保安規定違反が続発する 六ヶ所核燃料サイクル施設

『原子力資料情報室通信』第521号(2017/11/1)より

保安規定違反が続発する六ヶ所核燃料サイクル施設

2017年10月11日の原子力規制委員会で日本原燃に対し、「再処理工場の非常用電源建屋への雨水流入」問題、「ウラン濃縮施設での排気ダクト腐食」問題、「JAEA大洗内部被ばく事故に対する対応」について複数の保安規定違反が指摘された。日本原燃は、各施設の設備について「長期にわたり管理できていなかったことは非常に重要な問題」として、「現在、安全審査を実施している再処理事業の変更許可申請について、その補正の提出を当面先送り」することを表明した。2018年上期を予定している再処理工場の竣工はさらに延期されることが確実になった。

再処理保安規定違反

本誌520号でも指摘したように、規制委員会は再処理工場の「雨水流入問題」について、1)点検口を建設以来14年間一度も開けておらず、配管の点検を怠った。2)にもかかわらず、「点検日誌」に点検結果を記載し、「異常なし」としていた。3)規制委員会指示による調査について、現場を確認せず、設計図書の確認のみを行い、雨水の漏えい跡が確認できる写真を撮りながら、問題がない旨の報告を作成した等指摘し、再処理施設保安規定の「巡視・点検」、「保守管理に係わる計画及び実施」に違反すると断定した。これに対し日本原燃は、工場全体の約60万を超える機器類のうち、約1割未満の安全上重要な設備の全数把握と健全確認を10月末までに、残り9割について12月末までに行うと公表している。私たちはこのような事態が、日本原燃だけの問題だと考えるべきではないだろう。建設開始以来すでに24年も経過する六ヶ所再処理工場は、操業していなくても老朽化が激しく進行しており、そのための規制が必要だろう。また機器類の点検・整備さえ怠る事業者をきちんと監督できない安全規制体制の問題も深刻である。

ウラン濃縮施設
ウラン濃縮施設は、六ヶ所核燃料サイクル施設のなかで最初(1992年3月)に稼働を開始し、当初1500トンSWU/年の生産能力をめざしていた(SWUは濃縮施設の処理能力を示す分離作業量)。しかし、遠心分離機の開発失敗のために分離機胴体内部に六フッ化ウランが付着し回転が停止するトラブルが続発し、1050トンSWU/年分までの設置で終わり、それらも全て廃棄された。2010年から新たに改良された遠心分離機75トンSWU/年が運転されているが、生産できる濃縮ウラン量は原発一基の一年分に満たない量である(2012年度以降製品の出荷実績はない)。この施設は今年5月、核燃料サイクル施設としてはじめて新規制基準適合性審査に合格していた。

ダクトに20センチ大の穴

中国電力島根原子力発電所での換気ダクトの腐食事故(8ページからの事故一覧参照)を受け、日本原燃は2017年1月からウラン濃縮施設で給排気ダクトの点検を開始した。1)同年2月に更衣エリア天井ダクトで腐食や損傷が確認され、2)さらに分析室天井裏に設置されたドラフトチェンバー(局所排気装置)14台のうちの7台、フード1台の排気ダクトは、腐食により排気流路のバウンダリが喪失していた(=腐食によりダクトに20cm四方大の穴があき、ほとんど機能喪失)、3)分析室質量分析装置の排気系(ポリ塩化ビニール製円形ダクト直径25cm)は、本来排気ダクトを介して建屋排気系に接続されるべきなのに、接続されていなかった。規制委員会や日本原燃の説明は非常にわかりにくいが、写真を見ていただければ一目瞭然である。排気ダクトが、腐食によりほとんど消失している。規制委員会は、これらは「保守管理に係わる計画及び実施」に違反しているとしている。また、バウンダリが喪失しているので、作業者に防護具(半面マスクとゴム手袋)が必要だが、日本原燃はこの措置を取らなかったので、「管理区域への出入り管理」違反としている。
これらダクトは亜鉛鋼板製で、ダクトの錆び<CODE NUM=00A4>変色、腐食等は、全体で48カ所確認されている。原燃はこれらダクトの点検を、1992年の稼働開始以降25年間1度も行っていなかったというのだ。この事態への対策は、約22,000の全ての設備について、10月末までに交換や補修を行い、「管理された状態」に戻すという。

不足・欠如・不十分
日本原燃は、これら保安規定違反が生み出された原因として、人材、能力、認識等の欠如、不十分、不明確という説明を繰り返している。そして「社長を先頭にした全社的な取組」や新たな「事実関係調査チーム」、「是正措置委員会」などの設置を挙げている。大きな事故・トラブルのたびに、このようなことはすでに何十年も前からやってきたことではないのだろうか。そして10月末とか、今年中とかの「スケジュール」と「計画作成」が謳われ、それが不十分なまま、新たなトラブルが繰り返されてきたのである。設備の安全確保とともに、事業者の資質そのものが問われる。
このような状況の中、六ヶ所再処理工場で転落事故が発生し、建屋貫通部調査中の作業員が大怪我(骨盤骨折と右大腿部骨折等)を負ったというニュースが入ってきた。この事故を受け、転落防止策を講じるまで全ての調査を中止することが公表された。調査・補修日程の無理が、現場にしわ寄せされていると懸念される。

写真:日本原燃株式会社より

(澤井正子)