新装版 『食卓にあがった放射能』
概要
追加情報
新装版へのまえがき
一九八六年に起きたチェルノブイリ原発事故後、原子力資料情報室のスタッフとして、当時焦点となっていた食品汚染の問題を担当した。ヨーロッパから伝えられる食品汚染のデータをまとめ、また、きびしい放射線のもとで暮らしていた友人たちから具体的な話をたくさん聞いてきた。
一九九二年からは、ベラルーシ、ウクライナ、ロシアの研究者と日本の研究者とのシンポジウムや研究会開催にかかわり、現地を数回訪れ、チェルノブイリで起きたことは理解していたつもりでいた。しかし、福島第一原発が日々深刻な事態に陥り、予断を許さない状態が続いている事故に直面して、初めて原子力災害とはこういうことなのだと実感した。
本書は故高木仁三郎さんとともに、輸入食品の汚染問題の先に考えなくてはならない、日本で稼働する原発(当時三七基)をどうするかを考えるきっかけになるような本にしようという意気込みでまとめたものだ。私にとってすべてが勉強しながらの作業だった。
本書の第1~4章は、当時問題となっていた輸入食品の放射能汚染についてまとめたが、事故後オーストリア政府がまとめた報告書を大いに活用した。唯一のツベンテンドルフ原発を運転開始前、国民投票によって止め、脱原発を実現させた国だ。原子力への国の姿勢が、チェルノブイリ事故後の対応にはっきり現れていた。そして、第5章の「日本で原発事故が起こったら」、第6章の「放射能にどう備えるか」のテーマをまとめながら、このようなことが日本で起こらないことを願わずにいられなかった。
しかし、実際に原発事故が起こったいま、政府や原子力学者の「安全キャンペーン」に惑わされることなく、すこしでも放射能摂取を少なくするように本書を役立てていただきたい。
新装版となる本書を読んで、あらためて、もう「脱原発しかない!」と心から思った。
いま日本には五四基の原発が存在し、ついに福島第一原発が危機的な状況にある。くやしくてならない!
こんどこそ、脱原発にすすまなければ、未来はない。
二〇一一年三月三〇日 原子力資料情報室スタッフ 渡辺美紀子
もくじ
まえがき
1 食品の放射能汚染とは
1 汚染食品の衝撃
2 放射線と放射能
3 放射線の人体への影響
2 チェルノブイリの放射能??その教訓
1 チェルノブイリ事故
2 放射能汚染への対応
3 食卓にあがった放射能
1 環境汚染から食品へ
2 ヨーロッパの汚染
3 ヨーロッパの食品の汚染度
4 輸入食品と放射能汚染
1 輸入食品の放射能監視体制
2 輸入食品の放射能汚染の実態
5 日本で原発事故が起こったら
1 原発過密国日本
2 事故のシミュレーション
3 食品汚染はどう進行するか
6 放射能にどう備えるか
1 チェルノブイリは終わらない
2 自衛する市民
3 事故にどう備えるか
4 S氏との会話 ― しめくくりに代えて