原子力長計策定会議意見書(第24回)
原子力長計策定会議意見書(24)
2005年4月26日
原子力資料情報室 伴英幸
1. 原子力研究開発の進め方
1-1. 安全研究を研究開発の基本的考え方に明確に位置づけるべき
原子力研究開発の進め方の論点整理案は安全研究がネガティブに書かれているとの指摘が、第23回策定会議でありました。今回の案でも、この点に改善が見られたとは受け取られません。基礎・基盤研究活動の柱の一つとして安全研究を位置づけるべきだと考えます。
原発の高経年化が進んでいます。エネルギーと原子力発電の議論では、高経年化対策が原発の寿命延長といった矮小な問題提起がなされました。しかし、原発の高経年化で一番問題となるのは事故・トラブルの増加および過酷事故の恐れが高くなることだと考えます。原発の安全研究はますます重要になっています。
第15回策定会議の意見書に「推進重視・建設重視の考え方が改められない限り、安全重視は口先だけのものにとどまる」と書きましたが、先の「安全の確保に関する中間とりまとめ」を口先だけのものにしないためにも、明確に位置づけるべきだと考えます。
1-2. 評価結果を国民に公表するだけでなく、意見募集も行なうこと
研究開発の評価のあり方では「国民の視点からの評価」「国民に対し公表すること」などが盛り込まれて改善されました。次の改善は、国から国民への一方通行のあり方を改善することだと考えます。「国民に公表する」だけにとどまらず、例えば、評価に対する意見募集を行なうなど、政策決定に国民の意見を反映させる仕組みを作るべきだと考えます。
2. 人材の確保および原子力に関する教育について
2-1.原子力教育では原子力の厄介さや危険性も十分に教えること
論点整理案には「一方的な価値観を押し付けるのではなく」と記述されていますが、一方的であるのが実態です。2002年度から「原子力・エネルギーに関する教育支援事業交付金」が新設されましたが、これは2001年8月9日付電気新聞によれば「新潟県刈羽村でのプルサーマル計画に関する住民投票で反対票が過半数を占めた事態を受けて政府一体で対応を協議するために」設けられたプルサーマル連絡協議会の「中間とりまとめ」(2001年8月8日)の「アクションプラン」を具体化したものです。明らかに特定の意図を持って行なわれています。
原子力教育の支援を行なっている日本原子力文化振興財団の熊谷明科学文化部教育支援センター長も『放射線と産業』104号(2004年12月)の「学校教育における放射線教育」特集で「原子力広報に携わる我々は…」と自ら教育支援=原子力広報であることを表明しています。
例えば、使用済み燃料の97%が再利用できるとした宣伝、高レベル放射性廃棄物の厄介さにはほとんど触れない宣伝、ウラン燃料は5重の壁で囲まれていて全く安全で大事故は起きないといった宣伝、放射線は微量なら全く安全といった宣伝など、原子力の有用性や安全性が強調された宣伝が多く見られます。原子力教育はこのように一方的なものであってはならず、高レベル放射性廃棄物などに見られる厄介さや放射線の危険性、事故のおそれなどなどをきちんと教えるべきだと考えます。原子力の「宣伝」教育は事故の温床ともなりかねません。
2-2. 質問
人材の確保で国の安全確保における取組として人員が説明されています。策定会議では民間の将来の人員不足を懸念する声が上がっていますが、現状として、民間の原子力安全に携わる人員はどれくらいなのでしょうか?