[セラフィールド]ソープ再処理工場・使用済燃料硝酸溶液漏えい事故ー続報2005/5/16
【ソープ再処理工場・使用済燃料硝酸溶液漏えい事故ー続報2005/5/16】
■事故は続いている!■
イギリスの市民団体COREから、事故に関する更新情報が届いた。漏えいした溶液はそのまま「清澄セル」内に溜ったままで、事故は継続している。漏えいした使用済み燃料硝酸溶液を、どのように回収するのか、施設の復旧はどのように行なうのか、いまだに検討中だ。以下に概要を紹介する。
■INES(国際事故評価尺度)「レベル3」■
ソープ再処理工場・使用済燃料硝酸溶液漏えい事故は、暫定値「レベル3」、と公表された。
■CNICの解説■
□使用済み燃料溶液について=漏えいした溶液は、使用済み燃料を硝酸に溶かしたものです。使用済み燃料に含まれるウラン、プルトニウム、核分裂生成物(死の灰)すべてを含んでいます。多くの報道では「高レベル廃液」等と表現されていますが、ウラン・プルトニウムを分離した核分裂生成物(死の灰)を主な成分とするいわゆる高レベル廃液とは別のものです。私たちCNICは、このソープ再処理工場の事故で漏えいした溶液について、使用済み燃料硝酸溶液または使用済み燃料溶液という表現を使用します。この溶液は、非常な強い放射線を出し、プルトニウムや高レベル廃液などの持つ臨界の危険性、発熱性の問題、濃硝酸の腐食作用等、沢山の危険性を合せ持っています。
□このように危険な使用済み燃料溶液が漏えいした今回の事故では、その高い放射能による汚染、強力な放射線のために、簡単に回収作業も実施できない状況です。しかし溶液が長時間セル内に留まっていることで、臨界、発熱、腐食の進展、さらに気体性の放射能の揮発など、さらに危険性が高まる可能性もあります。
□現在運転されている大型の商業再処理工場、事故を起したイギリスのソープ、フランスのラ・アーグUP2、UP3、そして試験中の六ヶ所再処理工場などでは、使用済み燃料を硝酸に溶かして化学的に分離するピューレックス法という方式で、ウラン、プルトニウム、核分裂生成物(死の灰)の分離が行なわれます。今回の事故は、再処理工程の始めの部分で前処理工程発生し、次の分離工程のための準備をするところで、使用済燃料の剪断、溶解、清澄・調整を行なう場所です。
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【前処理施設の各設備】
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剪断設備(使用済み燃料の剪断=数センチの長さに燃料棒を切断する)
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溶解設備(使用済み燃料の剪断片を硝酸溶液の中で溶かす)
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清澄・調整設備(硝酸に溶けにくい核分裂生成物など=不溶解残滓を取り除く、硝酸濃度の調整、プルトニウム原子価の調整を行なう)
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【分離施設】
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【精製施設】
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□事故が起きたのは、前処理施設の中の清澄・調整設備が設置されている部屋(長さ60メートル、幅20メートル、高さ20メートル)の中です。再処理工場では、扱われる使用済み燃料やこの燃料を溶かした硝酸溶液が非常に強力な放射線を出します。この放射線を遮へいするため、設備が設置されている部屋は非常に厚いコンクリートの壁で囲まれています(ソープ工場の場合2~3メートル)。この部屋一つ一つを「セル」と呼び、漏えいが起きたのは「清澄セル」内に設置されていた計量槽に接続した配管です。
■13/5/2005「THORP Leak Update 」 by CORE■
www.corecumbria.co.uk/newsapp/briefings/briefsmain.asp?StrNewsID=212
◆まずはじめに、工場の運転員が、剪断・溶解された使用済み燃料溶液が、工程の次の段階ー清澄セルの計量槽に「到着しなかった」ことを確認した。4月18日、ソープ再処理工場の前処理施設において、使用済み燃料硝酸溶液の漏えいが判明した。
工場の前処理施設の一部を構成するこの漏えいが発生した清澄セルは、長さ60メートル、幅20メートル、高さ20メートルの大きさである。漏えいの確認によって、使用済み燃料の剪断・溶解工程は中断され、前処理施設の運転は停止された。
◆4月19日、リモートカメラによって高放射線区域となっている清澄セルの調査が行われた。それによって使用済み燃料溶液は、2つある計量槽のうちの一つの上部に接続している供給配管の「破断」部分から流出したことが判明した。
さらに破断したパイプから使用済み燃料溶液が漏れた際、計量槽に取りつけられた支持鉄骨に降り注いで、鉄骨を溶かしていることが明らかになった。83立法メートルの溶液の中には、この溶けた鉄も含まれている。
COREによれば、鋼鉄の支持鉄骨の残りのがどのくらいあるのか、セルのもともとの構造の残りについて、どのように取り扱われるべきか、評価が行われ、対策が検討されている
事故のより詳細な部分が明らかになるにつれて、ソープ再処理工場にとって操業の遅れという意味で、NDA〔ソープ工場の所有者)にとっては収入の減少という形で、漏えい事故の深刻さが明らかになるだろう。
◆現時点では、83立法メートルの漏えいした使用済み燃料溶液はセルの中にとどまっているので、プラント外での安全性は大きな関心事とはなっていない。
評価の詳細は示されていないにもかかわらず、NIIは臨界事故の可能性を排除されたとしている。またBNFLも「我々は確信している、臨界事故を起こすには濃度が低すぎるので(臨界はありえない)」と語っている。
◆信頼できる筋からの情報として、漏えいした使用済み燃料溶液は、ドイツのウンターベーザー原発の使用済み燃料を溶解した22トンを含んでいる。同原発は、巨大エネルギーコンツェルンであるEoN社の所有で、同社はソープ再処理工場と約225トンの再処理契約を結んでおり、契約によれば、この燃料は2001年中に再処理されるべきものだった。
ウンターベーザー原発は、2002年にセラフィールドMOX工場から、MOX燃料を受け取ることになっていたドイツの唯一の原発だった。
BNFLがNACに報告しているデータによると、溶解された使用済み燃料は、濃縮度3.43%、平均燃焼度37364MWd/tである。
NACのレポートによると、22トンの使用済み燃料の再処理から、トータルで196キログラムのプルトニウム、132キログラムの核分裂性プルトニウムが回収されることになっていた。
◆漏えいした燃料も硝酸も溶けだした鉄の回収作業も、まだなにも始まっていない。
設計上、漏れ出した使用済み燃料溶液は、セルの床にあるサンプ(マス)に集まることになっているが、漏えいした使用済み燃料溶液は、セルの中にある「ブレークポットタンク」に直接ポンプで汲み上げられる模様だ。
溶液は、「ブレークポット」から清澄機(溶けていない個体を除去するための装置)をとおして再処理工程に戻され、計量タンクへ送られることになるようだ。
◆全体的な回収戦略は、いくつかのプロジェクトに分けられる。セルの床から溶液を汲み上げる計画は、5月15日以降BNGからNIIに提出される見通しだ。
最後のプロジェクトは、壊れた配管が修理可能か、修理に値するかどうか、もし運転を再開したとき、事故に巻き込まれていない第2の計量タンクにつながる配管の安全性が信頼できるものであるかどうか、等が評価に含まれる。
ソープ再処理工場は1つの計量タンクで運転することが可能だ。もしそうなれば、使用済み燃料の処理量は、大幅に減少することになる。
◆BNGは、この事故が数ヶ月単位の問題であると認めているが、公式には漏えいした液体を回収したり、もし可能ならば破断したパイプを修理する時間について、詳しい評価は出していない。
4月末のメBNGのデイアへの説明では、「我々が持っている技術的な経験と能力によって、この状況を回復して工場を再開できる自信がある」とのべている。
◆4月19日の漏えい確認の後も、プルトニウム、ウランを分離する化学分離工程は、5月3日まで運転を継続した。
この時(5月3日)までに、溶液の回収戦略の一部として、清澄セルの中にある計量タンクと中間貯槽の中に残っていると考えられる全溶液を収容するため、化学分離工程にあるタンク内のスペースが確保された。
◆5過去の経験から、ソープ再処理工場を停止すると、そのコストは一日あたり少なくとも100万ポンドかかる。それゆえ、数ヶ月に及ぶ操業停止となれば、今年度のソープ再処理工場から期待される収入に、かなりの衝撃を与える。
NDAは2005年4月1日に、セラフィールドサイトと商業活動の所有権を獲得したーお荷物のソープ再処理工場とともに。
ソープの事故の結果、NDAのスポークスマンは、「ソープ再処理工場からの収入が入らなくなれば、クリーンアップ計画を延期する」とのべた。
NDAは、「この事故が、セラフィールドの運転者(BNG)の計画と契約に衝撃を与える重大な出来事と認識している」と語った。これは。3年後にはBNGとの契約を打ち切る可能性があることを示唆している。
◆グリーンピースや他のNGOとの今週の会議で、漏えい事故の修理と現状回復のためのコストは、オーナーであるNDAが支払うことを認めた。しかし〔セラフィールドの)クリーンアップ計画をきちんと進めるためには、ソープ再処理工場からの収益が減少する結果、NDAは通商産業省と財務省に働き掛けねばならない。
NDAが「State-Aid」という方法によって国をあげて、ソープ再処理工場を救済しようしていることには、すでに多くの疑問が上がっている。
※追加記事
www.corecumbria.co.uk/newsapp/pressreleases/pressmain.asp?StrNewsID=213
参考: