村岡嗣政山口県知事による 海上ボーリング調査許可の撤回を求める声明・中国電力への要請文(上関どうするネット)

村岡嗣政山口県知事による海上ボーリング調査許可の撤回を求める声明


2019年11月11日

山口県知事 村岡嗣政 様
上関原発どうするの? ~瀬戸内の自然を守るために~
(略称:上関どうするネット)
東京都中野区中央2—48−4 小倉ビル1階
TEL 03-6821-3211
(原子力資料情報室気付 担当伴)

 「上関どうするネット」は、首都圏で上関原発問題に関心を寄せる人たちが有志で構成している市民グループです。上関町や山口県の出身者や関わりのある人たちも多く加わっています。

 今般中国電力は、上関原発予定地の埋め立て海域内で「断層評価を目的」とする海上ボーリング調査の許可を山口県から得たとして、2019年11月8日から準備工事を14日からのボーリング調査を開始すると表明しています。

 このことは貴職の中国電力による海上ボーリング調査への許可が、その起点となっています。しかしながら、この許可そのものが無責任な行為であり、到底容認できるものでありません。今回の事態を引き起こしている貴職の許可行為について、怒りを禁じえません。今からでも遅くはありません。許可を取り消してください。

以下、許可撤回を求める根拠を述べます。

●許可と条例趣旨との不適合 ~ 漁業者の了解はあったのか
 報道によれば、貴職は今回の許可理由を「条例に基づき審査を行い、審査基準に適合していた」と説明しているとのことですが、条例に基づく「一般海域占用許可基準」には「許可の条件」として「申請書の記載事項に関する条件のほか、(中略)個々具体的な場合において種々の条件を附すことにより占用が一般海域の機能に支障を与えないよう措置するものとする」との要件が記されています。許可申請書には利害関係者の同意が明記されていますが、田ノ浦周辺を漁場とする祝島漁協の合意は得られていません。貴職は「海域周辺で漁業や遊漁が行われる可能性があり、事故やトラブルのないよう対処」することを中国電力に口頭で伝えたと報じられていますが、過去の経緯を考えれば、口頭通知で十分とは考えられません。貴職のこれまでの発表にはこれらについて一切触れられていませんが、報道などから判断するに、利害関係者の合意書の添付の有無を確認したとは考えられません。したがって、今回の許可は貴職が定めた条例に違反する行為だったといわざるを得ません

●着工見込みのない原発建設のためのボーリング調査を許可した理由が不明
 貴職は2019年7月26日に発出した平31商政第394号「上関原子力発電所建設予定地の埋立工事について(要請)」において、「発電所本体の着工時期の見通しがつくまでは、埋立工事を施行しないこと」と中国電力に要請していますが、このことは現時点で「発電所本体の着工時期の見通し」がないことの言明です。
 一方政府は現在も「原発の新規立地は行わない」としています。
 にも拘わらず、なぜ今、原発建設へ向けた海上ボーリング調査に対して許可を出したのでしょうか? 許可権者として、その判断根拠を県民や全国の市民に説明できるのか、大いに疑問です。仮に原発が建設されることになれば、貴職は県民の命を守る重責を負うことになります。単なる申請と許可という手続き論ではすまされません。

●海上ボーリング調査の環境影響への評価の不明
 海上ボーリング調査は中国電力のホームページでは「断層と上載地層の関係による断層評価を目的としたボーリング調査」となっています。櫓を組み機器を設置して穿孔するのですから、環境への影響を与えることになります。この環境影響をどのように評価して許可に至ったのかを明らかにするべきです。また、漁業者たちはボーリングに伴う音で魚が逃げると漁業への影響を指摘していますが、これもきちんと評価するべきです。どのように評価したのかを明らかにするべきです。こうした評価なく許可を与えることは許されません。

以上
 

【中国電力宛 要請文】海上ボーリング調査を中止と、上関原発計画の撤回を求める

2019年11月11日
中国電力(株)代表取締役 清水希茂 様

上関原発どうするの? ~瀬戸内の自然を守るために~
(略称:上関どうするネット)
東京都中野区中央2—48−4 小倉ビル1階
TEL 03-6821-3211 FAX 03-5358-9791
(原子力資料情報室気付 担当伴)

 「上関どうするネット」は、首都圏で上関原発問題に関心を寄せる人たちが有志で構成している市民グループです。上関町や山口県の出身者や関わりのある人たち並びに上関町の事業者と商取引のある者も加わっています。
 今般貴社は、上関原発予定地の埋め立て海域内で「断層評価を目的」とする海上ボーリング調査を、2019年11月14日から開始すると表明しています。しかし、この調査には利害関係者である祝島漁協の同意がなく、私たちは貴社の強行姿勢に怒りを禁じえません。調査中止と上関原発計画の白紙撤回を求めます。
祝島漁協(山口漁協祝島支所)の同意がない中での調査強行は、利害関係者の同意を必要とする海岸区域占用許可手続きに違反しており、準備活動を含めて即刻中止するべきです。
 祝島漁協をはじめ島民の大多数が上関原発計画に38年もの間反対し続けています。こうした島民の方々の思いや姿勢を貴社は長年にわたって踏みにじってきました。しかし、福島原発事故が起き、その爪痕がなおも福島の人びとを苦しめ、健康への深刻な影響が指摘されています。また、事故炉の廃炉が40年を超える長期にわたりその費用も50兆〜70兆円と評価(日本経済研究センター)される中、その教訓も無視して、原発建設へ向けた調査を強行することは許されません。
 ボーリング調査による騒音で魚が逃げると、漁業者たちは漁業へ悪影響を及ぼすことを心配しています。貴社は調査期間を2020年1月30日までと公表していますが、調査は海域に櫓を組み騒音の中で行なわれるでしょうから、これに伴う環境影響や漁業への影響を無視してはなりません。
 政府の原子力政策は上関原発計画を新規立地に位置づけており、同時に新規立地を認めていません。政策として認めていないことを強行するのでしょうか? 同時に第5次エネルギー基本計画では将来に向けて再生可能エネルギーを主力電源化することを政策方針としています。時代は再エネへと流れています。これまで電力業界は石炭火力+原発で二酸化炭素排出率の削減を主張してきましたが、排出量は結果として増えてしまっているのです。更にこれまでの強引な原発建設への貴社の取り組みは40年にわたる地域の分断をもたらし、地域住民に苦痛を与え続けています。こうした古い考えを転換して、上関原発計画を撤回して、貴社としても再エネの主力電源化に積極的に取り組むことを求めます。
 
 
 
上関どうするネットホームページ:kaminoseki.blogspot.com/