【原子力資料情報室声明】六ヶ所再処理工場はすみやかに閉鎖すべき

六ヶ所再処理工場はすみやかに閉鎖すべき

2020年7月30日

NPO法人原子力資料情報室

7月29日、原子力規制委員会は六ヶ所再処理工場が新規制基準に適合しているとして事業変更許可を行った。しかし、六ヶ所再処理工場は、以下の点で問題が山積みであり、事故が起きる前に閉鎖されるべきである。

1)「審査基準は満たしているが安全が確認されたわけではない」

 パブコメに寄せられた意見は延べ765件におよんだ。その中には、変動地形学の見地から存在が指摘されている六ヶ所断層の活動性や一般家屋が対応している耐震性に比べても極めて脆弱なこと、降下火山灰の層厚に耐えられないこと、大型航空機の意図的な墜落に建屋が耐えられないことなどの指摘があったが、これらに対しては杓子定規な対応で、まともに取り上げられなかった。

例えば、六ヶ所断層は活動性が否定され、耐震安全性に関して一般家屋が5000ガルに耐えられる設計をしているとの意見に対する回答では、解放基盤表面での判断とは異なるといった杓子定規な説明で、規制委員会ならびに規制庁には,こうした意見に対して丁寧に説明する気がなかった。降下火山灰への対応も対応策・マニュアルができていれば良く、実際に対応できるか否かの審査はされていないこともはっきりした。

 これらは一例だが、結局のところ、審査基準は満たしているが、安全が確認されたわけではない。

2)技術的能力がない

 技術的能力の欠如について多くの意見が寄せられた。規制委員からも、審査の過程で不備が重なり技術的能力を心配しているとの意見が出ていた。これに対して、規制庁は、改善してきているとの認識を頼りなげに示しながら、保安規定の認可や設計工事認可がこれからなので、それらの中でも確認していきたい、という姿勢であった。規制委員会ならびに規制庁が日本原燃に技術的能力が欠如していることを認めているのである。

 これでは、法が求める「重大事故等対処施設及び重大事故等対処に係る技術的能力」が日本原燃にあるとはとうてい言えない。

 アクティブ試験(2006〜08年)に携わった労働者たちの多くがすでに退職しており、フランスに技術習得に派遣しているとはいえ、現場での技術継承は失われている。

3)経理的基礎はまやかし 

 規制庁の説明では、再処理拠出金法を根拠に経理的基礎があるとしているが、未だ許可も出していない工場に対して、毎年数千億円ずつ支出され、将来の再処理費用を食い潰している現状が結果する将来の経理基盤については全く判断していない。

 原発基数を「可能な限り」減少するという国の方針によって、その自転車操業状態はいずれ行き詰る。経産省ならびに規制委員会は、その時の判断を避けており、極めて無責任というほかない。

 使用済燃料再処理機構によれば、六ヶ所再処理工場とこれに続くMOX加工工場の総事業費は合計16.3兆円である。これだけの費用をかけて、製造されるMOX燃料の最大量は4700トンである。実に1トンあたり34.6億円である。通常のウラン燃料なら1トン1億円程度で入手できることからすれば、考えられないほど高価なMOX燃料を使い続ける経済合理性は全くない。

4)撤退すべきプルトニウム利用

 日本が保有するプルトニウムのうちプルサーマルで消費することが想定されている分が40トンを超える。六ヶ所再処理工場が竣工し、公称通りに年間800トンの再処理を行なえば、7トン前後のプルトニウムが抽出されることになる。プルトニウムは核兵器転用可能物質であり、核不拡散の観点から、原子力委員会はプルトニウム保有量の削減(少なくとも保有量を増やさない)を求めている。経産省は需要に見合った再処理を行なうとの方針を示しているが、削減には海外プルトニウムを消費する必要があり、これが進まないうちには六ヶ所再処理工場を稼働するべきではない。

5)深刻な環境の放射能汚染

 事故による放射能放出の危険は言うには及ばず、再処理工場の平常運転から放出される放射能の量は原発の数百倍も多い。フランスのラ・アーグ再処理工場で放出されたクリプトンは日本で観測される。六ヶ所再処理が稼働すれば、ヨーロッパで六ヶ所から放出されたクリプトンが観測されることになるだろう。

 さらに、原発から放出されるトリチウムに加え、再処理工場からは、セシウムやストロンチウム、あるいはプルトニウムなど、さまざまな放射能が海へ放出される。これらは環境に蓄積され、人びとの被ばくの原因となる。六ヶ所再処理からの放射能放出による年間被ばく線量の評価は行なわれているが、これら多種多様な放出放射能の環境蓄積を考慮した安全評価は行なわれていない。

 また、工場の放射能汚染も再処理が進めばそれだけ汚染度合いが強くなり、後始末がおおごとになる。

 上記のどの観点を考えても、再処理−プルトニウム利用政策は放射能の環境負荷を増やし、電力消費者に経済負担を強いる不合理なものであり、撤退することがもっとも合理的である。今なら、アクティブ試験による425トンだけの再処理にとどまり、工場の汚染も比較的少ない。電気料金を通して徴収した拠出金で政策転換にともなう諸費用も賄えるはずである。

以上

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