原子力小委員会参加記⑲相変わらずのフルセット
2月26日、12回革新炉ワーキンググループ(WG)が開催された。今回のテーマは核融合炉の開発状況と開発ロードマップだった。はじめに核融合炉の検討を担当している内閣府から検討状況の共有があり、事務局からロードマップの説明があった。注目したいのは革新軽水炉の運転開始時期が従来の2030年代後半から2040年以降に、高温ガス炉が2030年代半ば頃から2030年代後半に変わった点だ。
私は以下の通り発言した。
1 「全部進める」という政策と「人材もサプライチェーンも不足している」という現実が資料内で同居している。私は原子力から撤退すべきという立場だが、本気でこの議論を進めるのであれば、限られたリソースをどう配分するかという戦略的判断が必要だ。それがこの資料からは見えない。2030年代に全炉型の開発を同時並行で進めることは人材・産業基盤の観点から不可能に近い。原発のコストが安くなるという議論があるが、これは同じ炉を複数建設することで経験を積んで2~3割削減できるというもの。日本で大量に原発を建設していた時代でも毎年コストが上がったので、この主張に疑問があるが、これが正しかったとして、全く異なる複数炉型をすべて開発することが合理的とは考えられない。
2 高速炉の特徴としてウランの利用率が軽水炉では1%のところ、100%になるという記述があるが、この現実性はかなり乏しい。マイナーアクチノイドを混ぜた燃料を使うことで、燃やせるということなのかもしれないが、コストは極めて高くなる。原子力は高い建設費、安い燃料費、長期運転で平準化した時にコスト競争力がでるというものだ。近年は建設費があまりにも高くなりすぎて競争力が著しく低下した。燃料費が高くなれば全く話にならない。こういう誇大広告的なものは示すべきではない。
3 高温ガス炉について、OECD/NEAの水素コスト試算を引用しているが、低CAPEXを前提とした限界の大きな資料だ。削除、または相当の留保が必要な資料であることを明記すべき。また高温ガス炉は燃料が従来の軽水炉とは大きく異なる。使用済み燃料の全量再処理という政策とは大きな齟齬がでることは課題として明記するべき。
4 高速炉や高温ガス炉、核融合炉などに投じられている予算規模と技術成熟度・商業化見通しのバランスを問う視点がない。兆を超える額が投じられ、これ以上の支出には評価が必要だ。高速炉、高温ガス炉、核融合炉にはマイルストーンが設定されているが「どのような条件が満たされなければ中断するか」という基準がない。始めたらやめられないという国の研究開発の悪いところが如実に出ている。
5 核融合について、原子力は初期段階で廃棄物について極めて楽観的に考えた結果、今日まで問題を解決できないでいる。核融合炉では高レベル放射性廃棄物は発生しないが、中低レベルの廃棄物は大量に発生する。それなのにバックエンド問題は高レベル廃棄物が発生しないことをもってほぼ考慮していないのは政策上、大きな問題である。また、「燃料は海水中に豊富」との記述があるが、燃料トリチウムの供給についても大きな課題がある。世界のCANDU炉は順次廃炉となっており、初期のトリチウム不足が指摘されている。さらに運転中のトリチウム増殖についても不確定性がある。
複数の委員からも、リソース配分への考慮が必要との発言があった。また規制予見性や事業環境整備の必要性などの意見が出た。WGの議論は一段落し、事務局側で意見とりまとめとなった。
(松久保 肇)


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