原子力資料情報室声明 日本はインドの原子力政策に加担するべきではない

特定非営利活動法人原子力資料情報室は、交渉中の日印原子力協力協定において日本がインドの再処理を容認する方針であるとの報道を受け、以下の声明を発表しました。


 

日本はインドの原子力政策に加担するべきではない

 

2015年6月26日

原子力資料情報室

 

 共同通信は6月18日、インドとの原子力協力協定交渉で日本側が、日本から輸出された資機材を用いた原発からでる使用済み燃料の再処理を認めるとインド側に伝えたことを、複数の交渉筋が明らかしたと報じた。

 昨年締結された日・トルコ原子力協力協定でも再処理に含みを残す記載は存在したが、日本が使用済み燃料の再処理を原発輸出国の立場で明確に認めるとすれば、初めてのこととなる。

 日本は原発に必要な重要な機器を製造・輸出しており、原発を輸入したいインドや日本国内の原子力産業界のみならず、米国やフランスなどインドに原発を輸出したいと考えている国々からも、インドと原子力協力協定を締結するよう要請されていた。

 インドは、さまざまな原子力開発をおこなっており、そのなかには使用済み燃料の再処理によって取り出されるプルトニウムの利用も含まれる。インドは、以前に原子力協力協定を締結した米国にたいしても同様に輸入した資機材から出た使用済み燃料の再処理を強く求め、2008年に発効した米印原子力協力協定では、インド側がIAEA保障措置の適用される再処理施設を新規に建設することで、米国は自国が輸出した資機材から取り出された使用済み燃料の再処理を容認した。

 なお、日本が他国と締結してきた原子力協力協定を確認する限り、日印原子力協力協定で再処理が認められないと、仮に他国が建設する原発であっても、一部の重要な箇所に日本から輸出された資機材が用いられている場合、その原発から出る使用済み燃料は再処理できないこととなるだろう。

 インドは核不拡散条約に加盟していない核兵器保有国であり、核物質の軍事転用を防ぐためのIAEA保障措置を適用していない施設も存在する。また、国内のウラン資源に乏しいインドは、輸入したウラン資源は発電に、国内のウラン資源は軍事用に用いることを考えていると多くの識者が指摘している。インドの核兵器増産が可能になれば、隣国の核兵器保有国パキスタンとの核兵器開発競争がさらに加速される懸念もある。

 インドとの原子力協力協定を締結することは、ほかならぬ「核被害国」日本がインドの核兵器保有を政府として認めることにつながるだけでなく、同国の核兵器開発に手を貸すことにつながる。加えて、インドの原子力開発に協力することで、非核兵器国が核兵器開発をおこなった場合でも、将来的には制裁措置は解除され、原子力の商業平和利用も自由におこないうるという、極めて危険な道を開くことにもつながる。

 日本や世界の圧倒的多数の市民は核廃絶を心から願っている。そして、外務省はウェブサイト上で「日本は唯一の戦争被爆国として、『核兵器のない世界』の実現に向け、国際社会による核軍縮・不拡散の議論を主導してき」たとしている。日本はインドと原子力協力協定を締結するのであれば、インドに対して、核兵器を放棄することを求めるべきであって、インドの核兵器国としての立場を補強するようなことはあってはならない。再処理の容認などもってのほかである。

以上