福島はいま(21)絵に描いた餅第4次総合特別事業計画
東京電力ホールディングス(以下、東電HD)は7月21日に経済産業省ならびに内閣府原子力損害賠償・廃炉支援機構担当の梶山弘志大臣に対し第4次総合特別事業計画(以下、4総特)の認可申請を行い、8月4日に認可を得た。前回の新々・総合特別事業計画(新々総特)(2017年)から4年、新たに改定された内容を、原子力発電を中心に検討した。
膨大な子会社群
旧東京電力は、発送電分離制度の導入に際し2016年4月からホールディングカンパニー制に移行した。持ち株会社の東電HDの下、発電部門は東京電力フュエル&パワー、送配電事業は東京電力パワーグリッド、小売部門は東京電力エナジーパートナーを分社化、さらに再エネ部門を東京電力リニューアブルパワーとして発電部門から分離している。原発は東電HDに属している。
2020年度有価証券報告書によれば、この他に連結子会社が36社あり、議決権の比率が20%以上の関連会社が28社に上る。後者の中には日本原燃(議決権29.7%)、日本原電(議決権28.3%)などが含まれる。なお、日本原燃の歴代社長は東電が派遣している。原発でのこの間の不始末を考えれば、このように膨大な子会社群に東電HDのガバナンスが効くとは考えにくい。
新々総特からの環境変化
4総特では環境変化を2050年カーボンニュートラルと捉えているが、ここでは割愛する。もう一つの環境変化として、柏崎刈羽原発で起きた不正入室および侵入防止装置の故障放置問題など「一連の不適切事案により、社会や地元からの信頼を大きく毀損」したことをあげている。4総特では上記の2つの事例をあげているが、このほかにも追加的安全対策工事が未完であるにもかかわらず完了報告をしていたことや内部告発で明らかになった消火器配管の不正溶接などがある。2002年の東電トラブル隠しで東電の原発は全て停止して安全点検を実施しなければならなかった。信頼回復が最優先課題としているが、02年いらい信頼は失われたままで、もはや回復は不可能と言える。全基停止こそが残された道だ。
取らぬ狸の皮算用
このような状況にもかかわらず、22年度に柏崎刈羽7号機の再稼働を、24年度には6号機の、そして28年度にはさらに1基(明示なし)の再稼働を想定している。1基1年あたり500億円の利益を想定し、再稼働が23年以降になる場合も仮定して経常利益を試算している。新々総特は4基の再稼働を想定し、上手くすれば全基の再稼働を夢見ていたのだから、30年度以降の再稼働を思い描いているのかもしれない。東電HDは損害賠償で年間2,000億円程度、福島廃炉で年間3,000億円程度の資金を確保し、さらに年間4,500億円程度の経常利益をあげたいとしている。連結決算での見通しなので、子会社の利益も当てにしているが、その一つ日本原燃は新々総特では27年度にこの状態に達する見通しを立てていたが、4総特では30年度以降としている。原子力に依存した事業計画では達成はできないと言える。
果たされない「3つの誓い」
東電HDが掲げる誓いは①最後の一人まで賠償貫徹、②迅速かつきめ細やかな賠償の徹底、③和解仲介案の尊重である。ADR仲介案の拒否、そして裁判の現実などをみれば、どれひとつとして守られていないことは明らかだ。
(伴 英幸)