原子力資料情報室声明 美浜原発3号機の新規制基準適合を了承、40年廃炉原則の形骸化を憂慮する
声明 美浜原発3号機の新規制基準適合を了承、40年廃炉原則の形骸化を憂慮する
2016年10月7日
NPO法人原子力資料情報室
2016年10月5日、原子力規制委員会は関西電力が所有する美浜原発3号機が新規制基準に適合するとした審査書を決定した。美浜原発3号機は1976年12月1日に稼働し、今年12月には稼働から40年を迎える老朽炉だ。老朽炉で新規制基準に適合するとされたのは、同じく関西電力の高浜原発1・2号機につづいて3例目となる。
美浜原発3号機では、過去、事故を繰り返してきた。特に、2004年8月9日には配管破裂・蒸気噴出事故により11名の死傷者も出した炉でもある。わたしたちは、美浜原発3号機が新規制基準適合性審査に合格することは極めて問題が大きく、断じて認めるべきではないと改めて訴える。
老朽炉では配管の減肉が懸念されるところ、原子力規制委員会は、定期点検における法定の点検対象とし、その状況を原子力規制庁も確認していることから問題ないとしている。しかし、定期点検の法定対象となった2004年以降も減肉や配管からの漏洩などが引き続き生じている。点検では、減肉の状況を確実に把握することはできない。
また、前原子力規制委員会委員長代理の島崎邦彦氏は、原発の基準地震動評価においてこれまで用いられてきた入倉・三宅式では過小評価になるおそれがあると指摘している。日本の原発では2005 年から 2011 年までの間に 8 回、基準地震動を上回る地震が発生してきた。そのことは、基準地震動が過小評価されてきたという事実を如実に示している。島崎氏の指摘を受けて原子力規制庁が、基準津波評価で用いられている武村式で大飯原発の基準地震動を計算したところ、入倉・三宅式で計算した場合の1.8倍となった。現在993ガルとされている美浜原発3号機の基準地震動にこの倍率を当てはめれば、基準地震動は1,787ガルとなり、1,320ガルとされるクリフエッジを大きく超える。しかし原子力規制庁は「入倉・三宅式を用いる方法以外の方法によって基準地震動を作成するというアプローチについては、どのように保守性を確保していくかに関し、妥当な方法が現時点で明らかになっているとは言え」ないとして、武村式の採用を拒否している。原子力規制庁は過小評価になっている計算式が保守的であるという極めて倒錯した主張を展開しているのだ。
その他、美浜原発3号機を巡っては、ケーブル火災の発生防止に難燃性ケーブルを用いず難燃性防火シートで覆う対処でよしとするなど、数多くの問題がある。
40年超の老朽炉の新規制基準適合性審査は現状3基しかなく、その3基はいずれも許可されてきた。新規制基準の適合性審査においてはパブリックコメントが実施される。しかし、炉の老朽化を審査する「高経年技術評価書(40年目)」ではパブリックコメントは実施されない。技術評価書は11月末までには了承されると見られるが、美浜原発3号機のような老朽炉ですら許可されるのであれば、新規制基準適合性審査は、単に電力会社にお墨付きを与えるプロセスであるに過ぎない。今回の審査了承について、原子力規制委員会の田中俊一委員長は、「時間切れを避けたいということで事業者も我々も注力してきた」とのべ、スケジュールありきの審査だったことを示した。
原子力規制委員会は設立の理念に立ち返り、設立理念である「原子力規制組織に対する国内外の信頼回復」を図るべく、スケジュールありきではなく市民の懸念に真摯に応えるべきである。
以上