【原子力資料情報室声明】福島第二原発の全基廃炉を歓迎するーさらに、柏崎刈羽原発の廃炉へと進むべきだ

福島第二原発の全基廃炉を歓迎する
さらに、柏崎刈羽原発の廃炉へと進むべきだ

2018年6月22日
NPO法人原子力資料情報室

報道によれば、6月14日に小早川智明東電社長が福島県庁を訪問し、内堀雅雄知事に福島第二原発を廃炉にする方向で検討すると伝えた。内堀知事は「県内原発の全基廃炉に向けて重要なスタートになる」と歓迎。世耕弘成経産大臣も「地元の声や福島の現状を自ら受け止めて判断したことを高く評価したい」と述べている。遅きに失した感を多くが表明しつつも、おおむね廃炉決断は歓迎されている。当室としても福島全基廃炉を歓迎したい。

もともと第二原発の運転再開の可能性はなかった。まず、2011年8月に策定された「福島県復興ビジョン」の3つの基本理念の第一に「今回の原子力災害で最も深刻な被害を受けたふくしまの地においては、「脱原発」という考え方の下、原子力に依存しない社会を目指す」と明記。さらに、福島県知事のみならず、県議会・全市町村議会での廃炉決議、廃炉を求める全国的な署名運動などなど、早期の廃炉決断を迫る活動が続けられてきた。全基廃炉は県民の総意であり、第二原発の廃炉は当然の帰結である。廃炉決断はもっと早くできたはずだ。

「このままでは復興の足かせになる」と廃炉理由を小早川社長は説明しているが、東電が喫緊の課題として抱える大量のトリチウム水の海洋放出への途を開くための地ならし廃炉決定であってはならない。トリチウム水は長期貯蔵で対応するべきだ。

吉野正芳復興大臣は「早急な着手が復興の加速につながる」とコメントしている。住民の合意が不可欠ではあるが、第二原発の敷地を第一原発の廃炉作業に活用する余地も出てきた。第二原発の使用済み核燃料は安全に炉内や燃料プールから搬出されなければならないが、その後の廃止措置は急ぐ必要はない。そもそも原発の廃炉は事故がなくても30年、第一原発のようなメルトダウンを起こした原発は40年では終わらないだろう。被ばく労働を強いながら急いで更地にすることの是非も本来なら検討すべきだ。避難解除を急ぎ、放射能汚染が続く環境下に半ば強制的に帰還させることが「復興」ではない。福島原発全10基の廃炉を受けて「人間の復興」という原点を見つめ直す必要がある。

新潟県知事選挙で自民公明推薦の花角英世知事が誕生した直後に福島第二原発の廃炉決定がなされていることから、東電が柏崎・刈羽原発6,7号炉の再稼働に拍車をかけるのではないかとの憶測を招いている。パブリックコメント中の第5次エネルギー基本計画案には、原子力規制委員会が許可を出した原発に関して「国も前面にたち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む」としているが、政府がそのような行為をするべきでない。政府による柏崎刈羽原発の再稼働圧力は、むしろ政府や原子力への不信をいっそう強めるだけだ。東電は新々・総合特別事業計画(2015年)の中で、柏崎刈羽原発に関して「『地元本位・安全優先』という理念に沿って対応する」としつつも、3年以内の再稼働を想定している。しかし、新潟日報社が選挙期間中に行った世論調査によれば、再稼働反対は新潟県民の65%に達している。地元本位という理念からは、同原発の廃炉という結論しかでない。柏崎刈羽を含めて全基廃炉こそ東電が進むべき道だ。