原発輸出に反対するインド・トルコの市民からの日本政府への要請

2016 年 3 月 11 日

外務大臣 岸田文雄 様

南部アジア部長 梨田和也 様

軍縮不拡散・科学部長 相川一俊 様

中東アフリカ局 上村 司 様

 

日印原子力協力協定および日トルコ原子力協力協定に関する要請

 

                 

                         ●インド

Coalition for Nuclear Disarmament and Peace(インド核軍縮平和連合)

                         ●トルコ

Sinop Anti-Nuclear Platform(シノップ反原発プラットフォーム)

Nukleersiz(脱原発プロジェクト)

                         ●日本

原子力資料情報室

戦略 ODA と原発輸出に反対する市民アクション(COA-NET)

ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン

平和と民主主義をめざす全国交歓会

 

 

 みなさまの日頃の業務へのご尽力に敬意を表します。

 一昨年6月に発効した日トルコ原子力協定、昨年12月の安倍首相訪印の際に合意された日印原子力協力協定の早期締結について、私たちはインド、トルコ、日本の市民は、原発の危険性、核拡散に繋がる恐れから、強く懸念しています。

なにより、今日5年目をむかえた福島第一原発事故がもたらした極めて深刻な事態を誠実に受け止めるなら、原子力発電所の輸出などもってのほかだと考えます。

そこで以下の通り要請いたします。

 

要請

 

日本からインド・トルコへ原子力発電所を輸出しないでください

 

このような立場から、以下の通り質問いたします。政府としてのお考えを、ご回答願います。

 

原発輸出の倫理性について

 

1.広島、長崎で原爆による大被害を経験し、福島で2011年に破局的な事故を経験したにもかかわらず、なぜ日本は原発という選択肢に固執しようとするのですか?福島原発事故による破壊や損失、放射性物質の飛散などによる被害はまだ継続しているというのに。(インド団体提示)

2.原発が本来的に持っている危険性を十分に知っていながら、なぜ原発を海外に輸出しようとするのですか?安全性という面においても、大事故の後の補償や除染によって天文学的なコストが必要となるという面においてもそうです。(インド団体提示)

3.福島原発事故後、日本政府は安全確保のためや国民の反対を受けて、すべての原発を停止させました。それにもかかわらず、日本は原発を他国へ輸出しようとしています。このようなことは道徳的・倫理的に問題があるのではないでしょうか。日本で原発が停止しているため職を失った原発技術者や原発事業関係者に、他国での原発プロジェクトの機会を与えるということでしょうか。トルコの原発プロジェクトでは何人の日本人、何人のトルコ人が雇われるのでしょうか。(トルコ団体提示)

 

核の問題について

4.日本とインドは最近、日印原子力協定の締結について大筋合意しました。両国がこれを「歴史的」なことだと評しているようですが、インドではこの大筋合意が何を意味するのかについてほとんど何の議論もありません。日本では、この協定によってインドが今後は核実験を実施しないかのように説明されているようですが、もしそれが事実だとすれば、インドではそのような話はまったく公式に表明されていません。この非常に重要な懸念について、説明してください。(インド団体提示)

5.トルコと日本の政府が結んだ国際協定には、トルコがウランの濃縮と再処理を行うことを可能とする条文があります。これは日本とトルコを含む国際社会が取り組んできた核兵器不拡散の努力に反するのではないでしょうか。(トルコ団体提示)

 

原発のコスト

6.シノップ原発の建設コストは日本では160億ドルと発表されていますが、トルコ政府はそれを220億ドルと発表しています。この60億ドルの差額には何の意味があるのでしょうか。(トルコ団体提示)

7.インドの人々は、日本の技術力や科学の発展や研究成果を尊敬しています。あらゆる研究で、将来のエネルギーは再生可能な選択肢へと移行していくべきものであることが明らかにされています。アメリカの大統領選の候補者もそう公言しています。コスト、安全性、気候変動などあらゆる角度から考えて、再生可能エネルギーこそが未来の選択肢です。なのにどうして日本は、アジア地域のパートナーであるインドの兄弟姉妹たちのところへ、危険で割高な原発を売りつけようとするのですか?(インド団体提示)

 

市民への抑圧、政治的安定性について

8.インドで原発に反対する人々は、インド全土で、暴力的な弾圧を受けたり、国家反逆罪に問われたり反国家のレッテルを貼られるなどして攻撃されています。反対運動の中で多くの人々が負傷していますし、命を落とした人たちもいます。この弾圧は、政府が原発を建設しようとするかぎり、続くでしょう。原発を輸出することが、インドの人々に対して、広範な暴力や弾圧をもたらすものだと分かっても、それでもあなたたちは原発をインドに輸出しますか?(インド団体提示)

9.トルコではここ5年ほどの間、政府による市民への圧力が強くなっています。政府の暴力による死者も出ています。トルコで行われた調査によると、トルコ国民の65%が原発建設に反対しています。毎年、チェルノブイリ原発事故と福島原発事故の記念日には、何万人ものトルコ人が原発に対する抗議活動を行っています。原発が建設されることになれば、より強い抵抗運動が行われるでしょう。そのなかで死傷者が出る可能性もあります。日本側は以上のことについてどう認識しているのでしょうか。(トルコ団体提示)

10.私たちの知る限り、原発の建設はおよそ10年の期間を要します。この期間中、トルコでは3回の国会選挙が行われ、政治状況が変化する可能性があります。また、トルコの周辺国では混乱が続いており、トルコ国内でもテロ事件が頻発しています。このような状況で、トルコでの原発プロジェクトは安全を確保できるのでしょうか。このようなプロジェクトは日本側にとってもリスクが大きいのではないでしょうか。(トルコ団体提示)

 

原発の安全性および規制、政治的安定性について

11.ジャイタプール原発のEPRでは、日本製の機器が使用されます。EPRは、フランスの規制機関自身が安全ではないと指摘している炉型です。そのようなケースでそれらの機器の輸出の安全性を日本は断言することができるのですか?(インド団体提示) 

12.インドの原子力規制機関は独立して居ません。日本はインドに原子力技術を輸出するなら、少なくともより強力な規制機関を求めるべきだったのではありませんか?(インド団体提示) 

13.国際女性デーをひかえて、放射線がリプロダクティブヘルスや無防備な子どもたちを傷つけるかという喫緊の問題を強調したいと思います。核燃料サイクルのあらゆるステージにおいて、放射線の危険は厳然と存在します。(インド団体提示)

損害賠償について

14.もし日本から輸出された機器により大事故が起きたら、被害者への対応策はどのようなものになりますか?損害賠償はどこまで保障されますか?民間企業がそうした事故で被害者に損害賠償や補償の責任を受け入れることは非常にまれなことだと思います。すでに他国では、補償の協定に置いて大きな後退が見られます。日本の人々は、起きるかもしれないこの事態をどう見ますか?(インド団体提示)

15.シノップ原発が沿岸に建設される黒海はUNEP(United Nations Environment Program)によって保護されています。黒海にはプランクトンや酸素が豊富で、魚介類の豊かな生息環境があります。原発の建設はこうした自然環境を破壊する可能性があり、多くの漁業関係者が損害を受けることになります。日本側は漁業関係者の受ける損害を補償してくださるのでしょうか。また、シノップ原発の建設予定地には多様な植物の生息環境もあります。原発建設による自然環境の変化や、原発事故によるすべての損害に対し、日本側から補償してくださるのでしょうか。(トルコ団体提示)

 

放射性廃棄物について

16.日本は、いまだ解決されていない放射性廃棄物の貯蔵の問題にどう対処するつもりですか?原発が稼働年限をすぎたら、支払い不可能なほど高額になる廃炉のためのコストはどう考えていますか?(インド団体提示)

 

以上