【第98回 公開研究会】「東海第二原発は廃炉に-わたしたちにできる こと-」相沢一正さんとともに考える

【第98回 公開研究会】「東海第二原発は廃炉に-わたしたちにできる こと-」相沢一正さんとともに考える

規制委、審査書案提出

7月4日、原子力規制委員会は日本原子力発電(原電)・東海第二原発の設置変更許可申請の審査書(案)1)をまとめた。安全対策が新規制基準を満たすと認める審査書案で、30日間の意見募集(パブコメ)を経て正式に決定された場合、原子炉設置変更許可となる見通しだ。原電は、2021年3月に再稼働をめざすとしているが、運転開始後40年となる今年11月27日までに運転延長の認可を得るほか、工事計画の認可、茨城県と周辺6市村の同意などが必要だ。
茨城県内には再稼働に慎重な意見も根強く、周辺の水戸市、常陸太田市をはじめ県内28市町村で、再稼働反対や廃炉を求める意見書・決議が採択されている2)。原電としても、実際に再稼働までこぎつけられるかは見通せない状況だ。
その7月4日の夜、連合会館で第98回公開研究会を開催し、「脱原発とうかい塾」の相沢一正さんに講演していただいた。以下にその概要を紹介する。

被災原発
7月3日に第5次エネルギー基本計画、4日に東海第二原発の審査書案が、相次いで発表された。エネルギー基本計画で原発比率20~22%は、東海第二原発を動かさなければ達成できない。原子力規制委員会に、審査書案に対する抗議・申し入れ書を提出した。
1970年代から東海第二原発に反対し続けてきたが、1978年に稼働した際に原電の社長が、「原発の安全性は運転しながら確かめる」と言ったことに強い憤りを感じたことをよく覚えている。
東海第二原発は、東日本大震災で5.4メートルの津波に襲われた。非常用ディーゼル発電機の冷却に必要な海水ポンプを囲む6.1mの壁の高さまで、わずか70cmの余裕しかなかった。工事が未完了だった北側から津波が侵入し、外部電源を喪失し、非常用発電機1台も停止。非常用ディーゼル発電機2台を運転し、辛うじて安定した冷温停止になるまで3日半もかかった。

4つの危険
(1)水位計
東日本大震災で、原子炉のスクラム後に、電源喪失のため水位計の記録がストップした。冷却系統の一部が使用不能となり、原子炉内の温度が急上昇して141℃(150℃が危険水域)にまで達していた。設計ミスの水位計を今後も使い続けることは許されない。新しいものと交換するべきだ。
(2)古い沸騰水型原発
1970年代に運転開始した沸騰水型(BWR)原発では、唯一残る古い設計の原発だ。事故やトラブルの発生率は日本で最も多い。1400kmにおよぶ非難燃ケーブルは、新規制基準では難燃ケーブルに交換しなければならないが、全体の15%しか交換せず、古いケーブルに難燃性カバーを巻いてごまかそうとしている。
(3)周辺状況の安全性
東海第二原発からわずか2.7km南にある東海再処理工場は、高レベル放射性廃液を有する危険施設である。風速5m/秒で10分以内に風が到達する距離だ。東海第二原発は海抜8m、再処理工場は海抜6mしかない。再処理工場は、ガラス固化工程が不具合を起こしてたびたび止まっている。高レベル廃液がまだ約360m3残っている。常に熱を発しているため、冷やさなければならない。水が放射線で分解されて水素が発生するため、水素掃気をたえずおこなっている。そうした装置が地震や津波に耐えられるのだろうか。
原子炉等規制法や規則によると、東海再処理工場は東海第二原発にとっての「敷地周辺の状況」に関わる存在にほかならず、飛来物、爆発、火災、有毒ガスの発生を想定し、それらによって安全機能が損なわれないことを確認しなければ、原子炉設置変更許可の基準は満たされない。再稼働はできないはずだ。
(4)基準地震動・基準津波
東海第二原発の原子炉が破壊されるクリフエッジは1038ガル、今回の審査で基準地震動は1009ガルで、ほとんど余裕がない。圧力容器の転倒を防ぐスタビライザーや固定ボルトが基準地震動に耐えられるのか。圧力容器を押さえるスカートのボルトは健全なのか。津波による炉心損傷確率は日本一で、基準津波高さ17.1mに対して、20mの防潮堤を構築すると計画されているが、本当に津波に耐えられるか疑問だ。

「新協定」の意義
今年3月29日に、周辺6市村(日立市・ひたちなか市・那珂市・常陸太田市・水戸市・東海村)は、原電と「新協定」を結んだ。2012年7月に、6市村の首長懇談会が結成され、事前同意の権限を周辺自治体に拡大する安全協定の見直しを原電に求めた。その後、首長会議が粘り強く要求して締結に至った。
「新協定」は、東海第二原発の再稼働と20年運転延長に限っての協定だ。6市村の首長は、「実質的事前了解」権を行使できる。行使にあたり、
①住民の意向(民意の確認)
②実効性ある避難計画の策定
について、住民も判断に関与できる。
民意確認のため首長・担当課は、住民代表を選んで検討してもらう、あるいは、住民投票条例で住民投票をおこなうことなどを、考えていると答えている。
一つでも反対する自治体があれば、再稼働はできない。今後も各首長や自治体に対して、「事前了解」しないことを働きかけていきたい。

 

【質】旧安全協定は残っているのか。
【答】旧安全協定は一部改訂されて生きている。例えば、第5条「新増設」については、東海村と県の了解権限となっている。

 

【質】避難計画で、屋内退避を前提とする予算が付けられたようだが、おかしいのではないか。
【答】茨城県は、原発周辺の施設に対して、放射性物質を通さないフィルターを設置するなどの防護対策をするために、1施設につき1億円程度の予算を付けた。これを受けた施設と、いらないから原発を止めてほしいと要望した施設がある。

 

【質】原電は、2021年に再稼働させる見通しを示している。それまでに6市村の了解がないと工事はできないのか。
【答】6市村の了解がなければ工事はできないだろう。原電がなし崩し的に工事を進めようとすれば文句が出る。

 

【質】県・市政の動きはどうなっているのか。
【答】昨年の県知事選挙では、自公が推薦した元経産省出身の大井川知事が当選した。県議会は圧倒的に自民党だが、公明党は再稼働に反対している。
水戸市議会では6月に、再稼働に反対する意見書が採択された。これは大きな意味を持っている。自民党が分裂し、多数派が再稼働しないという立場を取り、公明党もそれに同調した。保守層が割れたことが大きな成果だ。

 

【質】東海第二原発を止めるために、首都圏でどのようなことができるか。
【答】まずはパブコメを出すこと。事故が起これば首都圏は被災地、その自覚を喚起してほしい。

 

(報告:片岡遼平)

 

1)原子力規制委員会「日本原子力発電株式会社 東海第二発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書( 発電用原子炉施設の変更)に関する審査書」(案) https://www.nsr.go.jp/data/000237575.pdf

2)「東海第二原発再稼働をめぐり採択された意見書及び決議」(2018年7月15日現在、とめよう!東海第二原発 首都圏連絡会)
stoptokai2-shutoken.jimdofree.com/地方議会意見書/