大強度陽子加速器施設の人為的放射性物質放出と意図的通報遅れに関する質問状
2013年5月28日、茨城平和擁護県民会議、反原子力茨城共同行動、脱原発とうかい塾、原水禁日本国民会議、原子力資料情報室は、J-PARCセンター長宛てに、大強度陽子加速器施設の人為的放射性物質放出と意図的通報遅れに抗議して、以下の質問の申し入れを行いました。
大強度陽子加速器施設の人為的放射性物質放出と意図的通報遅れに抗議し、質問の申し入れをする
貴センターはこのたびの事故で、放射性物質の放出と作業者(研究者など)の被曝、通報が遅れるにいたった経緯を次のように説明している。
J-PARC・ハドロン施設で、2013年5月23日11時55分頃、何らかの原因で警報が鳴るとともに、放射性物質が発生し、それがビーム取出装置から施設の中に漏えいした。作業者は放射性物質の漏えいに気づかずに、警報吹鳴の原因も確かめないまま0時8分に装置の運転を再開した。13時30分頃、施設内の放射線量の上昇を確認し、14時26分頃運転停止。15時15分頃、フィルターなしの排気ファンを回して、線量低下を確認する。同32分運転開始、16時ごろまた線量が上昇したので、同15分再び運転停止。17時ごろ施設ホール内の汚染を確認、同30分頃再びファンを回す。その後、作業者の身体汚染検査、ホール内の線量測定、汚染測定を行い、23時30分頃ハドロン管理区域を閉鎖するという措置をとった。翌24日、関係者による報告や対策を議論したが、以上の事態を通報連絡の対象事故とは考えずに時間が推移した。17時30分頃になり核サ研からモニタリングポストの線量が、(昨日ファンを回した時間帯で)一時的に上がっているとの通報があり、18時過ぎには管理区域境界のエリアモニターでも同一時間帯で線量上昇が記録されていたことが判明。やっと、放射性物質の管理区域外への漏えいという異常事象に当たるとし、22時40分関係機関へ連絡した。通報に1日半を要したのである。そして被曝作業者の数は施設入所者55人中33人となった(5・27現在)。
このように事態を追ってみると、作業者の連続運転の功を急ぐあまり原因追及を疎かにするという功名心と安全性への感度の鈍さ、閉じ込めなければならない放射能を意図的に放出するというこれまた安全麻痺、被曝者が出ており、敷地内に放射能が漏れている事態を確認しても通報しようとしない隠蔽体質、管理区域外に放射能が漏えいしていたという証拠が挙がって初めて通報するという態度は言語道断であり、地域住民としてはとても容認できるものではない。
放射線障害防止法の対象施設だとはいえ、扱うのは放射性物質であり、危険施設であることに変わりは無い。放射能の意図的放出と情報隠しの意図をもった通報遅れに強く抗議するとともに、施設の安全対策と作業者の安全性への真摯な取り組みを強く要求するものである。
その上に立って以下の質問をするので回答をお願いしたい。
質問
1.警報の原因を何故すぐに追及しなかったのか。
2.エリアモニタの線量が10倍になっても想定範囲のレベルと考えたのか。その線量を確認してから運転停止までほぼ1時間も経っているがこれは何故か。
3.放射性物質の発生は通常の400倍の陽子ビームが流れ、ターゲットの金が蒸発したためと言うが、それは何時わかったのか。400倍の証拠を示せ。蒸発したことをどのように確認したのか。温度は摂氏何度に達したのか。重量を測ったのか。
4.運転停止からファンを回すまで50分、この間何をしていたのか。
5.ファンは何故回したのか。
6.施設外に放出した放射性物質の総量はどのくらいか。どのような核種が認められるか。
7.核サ研の線量データを示せ
8.安全対策の上で、今回のような事故は想定されていたか。また同じような事故例は諸外国にあるか。
9.規制委員会は国際的な事故基準で、今回の事故をレベル1としたが、これをどう考えているか。