【連載】水道水のセシウム濃度調査 第2回 浄水場発生土の汚染状況と今後の調査方針

『原子力資料情報室通信』第521号(2017/11/1)より

【連載】水道水のセシウム濃度調査 第2回 浄水場発生土の汚染状況と今後の調査方針

前号では原子力規制庁データより、2016年6月の東京の水道水は全国でもっとも放射性物質で汚染されていたこと。採水地が新宿区から葛飾区に変更されたあと、汚染が上昇していることを述べました。
水道事業は、常に全地域で不足が起こらないよう、受給状況に応じて近くの浄水場からだけでなく、遠くの浄水場からも水道水を融通しあえる仕組みがあります。ですから、蛇口や給水所の所在地と浄水場を1対1対応させることはできません。大まかには、新宿区の水道水は主に東村山浄水場(利根川・荒川系および多摩川系)や朝霞浄水場(利根川・荒川系)から供給されていて、葛飾区の水道水は金町浄水場および三郷浄水場(ともに、利根川・荒川系の江戸川)から供給されているそうです。1)
水道局発表の、水道水に含まれる放射性物質濃度は近年すべて検出限界以下(1kgあたり0.8ベクレル(Bq)程度)なので、水系ごとの汚染の比較はできません。しかし『発生土の放射性物質の測定結果』が公表されています。2) 浄水場発生土とは水道水をつくる過程で取り除かれた河川中の濁り(土砂)などを集めて脱水処理したものです。これから源水ごとの放射能汚染の大まかな比較ができるのではないかと考えました。
発生土の放射性物質濃度のデータのうち、東村山浄水場と金町浄水場のものを取り出してグラフ化しました(図)。2011年前半の汚染は飛びぬけて高いため、全体の見やすさを考慮して外してあります。ここから、金町浄水場の発生土が東村山浄水場のものよりも放射性セシウムを多く含んでいること、2017年になっても検出され続けていることが分かります。また、大まかな傾向として、毎年、年末年始に汚染濃度が下がっていて、春頃と秋頃に2つのピークがあるようにも見えます。新宿区の水道水と葛飾区の水道水の汚染程度の違いは、データのバラつきから来たものではなく、源水に系統的な放射能汚染の違いがあることが示唆されます。

これらのことを踏まえ、以下の調査計画を立てました。
①東京都内の水道水の放射性セシウム濃度を調査する[江戸川、利根川・荒川系、多摩川系、地下水系]。②取水堰近くの河川水の放射性セシウム濃度を調査する[江戸川、荒川、多摩川]。(試料採取は変動を考慮して年3回程度おこなう[秋、冬、春])
次回は、水中の微量なセシウムの濃縮手法について報告します。(つづく)

(谷村暢子)

東京都水道局ホームページより
1)東京都の水源:https://www.waterworks.metro.tokyo.jp/suigen/map.html
2)発生土の放射性物質の測定結果:http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/suigen/shinsai/hasseido.html