【原子力資料情報室声明】石炭火力100基削減方針 ―やっているふり、原発再稼働への圧力―
石炭火力100基削減方針 ―やっているふり、原発再稼働への圧力―
2020年7月28日
NPO法人 原子力資料情報室
7月13日、経産省は総合エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会で非効率石炭火力発電所のフェードアウト方針をしめした。もともと石炭火力のフェードアウト方針は2018年に策定された第五次エネルギー基本計画で示されていたが、これまで明確な方針は示されてこなかった。結果、OCCTO(電力広域的運用推進機関)が電力会社の報告を取りまとめた需給計画では、2029年度の総発電量にしめる石炭火力の発電量は37%になっていた。国の長期需給見通し上、石炭火力の構成比は26%のため、大きな齟齬が生じていた。
経産省の示した新方針では、現在140基(自家発分除く)ある石炭火力のうち非効率石炭火力(超臨界圧(発電効率38~40%程度)以下)である114基の大半を廃止することで、石炭火力の2030年度時点での構成比を26%程度に抑えることになっている。しかし、この方針には大きな問題がある。
特に大きな問題は、原発をベースロード電源として維持している点だ。2030年度時点での原発の発電容量を20~22%としており、この目標の達成には30基程度の再稼動が必要とされる。上述の通りOCCTOの供給計画上、2029年度時点の石炭火力比率は37%を占めていた。これを26%まで下げるためには、他の電源の比率を上げる必要が出てくる。供給計画では2029年度の原発比率は3.5%であり、原発再稼動にむけた圧力が高まることは必至だ。
また、低効率の石炭火力以外は問題ないという方針自体も問題だ。低効率石炭火力のkWh当りCO2排出量は0.867kg、高効率でも0.733~0.836kgであるのに対し、たとえばLNG火力でも従来型が0.415kg、最新型は0.32~0.36kgと半分以下だ。石炭は高効率でも低効率でも大差ない。
石炭火力ゼロ、原発ゼロを前提とした抜本的なエネルギー政策の見直しが求められる。
以上