う」としている。その上で、海外における原発建設のフィージビリティ・スタディの実施において、①調査報告書の公開、②情報公開や住民協議の確保、③放射性廃棄物の管理体制、事故時の対応、事故に対する保証、労働被ばくの防御、その他の安全性の確保、その他環境社会リスクなど、事業が与えるリスク評価の実施――などを要請している。
要請書の本文は、以下から参照できる。
(注1)平成22年10月31日の日越共同声明に「ベトナム政府がニントゥアン省の原子力発電所第2サイトにおける2基の建設の協力パートナーに日本を選ぶことを決定した旨確認した」と記された。
www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_kan/vietnam_1010_ksk.html
(注2)原発輸出の公的資金による支援については、NGOグループは、2009年7月、①テロ多発地域、紛争地域など、政治情勢が不安定な国の原発事業に公的信用を付与するべきではない。②安全確保に関する配慮の確認に関しては、日本と同程度の基準を求めるべきなどを含む指針の策定を求める要請書を提出した。
www.foejapan.org/aid/jbic03/090727.html
<問い合わせ先>
原子力資料情報室(担当:フィリップ・ワイト) TEL:03-3357-3800 FAX:03-3357-3801
国際環境NGO FoE Japan(担当:満田夏花) TEL: 03-6907-7217 FAX: 03-6907-7219
2010年12月15日
経済産業大臣 大畠 章宏 殿
ベトナム原子力発電所建設のためのフィージィビリティ・スタディに関する要請書
~原発輸出に関する日本政府支援について~
私たちは、日本政府の公的資金による原発輸出の安易な推進が、核の拡散および原子力の安全性上大きなリスクをもたらすこと、原発建設の地元社会に甚大な環境社会上の影響を与える可能性があること、また日本の税金が限られた企業の利益をもたらすために利用されることについて、重大な懸念を抱いています。このような懸念から、本要請書を提出させていただきます。
I.背景
現在、日本政府は、アメリカ、タイ、ベトナム、カザフスタン、ヨルダンといった国々に対する日本企業による原発輸出を実現するため、トップ外交、技術協力、実現可能性調査など様々な側面からの公的支援を実施しています。
たとえば、2010年10月末には、日越首脳会談において、ベトナム政府が原発2基の建設の協力パートナーに日本を選ぶことを決定したという発表がなされましたが(注1)、合意の中には、日本の資金を使った実現可能性調査(フィージビリティ・スタディ)の実施、事業に対する低利貸付なども含まれています。
一方、経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課は、昨年、「低炭素発電産業国際展開調査事業」を公募にかけ、公募期間中得た2件の応募のうち日本原子力発電株式会社を採択しています(注2)。 原子力政策課によれば、ベトナムにおける原子力発電所の建設計画に関するフィージィビリティ・スタディ実施費用は、19.99億円。ベトナム側のパートナー選択が遅れたため調査事業が22年度に繰り越されましたが、前述の「平成21年度低炭素発電産業国際展開調査事業」は、このプロジェクトを念頭において公募したと考えられます。
なお、原発輸出に当たっては、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)などの公的融資・付保が想定されていますが、両機関は原発輸出支援の審査に関する指針を策定する予定です(注3)。
II. 認識
私たちは、現在の原発輸出促進政策は、原発が抱える核拡散、事故、放射性廃棄物、労働者被ばく、その他の環境社会リスク、また財務リスクを過小評価した結果であると考えています。また、原発が日本国内ですら多くの問題をはらんでいることに鑑みて、原発輸出を公的資金により推進することに関して疑問を感じています。とりわけ、ガバナンスや技術面、民主的な参加プロセス等において更なる課題を抱える発展途上国で原発事業を進めることは地元社会にとって大きなリスクを伴います。さらに「経済対策」としての税金の使途を考えた時、極めて限定的な数の日本企業しか裨益しない原発輸出促進に税金を費やすことに関する疑問もあります。
以上の理由から、私たちは、原発輸出促進に過大な公的資金を投入しようとしている日本政府の方針は適切ではないと考えます。
しかしながら、すでに原発輸出が推進されている現状を踏まえ、私たちは、日本政府が原発輸出に関連した調査支援を実施する際、また、原発輸出への公的信用の付与を行う場合には、少なくとも、十分な透明性を担保し、上記のような原発のリスクを十分見極める必要があると考えています。
III.要請
私たちは、海外における原発建設のフィージビリティ・スタディの実施について下記のように要請します。
1.本フィージィビリティ・スタディは日本の税金が投入されて実施されるものであるため、入札情報以外については、調査報告書はすべて公開されるべきである(注4)。
2.フィージビリティ・スタディの調査項目に関しては、NGOも含めたステークホルダーの意見を踏まえ、決定するべきである。
3.原発建設の決定プロセスにおいて、プロジェクト全体における情報公開および住民との協議が確保されるかどうかについて、フィージィビリティ・スタディの調査項目に含めるべきである。
4.原発の運転において、安全等に関する情報公開および住民との協議が確保されるかどうかをフィージィビリティ・スタディの調査項目に含めるべきである。
5.放射性廃棄物の管理体制、事故時の対応、事故に対する保証、労働被ばくの防御、その他の安全性の確保、その他環境社会リスクなど、事業が与えるリスク評価を、フィージビリティ・スタディに含めるべきである。
以 上
注1)平成22年10月31日の日越共同声明に「ベトナム政府がニントゥアン省の原子力発電所第2サイトにおける2基の建設の協力パートナーに日本を選ぶことを決定した旨確認した」と記された。
( www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_kan/vietnam_1010_ksk.html )
注2)経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課「平成21年度低炭素発電産業国際展開調査事業の公募結果について」(平成21年10月16日付)
( www.enecho.meti.go.jp/info/tender/tenddata/0910/091016c/091016c.htm )
注3)JBIC/NEXIの原発指針の策定に関しては、NGOグループは、2009年7月、下記の内容を含む指針の策定を求める要請書を提出した。
( www.foejapan.org/aid/jbic03/090727.html )
◇テロ多発地域、紛争地域など、政治情勢が不安定な国の原発事業に公的信用を付与するべきではない。
◇安全確保に関する配慮の確認に関しては、日本と同程度の基準を求めるべき。
◇使用済み核燃料等の放射性廃棄物の管理・処分計画の内容と実効性を確認するべき。
◇労働被曝の適切な基準が設置されているべき。
◇十分な情報公開と住民協議が実施されていること。
◇支援の検討にあたり、第三者機関を設置すべき。
注4)経済産業省の予算によりJETROが実施する日本企業支援のためのフィージビリティ・スタディは、JETROが有する環境社会配慮ガイドラインにもとづき、調査結果は基本的に公開されている。
( www.jetro.go.jp/disclosure/environment/ )
賛同団体
国際青年環境NGO A SEED JAPAN
特定非営利活動法人APLA
NPO法人ARBA
ATTAC京都
国際環境NGO FoE Japan
ODA改革ネットワーク関西
国際NGO・R水素ネットワーク
アジア開発銀行福岡NGOフォーラム
NPO法人足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ
NPO法人足元から地球温暖化を考える市民ネットたてばやし
NPO法人 懐かしい未来
イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク
インドネシア民主化支援ネットワーク
ウィンドファーム
エコロ・ジャパン
「核のごみキャンペーン・中部」(愛知県)
環境エネルギー政策研究所(ISEP)
環境行政改革フォーラム
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
関西フィリピン人権情報アクションセンター
グリーン・アクション
グリーンピース・ジャパン
グループ・原発なしで暮らしたい水俣
玄海原発プルサーマル裁判の会
原子力行政を問い直す宗教者の会
原水爆禁止日本国民会議
原発いらん!山口ネットワーク
「権力とマスコミの横暴を正し、人権を守る国民の会」in入間
原子力資料情報室
地震大国日本の原子力政策を見直す会
市民外交センター
ジュビリー関西ネットワーク
国際協力NGOソーラーネット
太陽光・風力発電トラスト
高木仁三郎市民科学基金
脱原発の日実行委員会
脱原発大分ネットワーク
ティナラク織の会「カフティ」
怒髪天を衝く会
日本環境法律家連盟(JELF)
日本キリスト教協議会平和・核問題委員会
ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン
ピースボート
ピープルズ・プラン研究所
フィリピン情報センター・ナゴヤ(NCPC)
ふぇみん婦人民主クラブ
プルサーマルと佐賀県の100年を考える会
プルトニウム・アクション・ヒロシマ
みどりの未来
水俣ほっとはうす
メコン・ウォッチ
劣化ウラン兵器禁止市民ネットワーク
Organizational Endorsements (Overseas)
Bangladesh Environmental Law Association (BELA) – FoE Bangladesh
Both ENDS (The Netherlands)
Centre for Environmental Justice (Sri Lanka)
Center for Environmental Law and Community Rights Inc (CELCOR) – FoE Papua New Guinea
Crude Accountability (USA)
Energy Justice Actions (South Korea)
Friends of the Earth Asia Pacific
Friends of the Earth Australia
Friends of the Earth Cyprus
Friends of the Earth New Zealand
Greenpeace Southeast Asia
HABURAS Foundation (Timor Leste)
Himalayan and Peninsular Hydro-Ecological Network-HYPHEN (Nepal)
Korea Federation for Environmental Movement (KFEM)
Legal Rights and Natural Resources Center (LRC/KsK) (Philippines)
MANUSIA (Indonesian Antinuclear Society)
Movement for Nationalism and Democracy-Philippines
NO to BNPP (Network Opposed to the Bataan Nuclear Power Plant), Philippines
Palestinian Environmental NGOs Network (PENGON)
ProPublic (Nepal)
Sahabat Alam Malaysia (SAM)
Sarekat Hijau Indonesia (Indonesian Green Union)
SOLJUSPAX (Philippines)
Taiwan Environmental Protection Union
Taiwan Green Citizens Action Alliance
Wahana Lingkungan Hidup Indonesia (WALHI)
Water and Energy Users’ Federation-Nepal (WAFED) (Nepal)
※外国からの賛同は、日本の納税に関する点以外の内容についての賛同です
個人賛同
青木裕一
上里恵子(上関原発計画の根っこを見る会)
安藤直彦(林業研究者)
安楽知子(愛知県・会社員)
飯沼佐代子(地球・人間環境フォーラム)
池側恵美子(ジュゴン保護キャンペーンセンター)
池田こみち(環境総合研究所副所長、環境行政改革フォーラム副代表)
石毛教子(環境学習団体 Green・Up)
石丸初美
稲月隆
岩崎わか
臼田玲子
宇田純子(主婦)
榎尚子(アースディ那須実行委員)
遠藤孝一
大束愛子(ふぇみん婦人民主クラブ)
大賀あや子(福島原発30キロ圏ひとの会)
大河内秀人(浄土宗見樹院 住職)
大島 浩司(小学校教諭)
大原洋子
小笠原公子(NCC平和・核問題委員会委員)
岡本和之(ライター)
小倉志郎
鬼松成剛(みどりの未来)
加賀田清子
片岡栄子(ふぇみん婦人民主クラブ)
加藤寿子(とめよう原発せたがやネットワーク)
加藤和博
加藤タケ子
加納実紀代(敬和学園大学教員)
上窪一世(教員)
神谷扶左子
川井 満
川崎 陽子(環境ジャーナリスト)
川端康正(千葉大学工学部都市環境システム学科3年)
川辺一弘
川原淑恵
神田浩史(AMネット)
神無月好子(ライター/オーガニックライフスタイリスト)
北沢洋子(国際問題評論家)
北村奈緒美(NPO法人 ジュレー・ラダック)
熊久保久美子(とちぎエコリーダー、WWFジャパン会員)
栗原 茂
後藤裕己
小西祐伸
小林栄子(玄海原発プルサーマル裁判の会所属)
小山広明
小山博子(樹工房・インテリアコーディネーター)
小山正樹(樹工房 代表)
紺野茂樹
西塔文子
坂巻 真砂子(市民グループ「清瀬ごみともだち」)
崎山比早子(医師、高木学校)
佐々木眞二(農的生活者)
佐々木静枝(主婦)
佐々木彩美(パート)
佐々木阿子(大学生)
佐藤秀明(カメラマン)
佐藤宏(自営)
さとうまきこ
澤口佳代
品川昇(宇都宮大学国際学部事務長)
島京子(日の出の森・支える会)
清水郁子(ふぇみん婦人民主クラブ)
杉原浩司(核とミサイル防衛にNO!キャンペーン)
高倉敦子(ガイアみなまた)
高橋由衣
高橋陽子(戦争への道を許さない北・板橋・豊島の女たちの会)
田中靖枝(かもねぎ連)
田中優(未来バンク代表)
田中慶子
田中和恵
田中大道(仁平寺住職)
田中貴子
玉山ともよ(総合研究大学院大学 大学院生)
堤静雄
寺尾光身(名古屋工業大学名誉教授)
東条雅之(ジャーナリスト)
道原 浩美
富山正志
豊口安紀
豊島耕一(佐賀大学理工学部教授)
豊島幸一郎
中尾恵子(日本ビルマ救援センター、代表)
中川修治(NPO法人市民ソーラー宮崎副理事長)
仲野省吾
永野三智(財団法人 水俣病センター相思社)
永本賢二
成田小二郎(日本カトリック正義と平和協議会員)
西岡政子(環境カウンセラー)
ニシオカマユミ
仁禮恵子
野村修身(工学博士)
畠山照子(ふぇみん婦人民主クラブ)
浜口克己
林恒弘((特活)広河隆一非核・平和写真展開催を支援する会)
林田力
原田大二郎(有限会社カフェスロー)
比留間純子
廣水乃生(コミュニティファシリテーション研究所代表)
福島慶一
深田和秀(「脱原発の日実行委員会」、ストップ・プルサーマル!ふくしま)
藤井佳子
藤岡亜美
藤川修(琉春庵)
藤原寿和(止めよう!ダイオキシン汚染・東日本ネットワーク・事務局長)
二見孝一(みどりの未来会員)
星川まり
細田貴子(NPO理事)
増田博光
松下照幸
松永幸一郎
松村紀之
三戸きよえ(ナマケモノ倶楽部会員、ストップ!上関原発!会員、jinnbei_net会員)
南晃
宮崎慈(京都反原発めだかの学校会員)
宮西いづみ(広河隆一写真展事務局長)
三輪浩(長野ソフトエネルギー資料室、信州大学名誉教授)
森野篤
門司和夫(環境カウンセラー)
山口泰子(ふぇみん婦人民主クラブ)
山崎久隆(たんぽぽ舎/劣化ウラン研究会)
山下靖夫
山下 由佳(スラップ訴訟・対策研究会)
山添友枝
山田 美保子
山本由紀子(天然酵母パンはな)
山本尚佳(施設職員)
鷲尾由紀太(日野-人権・環境・平和の会/行政書士)
Individual Endorsements (Overseas)
Cheng-Yan Kao, Professor of National Taiwan University, Taipei, Taiwan
Dr. Carl Middleton, Lecturer, Faculty of Political Sciences, Chulalongkorn University, Thailand
Shin-Min Shih, Professor, National Taiwan University, Taipei, Taiwan
※外国からの賛同は、日本の納税に関する点以外の内容についての賛同です