新大綱策定会議奮闘記(1) 脱原発・核燃料サイクル政策の転換を求め続ける

『原子力資料情報室通信』第440号(2011/2/1)より

新大綱策定会議
脱原発・核燃料サイクル政策の転換を求め続ける

伴英幸

 原子力政策大綱の改定作業が始まった。この改定作業の委員の一人に選任されたので、決意を新たに、脱原発への政策転換を求めて精一杯かかわっていきたい。
 原子力委員会(近藤駿介委員長)は昨年7月から、現行大綱の見直しの是非について検討を開始していた。同委員会はこれまで有識者23人から意見聴取を行ない、ご意見を聴く会を福井市、青森市、東京の3ヵ所で主催し、市民から意見募集を実施してきた。
 筆者は昨年7月の第40回原子力委員会で意見陳述の機会を得た。ちょうど発刊した『破綻したプルトニウム利用』(緑風出版)で問うた「核燃料サイクル政策の転換を提言する」を中心に意見を述べた。この提言の第1項は原子力政策大綱の改定を求めるものである。
 一般からの意見募集では、1205人から1520件の意見が寄せられた。これは普段の意見募集に比べると圧倒的に多いという。当室も意見提出を呼びかけてホームページで公開してきた。
 ついに11月末日に原子力政策大綱の改定に入ることを原子力委員会が決定し、新大綱策定会議が発足したのだった(12月21日、1月14日と2回の会合が開かれた)。核燃料サイクル政策の「転換を求める第一歩」と位置づけた私たちの提言の第1項が実現した。
 実はこれからが大変な作業になる。なにしろ、26名の委員の多くは原子力推進の考えで、一口に改定と言っても方向が私たちと正反対だ。私は省エネルギー、再生可能エネルギーを基本としたエネルギー政策に転換し、核燃料サイクルから撤退することを求めて、論陣を張っていきたい。現行の大綱の策定にも参加したので、内容をいっそう掘り下げて臨みたい。

 今回は原子力の海外輸出がテーマの大きな一つになるからか、国際政治や経済分野の専門家が多いようだ。分野が異なる多くの専門家とも、相手の意見を聞き、こちらの見解を伝えていきたい。
 すでに会議の席上、推進一辺倒の事務局資料の説明は時間の無駄なのでこれを省き、議論の時間を十分に取るように主張した手前、チャレンジあるのみだ。また、月に1?2度会合が開かれ、1年程度は続く予定なので、毎号の『原子力資料情報室通信』に主張や感想を報告していきたい。毎回の会議には意見書を提出し、これを当室ホームページにも載せるので、本連載では感想を中心にしたいと考えている。
 第2回会合では、原発を推進して核のゴミをいっそう多く出す計画を立てておきながら、決まらないゴミ処分場問題に合意をどう得るかなどと後に話し合うのではなく、いっそゴミ問題から話し合うべきではないかと一矢放ったが、他の委員たちには通じなかった。
 「エネルギーと原子力」から始めることとなったので、二酸化炭素排出量を削減するには、原発に頼ってはできないことを、排出量の統計データや電力供給計画などを使って主張した。昨年3月に電力各社が発表した電力供給計画では、原発よりも火力発電の増設の方の出力が大きい。これは電力消費の増大を前提にしており、CO2排出量が減るはずがないのである。なお、提言にまとめた核燃料サイクルの議論は3月ごろから始まる。

 ところで、会議の公開や市民参加について新しい試みが取り入れられている。これらは私たちが主張してきたことでもある。一つは、配布資料は会議当日のうちに公開し、議事録ができるまでは映像で会議の様子を速やかに公開するというものだ。臨場感はないが、翌日には資料と発言内容が分かる仕組みになった。
 もうひとつは、市民からの意見をいつでも受け付けることだ。従来は策定会議の中間まとめなどや報告書案への意見募集という形式だったのだが、資料とビデオで会議を追体験し、これに即応して意見を言えるようになった。
 応募意見は会議資料として配布される。第1回と第2回の新策定会議の間に11件の意見が寄せられたが、すべて原子力推進に否定的な意見で、少数派の筆者にとっては心強い応援となった。みなさんから意見を寄せていただけるとありがたい。脱原発を求める市民の意見が他の委員にも伝われば、政策転換への長い道のりの第2歩を作り出すに違いない。

■新大綱策定会議についての情報は、内閣府原子力 委員会のホームページをご覧下さい。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/tyoki_sakutei.htm
■意見提出は、内閣府 原子力政策担当室 新大綱策 定会議ご意見募集担当
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/tyoki_oubo.htm

 

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