福島第一・第二原子力発電所の核燃料の保管状況について
福島第一原子力発電所(以下FⅠ)、福島第二原子力発電所(以下FⅡ)に貯蔵されている核燃料の状況をまとめる。
FⅠとFⅡの原子炉と使用済み燃料プール
2013年1月31日の時点で各原子炉と建屋内の燃料プールに装荷(溶融)または貯蔵されている核燃料のデータを表1にまとめた。FⅠの4号機はシュラウド交換工事のため炉内燃料をすべて使用済み燃料プール(SFP)に移送しており、新燃料も含め総数1,535体が貯蔵され発熱量も高かった(表2)。FⅡの4号機は、2012年10月に炉内のすべての燃料をSFPに移送した。
FⅠ4号機使用済み燃料プール
2011年3月15日の建屋上部の水素爆発によって大量のガレキがプール上に落下し、核燃料や建屋の健全性に内外から強い懸念の声が上がっている。東京電力は、SFP底部を剛性支柱とコンクリート壁で補強し、「東北地方太平洋沖地震と同程度(震度6強)が発生しても耐震性は十分である」と、まったく科学的根拠のない説明を繰り返している。4号機SFP内の詳細な燃料配置図はネット上で入手できる*1。
燃料取り出しカバー
東京電力は4号機SFPからの燃料取り出し作業を2013年11月中旬から開始し、約1年後の2014年末に完了する予定だ。試験的に新燃料2体が共用プールに移送・検査され、腐食や変形はないと報告されている。しかしSFPには大量の海水が投入されたことや、使用済み燃料でなく、わずか2体の新燃料の検査でこのような判断は拙速と言わざるをえない。
4号機も水素爆発によって本来の燃料クレーン等が破壊されたため実際の取り出し作業は、建屋5階部分やSFP上部のガレキ等をすべて撤去し、地上高約53m、南北約69m、東西約31mの「燃料取り出しカバー」という構造物を建屋横に設置して行われる(図1)。クレーン支持用架構は原子炉建屋に荷重をかけない構造とされているが、耐震性はBクラスだ。2基の輸送容器(NFT-22B 型:収容体数22以下)を使用し、取り出した燃料は共用プールに移送される予定だ。
使用済み燃料共用プール
共用プールには核燃料6,375体が貯蔵中だ。今後、FⅠの1~4号機のSFPに貯蔵されている合計3,108体を受け入れることになるが、表1から明らかなように容量はほとんど残されていない(貯蔵量は約93%)。そのため燃料の約半数を後述する乾式キャスク仮保管設備に移送して容量を確保する模様だ。移送される燃料の中には、同プールの設置許可に含まれていない使用済み燃料(7×7燃料)、新燃料(9×9燃料)、破損燃料のほか、表2にあるように沸騰水型原子炉のほとんどの燃料タイプが含まれる。また実際には移送される燃料の破損や塩分付着が想定されていて、プールの水質維持に必要な改造工事が計画されている。
乾式キャスク貯蔵施設
福島第一原発には使用済み燃料を乾式容器で貯蔵する設備が設置されており、中型4基(37体収納),大型5基(52体収納)で合計408体の使用済み燃料を貯蔵している。この施設は海岸近くにあるため地震や津波の浸水によって貯蔵容器が一部水没した模様で、貯蔵燃料の健全性はこれから調査される予定だ。設備内部の損傷が大きく、温度などの監視計測系や天井クレーンが使用不能となり、施設を「継続して使用することは困難な状況」(東電)で、容器の搬出が予定されている。
乾式キャスク仮保管設備
東京電力は、乾式貯蔵容器と共用プール内の使用済み燃料をサイト内に新たに設置する「乾式キャスク仮保管設備」に移送する予定だ。この設備は将来的に、乾式貯蔵キャスク20基(設計貯蔵期間40年)、輸送貯蔵兼用キャスク45基(69体収納:設計貯蔵期間50年)を貯蔵する計画だ。「仮保管」といっても、50年間という長期が想定されている。日本では乾式貯蔵の経験が乏しく、このような長期にわたる燃料の健全性確保は大きな課題である。
*1:4号機の燃料配置図「DOE Response to Fukushima Dai-ichi Accident、John E. Kelly、May 26, 2011」
pbadupws.nrc.gov/docs/ML1114/ML11147A075.pdf (188/210ページ)
配置図(下記参照)は東電から米国エネルギー省(DOE)に提供されたものだが、日本国内ではいまだに一切公表されていない。
(澤井正子)