【原子力資料情報室声明】女川原発2号炉がかかえる安全上の問題点
2024年10月29日
NPO法人原子力資料情報室
女川2号炉は安全上の重大な問題をかかえたまま、東北電力は原子炉の運転再開に向かっている。
まず、女川原発は東日本大震災(東北太平洋沖地震)で、もっとも大きな地震の揺れに襲われた原子力発電所であることを思い出そう。ギリギリのところで大きな津波の直撃による原発全体の大破は逃れることができたが、地下水路を逆流してきた海水によって非常用ディーゼル発電機が動かなくなるなど、大きなダメージを受けた。2号炉の原子炉建屋のコンクリート壁には1000箇所以上の亀裂が発生して大幅な強度低下が起きており、今後起きるかもしれない大地震に対して十分な強度を持つように補修工事がなされているかどうか疑問である。
耐震安全上の対策にも問題がある。原発に到達する地震の揺れの大きさを十分きびしく想定出来ておらず、原発の機器の評価が甘くなってしまっている可能性がある。2024年能登半島地震では、志賀原発で記録された揺れの大きさは、電力会社による事前の見積もり計算の2倍以上となっており、計算手法に問題のある可能性が高い。東北電力もほぼ同じ手法で女川2号炉の揺れ(基準地震動)の見積もりをおこなっているため、やはり過小な見積もりにとどまってしまっている可能性がある。せっかく女川2号炉で進められていた格納容器の下部のサプレッションプールの耐震強化工事も、揺れの見積もりの誤りから、想定されている規模の地震にすら耐えられない、ということがおこりうる。
もう一つの問題として水素爆発がある。これは女川2号炉だけでなく、構造上、とくに沸騰水型原発で大きな問題となり得る。福島第一原発では、1号炉・3号炉・4号炉で建屋が大きく崩壊するほどの水素爆発が起きた。しかし、爆発のメカニズムは十分解明されておらず、十分な水素爆発対策も策定されていない。当然、女川2号炉における水素爆発対策も、燃料熔融事故時に発生する水素を処理しきれるようなものとはなっていない。女川2号炉でひとたび冷却不能事故が発生すれば、燃料熔融→水素爆発→建屋の大崩壊→放射能の環境中への大放出、までが一連の事態として引き起こされてしまうことは避けられない。
2011年3月に停止してから、13年半以上も停止しつづけていた原発を動かしはじめようとすることも大きな安全上の不安要素である。原子炉建屋内の制御棒水圧駆動系からの水漏れや非常用ガス処理系の誤作動など、ここ数か月で起きている小さな事故の発生が安全上の問題が隠れていることを示唆している。
以上