原子力資料情報室声明:大間原子力発電所計画に対する函館市の提訴について
NPO法人原子力資料情報室は、本日、函館市が大間原子力発電所の建設差し止め等を求める訴訟を東京地方裁判所に提訴したことを受けて、以下の声明を発表いたしました。
【NPO法人 原子力資料情報室 声明】
大間原子力発電所計画に対する函館市の提訴について
2014年4月3日
NPO法人 原子力資料情報室
本日2014年4月3日、青森県大間町に建設中の大間原子力発電所の建設差し止め等を求める訴訟を、対岸の函館市が東京地方裁判所に提訴した。訴えの相手は、国と電源開発株式会社である。私たち原子力資料情報室は、日本の原発史上初めて地方自治体が原告となり原子力発電所の安全性を問うこの訴訟を全面的に支持する。
大間原子力発電所は、出力138.3万kWの改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)である。電源開発株式会社が、2008年に原子炉設置許可を受けて建設を開始し、現在の工事進捗率は約38%と公表されている。計画では、世界で初めて全炉心にMOX燃料(ウラン・プルトニウム混合燃料)を装荷する予定である。プルトニウムが大量に炉心に装荷されることに伴い、運転・制御等に様々な困難が生じ、事故時の放射能被害はウラン燃料や他の原発でのプルサーマル(1/3MOX燃料装荷)に比して、さらに危険性が高まることは確実である。
現在原子力発電所を運転しておらずプルトニウムを所有していない電源開発が、大量のプルトニウムを消費する全炉心MOX(プルトニウムの装荷量は約6.5トン)という危険な原発を運転する理由は、明らかに他電力会社の余剰プルトニウム対策の肩代わりである。大間原発に求められているのは発電ではなくプルトニウムの焼却であり、核燃料サイクル政策失敗のつじつま合わせが、大間原発計画と言える。このような原子力発電所の建設を正当化する理由は何もない。
福島第一原発原子力発電所メルトダウン事故という最悪の過酷事故を目の当たりにして、大間原子力発電所の危険性に強い懸念を感じたのは函館市民だけではない。ひとたび事故が起これば、放射能汚染に脅かされるのは道南地域でも済まないという現実がある。訴訟の原告は圧倒的多数の市民に支持されている函館市であるが、今日まで函館市周辺の北斗市,七飯町,松前町、福島町などの首長や市町議会関係者、函館商工会議所ほか経済団体,一次産業団体などが大間原発の工事中止や計画凍結を求めている。それは、ふるさとを失いたくないという、人として当たり前の願いである。
大間原子力発電所の建設・運転によって生じる危険性から市民の生命や財産を守り、函館市という自治体を将来の世代に引き継いでいきたいという函館市の主張は、計画を中止するに値する十分な理由である。東京地方裁判所での審議によって、函館市の主張に裁判所が正当な判断を下すことを期待する。
■関連リンク
函館市の大間原発訴訟に関するホームページ
www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2014031000166/
訴状の概要
www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2014031100330/files/251209sojogaiyo.pdf
以上