安全を確保するためのストレステストに関する申し入れ

野田佳彦内閣総理大臣様
藤村修内閣官房長官様
枝野幸男経済産業大臣様
細野豪志原子力担当大臣様

2011.9.15
NPO法人原子力資料情報室共同代表
山口幸夫/西尾漠/伴英幸

安全を確保するためのストレステストに関する申し入れ

電力各社は原子力安全・保安院の指示に基づき順次「東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故を踏まえた既設の発電用原子炉施設の安全性に関する総合評価の実施」(以下、ストレステスト)を実施しています。政府はこれに基づいて定期検査終了後の原発の再稼働の可否を判断するとしています。
福島原発事故はいまだ収束しておらず、事故の影響は非常に長く続くと考えられます。他の原発の安全は十二分にも確認されなければなりません。しかしながら、今回、原子力安全・保安院が実施を求めているストレステストの中身を検討しますと、これではとても安全が確保できるものではないと考えざるを得ません。
その大きな理由は、地震動そのものが配管の破断を招いて冷却材喪失事故に至った高い可能性の視点(専門家の指摘 があります)、あるいは原発の老朽化による設備劣化の視点が抜け落ちているからです。加えて、内容の面からも問題があると私たちは考えています。
それは、①事故発生のシナリオの検討においても地震以外について決定論的手法が採用されているのに対して、日本では確率論的手法が認められています、②日本では原発の安全性に関して網羅的な検証を求めていない、③過酷事故時の管理体制(放射線管理や被ばく管理を含む)の検証と改善策に関する報告を求めていない、④これらに対して「過度の保守性を考慮することなく現実的な考慮を行う」としている、そして何より、⑤「公開と透明性の原則」とこれに基づく住民合意を明記していない、などです。これらはヨーロッパで行われるストレステストとはずいぶんと異なる点で、換骨奪胎の感があります。
しかも1次評価の後に運転を認めるといった、再稼働優先の対応となっています。これでは原発の安全は確保できず、第二のフクシマ事故が起こる恐れがぬぐえません。
運転再開の判断に際しては、少なくとも2次評価までのストレステストをもって行ってください。かつ、原子力安全委員会の現行の安全審査指針が今回の事故によって破たんしたことが明らかになり、目下、同委員会で指針の見直しが進められていますが、この見直し指針に基づいて、これまで原子力安全・保安院によって進められてきた耐震バックチェックをもう一度やり直し、十二分に耐震安全性が確認されてから判断してください。さらに、これらの内容が十分に公開されて、住民の合意を得るように努めてください。