【原子力資料情報室声明】柏崎刈羽原発「運転禁止」解除、規制委に判断する資格があるのか

柏崎刈羽原発「運転禁止」解除、規制委に判断する資格があるのか

2023年12月27日

NPO法人原子力資料情報室

2020年に発覚した柏崎刈羽原発での核物質防護規定違反について、2021年3月、原子力規制委員会は事実上の運転禁止にあたる特定核燃料物質の移動禁止命令を発出していた。この命令について規制委は、事業者である東京電力の体制に改善が見られ、今後も継続して改善に取り組む姿勢が示されたとして、12月27日の第56回委員会で命令を解除した[i]

東京電力は原発の品質管理で非常に悪い履歴を残してきた。たとえば2002年の東電トラブル隠し事件では、1980年代から原発で見つかったトラブルを組織的に隠ぺいしていたことが明らかとなった。その後、体質改善に取り組んだはずだったが、2006年にも検査データ改ざん事案が発覚した。2011年の福島第一原発事故では、のちに福島第一原発に想定よりも高い津波が来る可能性があることを知りながら、組織として対応しないことにしていた。2021年の核物質防護設備の機能の一部喪失事案では、東京電力は組織として核物質防護設備の復旧の必要性を認識しながら改善を怠っていた。なお、柏崎刈羽原発ではそれ以外にも社員が書類を不正に持ち出し紛失する事案や、数多くの施工不良事案なども発覚している。

東京電力は、柏崎刈羽原発の体制強化、発電所近傍への本社機能や、あいさつ運動、社長直属のモニタリング室の設置などで継続的改善に取り組むという。だが2002年のトラブル隠し事件を受けての改善策[ii]でも社長直轄の独立監査機能の整備や、企業倫理行動基準の策定、品質保証にかかわる教育研修などが挙げられていた。以降も類似の事案が発生する度に似たような改善策を立てては、問題を起こすことを繰り返している。今回もなぜ東京電力の改善策が奏効しないのか、同じような問題が繰り返されるのか、といった疑問には全く応えられていない。

東京電力の組織改善の取り組みについて、規制委は最低限ながら改善したと判断している。しかし、そもそも改善したと判断できるような専門性が規制委にあるのだろうか。規制委の委員の顔ぶれを見ると、組織論や品質管理といった専門性がある委員は一人もいない。規制委は「何ものにもとらわれず、科学的・技術的な見地から、独立して意思決定を行」う[iii]、という組織理念を掲げている。だが、規制委は印象論に基づいて判断しているに過ぎない。規制委は科学を僭称するべきではない。


[i] www.nra.go.jp/data/000464796.pdf

[ii] www.tepco.co.jp/cc/press/betu03_j/images/20030307b.pdf

[iii] www.nra.go.jp/nra/gaiyou/idea.html

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