NuGenからNoGenへ。東芝、企業コンソーシアム解体、ムーアサイドの原発新設計画は放棄

東芝の英国原発子会社NuGeneration解散発表にあたって、地元で活動するCORE(環境の放射能汚染に反対するカンブリア人の会)が発表した声明“NuGen to NoGen. Consortium liquidated by Toshiba as it abandons Moorside New-Build.”を許可を得て訳出しました。


NuGenからNoGenへ。東芝、企業コンソーシアム解体、ムーアサイドの原発新設計画は放棄

2018年11月8日

今日の東芝の発表は想定されていたことだった。日本の大企業は西カンブリア地方ムーアサイドでの150億ポンドの原発新設計画を担ってきた企業コンソーシアムNuGenの解散を発表した。

同社プレスリリースによれば、東芝経営陣は「NuGen社維持費用の継続負担等を勘案し、経済合理性の観点から、今般、当社は、当社グループによる英国での原子力発電所新規建設事業からの撤退を決定し、NuGen社を解散することを決議」した。東芝はこの撤退に伴い、150億円の損失を計上する見込みだ。

この計画は当初、3基のウェスティングハウス社製AP1000を、セラフィールドに隣接した原野に建設するというものだった。2017年にウェスティングハウス社が破たんし、もともとの計画への最後の出資者も逃げ出したため、国営企業の韓国電力公社(KEPCO)が自国のAPR1400を計画地点に建設する計画も出ていた。2018年に東芝は、交渉の長期化に伴いKEPCOの優先交渉者指定を解除し、その後、投資に関心を示したカナダのブルックフィールド・アセット・マネジメント(同社は2018年8月に破たんしたウェスティングハウスを東芝から買収)も消え去った。

ムーアサイド地点は2009年4月5日、政府が選定した11の英国内の「原発立地候補地」の一つだった。政府が西カンブリアを候補地に選んだのは、セラフィールド再処理工場が間もなく営業運転を終了するなかで、地域の強力な原子力推進ロビーの懸念をなだめるためのものにすぎないとみられていた。新規建設という救いの船を逃したことは、地域での60年にわたる原子力産業の優越的地位を減少させ、その反対に地域が原子力産業から独立することを導くものだ。

2009年10月28日、原子力廃止措置機関(NDA)は190ヘクタールの土地を7億ポンドでスペインのイベルドローラ、フランスのGDFスエズ、英国のSSEが組んだ企業コンソーシアムに売却した。1年後の2011年12月、公式にムーアサイドを計画地点とする3.6GW規模の原発計画とともに、合弁企業NuGeneration(NuGen)社が立ち上がった。

最初にコンソーシアムを抜けたのは英国のSSEで、2011年のことだった。2年後、計画に進捗がないことにいら立った政府が地点を再オークションにかけると示唆したことを受けて、スペインのイベルドローラが抜け、東芝/ウェスティングハウスに持ち分を売り払った。ウェスティングハウスの破たんに伴い、最後に残った最初のコンソーシアム参加者だったGDFスエズ(エンジ―に社名変更)も、破たんに伴う離脱条項をつかって、東芝をNuGenの唯一の持分保有者に残して、抜け出した。計画からの撤退はすべて、より市場環境のよい再生可能エネルギーセクターへの転換に続けて行われたものだった。

当初計画では「原発立地に最適な100ヘクタール」を含む190ヘクタールだった地点は、2015年には農地を含む552ヘクタールにまで膨れ上がっていた。現在のサイトの所有権はNDAに返却されることになる。

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