日本原燃:使用済み燃料プール建屋に大量の放射性廃棄物を放置
『原子力資料情報室通信』第424号(2009/10/1)より
日本原燃:使用済み燃料プール建屋に大量の放射性廃棄物を放置
澤井正子
六ヶ所再処再処理工場の燃料貯蔵プールは1999年12月に運転を開始し、現在約2600トンもの使用済み燃料核燃料を貯蔵している。この施設の内で、大量の低レベル放射性廃棄物がポリ袋などに入れられたまま、本来廃棄物を置くことが認められない通路や床等、施設のあちこちに放置されていることが明らかになった(図1参照)。日本原燃が9月7日公表した『再処理事業所再処理施設における使用済燃料によって汚染された物の取扱いについて(報告)』(以下『報告』)から概要をまとめる。
使用済み燃料貯蔵プール建屋では、日常点検や年1回の定期検査などで可燃物(紙・布・ポリエチレン等)、難燃物(ゴム手袋・塩化ビニル類・樹脂製品等)、不燃物(鉄・コンクリート類・フィルタ等)の低レベル放射性廃棄物が発生する。これらを第1低レベル廃棄物貯蔵建屋(FD建屋)で保管廃棄することになっている。ところが、プールライナーの不良溶接による漏洩事故(02?04年)、バーナブルポイズン取扱ピットの漏洩事故(06年)、燃料取扱装置等の耐震計算誤入力(07年)など多数の事故・トラブルの補修作業の結果、「計画外廃棄物」が大量に発生した。一方FD建屋の保管容量をドラム缶約8,500本から13,500本に変更したが、この大量の「計画外廃棄物」を保管することはできなかった。『報告』によれば、FD建屋では現在13,332本が保管されており、ここに保管できない廃棄物を使用済み燃料プール建屋や使用済み燃料受け入れ管理建屋内に「仮置き」状態である。その量について日本原燃はドラム缶約8,100 本分と推定しているだけで、実態は不明だ。
なぜこのような事態になったのか。『報告』によれば、01年7?9月の第2回定期点検から多量の廃棄物を集積場所以外に仮置きするようになったようだ。そしてこの「仮置き」について同年9月の保安検査で「仮置きをするならばきちんと管理するよう」指摘を受け、日本原燃はまず放射性固体廃棄物管理細則を改訂し「仮置きの運用」を規定、さらに10月には「放射性固体廃棄物仮置き場所設置マニュアル」を制定したというのだ。原燃は、これらの「使用済燃料によって汚染された物」は、工場本体の営業運転が始まれば、低レベル廃棄物処理建屋で減容処理し、第2低レベル廃棄物貯蔵建屋で保管する予定で、工場の竣工が延期に延期を重ねたため、対策をとらなかったとしている。また「マニュアル」まで作成しているので、「問題との認識がなかった」というのだ。
その結果が図2のような状況だ。右上に燃料プールが3つ並んでおり、ポリ袋入りの「使用済燃料によって汚染された物」が、廊下、床、足場に平積みされたり鉄製のカゴ(パレット)などに入れられて大量に「仮置き」されている。地下1?3階とも似たような状況だ。「作業員が立ち入る場所は線量の低い廃棄物を仮置き」する被曝対策まで行っていた。さらに驚くべきことは、08年6月「仮置き場所増設の技術検討とパレット管理について工場長了承」、同10月「足場設置による高さ方向のスペース確保について工場長承認」と、「仮置き」の常態化を進めている。
このような信じがたい状態を原子力安全・保安院は、01年から認識しており、マニュアルの作成まで指導し、毎回の保安検査で確認していたのだ。そんな保安院が8月 31日突然指示を出し、「(竣工の大幅延期によって)今後さらに現在の状況が当分の期間にわたって継続される懸念があります。そうした状況は、再処理施設の保安確保の観点から適当ではない」と指摘してみても、この問題の責任から免れることはできない。いくら「使用済燃料によって汚染された物」と言い換えてみても、これは放射性廃棄物である。これら「計画外廃棄物」は、毎年保安院が公表している「放射性廃棄物の管理状況」等にも含まれていないし、このような保管状況が常態化していたことは、明らかに原子炉等規制法違反である。
図1 仮置きされている廃棄物
日本原燃の報告書 www.jnfl.co.jp/event/090907-1a.pdf より
図2 使用済み燃料受入れ・貯蔵施設(FA/FB)地下2解における廃棄物の仮置き状況
日本原燃の報告書 www.jnfl.co.jp/event/090907-1a.pdf より
*保安院の指示
http://www.nisa.meti.go.jp/oshirase/oshirase2009/pdf/210831-6-1.pdf
*日本原燃の『報告』
http://www.jnfl.co.jp/event/090907-1a.pdf