【原子力資料情報室声明】第5次エネルギー基本計画閣議決定、経済産業省は現実を直視すべきだ

【原子力資料情報室声明】第5次エネルギー基本計画閣議決定、経済産業省は現実を直視すべきだ

2018年7月4日

NPO法人 原子力資料情報室

7月3日、第5次エネルギー基本計画が閣議決定された。パブリックコメントが終了してわずか2週間足らずでのことだ。世界のエネルギー情勢の変革も、圧倒的多数が望む脱原発をもまったく反映することのない、矛盾だらけの計画である。このような案を策定した経済産業省並びに閣議決定を行った政府に強く抗議する。

  1. 原発依存度20~22%は達成できない

計画は原発依存度低減をうたうが、その一方で、2030年の電源構成にしめる原発比率20~22%を維持するという。経済産業省によれば、これを達成するためには30基の原発稼働が必要だという。福島第一原発事故後、7年が経過し、現在再稼働できたのはわずかに9基(伊方原発は仮処分中)、現存する原発は福島第二原発廃炉後35基となり、建設中原発は3基である。つまりほとんどの原発が稼働しない限り、この目標は達成できないことになる。その一方で、新規制基準適合性審査未申請の原発は10基(福島第二原発除く)存在する。原発比率20~22%の実現可能性は全くない。

  1. 原発コストは高い

計画は、原発のコストを低廉だという。しかし、2015年に経済産業省が実施した発電コスト試算方法を用いて、2017年時点の発電コストを試算すると、2014年時点の見積もり10.1円/kWh~から、10.82~16.38円/kWhへと大きく上振れしている。一方で、シェールガス革命の影響でLNG火力は13.72円/kWhから9.17円/kWhに下落している。再生可能エネルギーについても2030年には風力で8~9円、太陽光は7円程度に下落するという。もはや原発が低廉な発電手段だということも誤りである。

  1. プルトニウムは削減できない

計画は、再処理やプルサーマル等を推進するとともに、プルトニウム保有量の削減に取り組むという。あたかも、新しいことを主張しているかのようだが、実際には、プルサーマル推進という従来の主張を言い換えているに過ぎない。だが、現実は16~18基で実施するとしてきたプルサーマルは4基しか実施できず、日本は国内外に46.9トンのプルトニウムを抱えている。IAEAの8 kgで核弾頭1つ分という換算方法では、およそ6000発分に相当する量だ。一方、世界では、フランスが高速炉開発の規模縮小・延期を決定し、米国がMOX燃料工場建設計画を中止するなど、プルトニウムが資源ではなく、ゴミであることがより明確となってきた。また、朝鮮半島の非核化の目が見えてきた中で、日本のプルトニウム保有が非核化の障害ともなりかねない状況だ。もはや日本が再処理を続ける理由はない。

 以上