「核のゴミ」地層処分問題の全国声明に取り組む会の声明文紹介
2024年11月27日、「核のゴミ」地層処分問題の全国声明に取り組む会が、文献調査報告書の提出に抗議する声明を発表しました。その声明の内容を紹介します。
※この声明は原子力資料情報室との共同声明ではありません。当室の見解の表明ではないことに留意してください。
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声明
寿都町および神恵内村における「核のゴミ」処分場計画が
概要調査に進むことに反対する
-問題点の多い文献調査報告書の提出に抗議する-
「核のゴミ」地層処分問題の全国声明呼びかけ人
赤井純治(元新潟大学)
岡村 聡(元北海道教育大学)
関根一昭(元埼玉県立高校)
2024 年 11 月 22 日、原子力発電環境整備機構(NUMO)は北海道の寿都町、神恵内村にて 4 年にわたって実施してきた文献調査に関する報告書を、寿都町長、神恵内村長および北海道知事に提出した。NUMO は文献調査に基づいて、寿都町全域、神恵内村南端の一部を概要調査実施候補地域としている。私たちは地層処分の問題点を明らかにして、2023 年 10 月 30 日に地球科学の専門家 300名余(その後 386 名)の賛同者を募り、『世界最大級の変動帯の日本に、地層処分の適地はない』という核のゴミの地層処分に反対する声明を公表した。
文献調査報告書は地球科学的内容に限っても多くの問題点を含んでいるが、とくに次の 2 点について指摘し、概要調査に進むことに強く反対するものである。
第 1 点目は、候補地に分布する岩石や断層の問題である。両町村には水冷破砕岩とよばれる岩石が広く分布し、非常に脆弱な性質を示すにもかかわらず、概要調査段階に先送りされた。神恵内村の沖合には海底活断層が、寿都町には最も活動度の高い活断層が走っているが、これらを否定ないしは過小評価した。また、寿都町には低周波地震が発生しており能登半島地震との類似性が危惧されているが、これについても避けるべき対象ではないとした。これらの地質的特性は、処分場を破壊もしくは損傷を与え、放射性物質が漏れ、地下水を通じて地表にもたらされる危険性がきわめて高い。文献調査は、これらの懸念事項を積極的に精査し、処分場として排除するのが本来の役割であるが、それらはなされていない。
第 2 点目は「磯谷溶岩」に関する問題である。岡村ほかは、2024 年 10 月に行われた火山学会で、寿都町東部に分布する「磯谷溶岩」の年代が第四紀の下限である 258 万年より新しい可能性があることを報告した。「科学的特性マップ」の基準は、第四紀火山の半径 15 ㎞以内の処分場建設を禁止しており、寿都町は西部のごくわずかを残し、そのほとんどは処分場に「不適」となる。これに対しNUMO は、この口頭発表は品質が確保された文献でないとして否定し、報告書に盛り込まなかった。しかし、本報告書を審議した経済産業省の作業部会に参加する専門家からは、作業部会での審議において、「磯谷溶岩」が優先的に調査すべき対象とされていたことから、この度の最新知見を考慮し第四紀火山として扱うべきとの意見を述べている。最新知見を無視した NUMO の対応は、文献調査報告書の科学的信頼性を毀損きそん し、誠実さを欠く態度である。
仮に概要調査にすすむと、地元には 70 億円が交付されることになる。巨額な交付金と引き換えに危険な施設を押し付ける旧態依然とした施策が繰り返されようとしている。国も NUMO もこのような不誠実なやり方を即刻廃して、民主的で開かれた検討の場を保証すべきであることを付言し、文献調査報告書の提出に抗議し、概要調査に進むことに反対を表明するものである。
なお、ここで「科学的特性マップ」についても述べる。2024 年 5 月に玄海町長は文献調査を受け入れた。玄海町のほぼ全域が経産省の定めた「科学的特性マップ」では「好ましくない地域」であるにもかかわらず、N U MO と経産省が玄海町に強く働きかけ、文献調査・候補地として手を上げさせたものである。このことは、「科学的特性マップ」自体が、完全に破綻したといえることを指摘しておく。
2024年11月27日
連絡先:
赤井純治(akai@geo.sc.niigata-u.ac.jp)
岡村聡(okamura.satoshi@s.hokkyodai.ac.jp)
関根一昭(sekine-kz56@chichibu.ne.jp)