「検査の在り方に関する検討会」で定検「合理化」の策動再開

「検査の在り方に関する検討会」で定検「合理化」の策動再開

 総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会「検査の在り方に関する検討会」(第12回)が11月15日に開かれた。2003年11月14日の第11回以来2年ぶりである。東電事件や美浜3号事故などから時間が経過するのを待って定期検査「合理化」の動きを再開したものである。第12回「検討会」で配布された「原子力発電所の検査制度に関する今後の検討方針(案)」では、「我が国の定期検査の間隔は[略]特に科学的な根拠に基づき定められたものではない」とした「中間とりまとめ」(2004年6月)に言及し、ハードウェア検査からソフトウェア検査への方向性のほか、リスク評価、パフォーマンス評価、性能規定化などの流れを示している。電気事業法施行規則で十三月を超えないとされている定検間隔をより広げ、状態監視保全やオンライン補修を導入したいという欲求が根本にある。アメリカの検査システムなどを参照しつつ「6月頃を目途に報告書を取りまとめる」という。
 しかし現在でも「定期検査期間短縮で十分なチェックができなくなっていることを危惧している。これまで長く発電所に携わってきた人間のノウハウが失われ、技術の継承もできず、初歩的なミスが増えてきているのではないかと案じている」「数年後に定検を24時間体制でやる計画があるようで、関連企業は人員を削減している中、24時間体制でやられたら負担も大きく、夜勤で仕事をしたらミスも増え、人身災害も増えると思う」など実態は深刻である(福島県のサイト www.pref.fukushima.jp/nuclear/ に「原子力発電所に関する情報」として掲載された現場の声)。老朽化の進行と検査体制の改悪は、人材構成の変化と相まって、原発の運転をますます危険な領域へと押しやっている。事故の温床を作る「検討会」の方向性は、労働現場の悲鳴と公衆安全に全く逆行している。

『原子力資料情報室通信』378号(2005.12.1)短信
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