原子力資料情報室声明:トルコ共和国・アラブ首長国連邦との原子力協力協定の衆議院可決について

NPO法人原子力資料情報室は、トルコ共和国・アラブ首長国連邦との原子力協力協定の衆議院可決にされたことを受けて、以下の声明を発表いたしました。


 

【NPO法人 原子力資料情報室 声明】 

トルコ共和国・アラブ首長国連邦との原子力協力協定の衆議院可決について

2014年4月9日

NPO法人 原子力資料情報室

 2014年4月4日、トルコ共和国・アラブ首長国連邦との原子力協力協定が衆議院本会議で可決され、事実上成立した。今後、参議院で審議が行われるが、仮に、参議院で否決されたとしても、原子力協力協定は、条約となるため、衆議院の議決が優先されることとなる。

 私たちは、これらの原子力協力協定の締結に強く反対する。

 とりわけ、福島第一原発事故を経て、原子力規制が極めて重要であると痛感したはずの日本政府が、いずれも現在建設中ではあれ、現状は原子力発電所を持たない、つまり、原子力規制体制が脆弱な両国に対して、原子力発電所の輸出を前提とした原子力協力協定の締結に至ったことは重大な問題であると考える。

 依然、福島第一原子力発電所事故は収束せず、日々膨大な汚染水を生み出している。去る3月25日には、福島県の漁民に対して地下水バイパスの承認という苦渋の選択を強いている。今後も福島県民に苦悩を与え続けるであろう。

 その一方で、国と原子力産業は、原子力発電所を輸出するという。そのような行いは、倫理的にも政治的にも許されるものではない。

 また、原子力発電所の輸出は核セキュリティ上の問題でもある。今回締結しようとするアラブ首長国連邦のドバイは、パキスタンのカーン博士の「核の闇市場ネットワーク」の中継点であったとされるし、トルコについては、両国の書面による同意を前提とするものではあれ、協定上に「濃縮し、又は再処理することができる」と明記された。このことは将来の核兵器開発の余地を残すものである。周辺国がそのように受け取り、同様に核兵器開発に向かうことも想定せざるを得ない。

 日本は広島、長崎と2度の核攻撃を経験し、更に、福島で原子力発電所シビアアクシデントを経験した。そのような国が、核拡散のリスクを増大し、原子力発電所のシビアアクシデント発生リスクを増大させることは断じて許されるものではない。

以上