六ヶ所村再処理工場をめぐる問題 「ウラン試験」は試験になっていない(加筆)

六ヶ所村再処理工場をめぐる問題-「ウラン試験」は試験になっていない(加筆)

原子力資料情報室 理事 古川路明

1.再処理を考えるには

再処理に用いるもっとも重要な化学操作はウランとプルトニウムを分離する溶媒抽出である。TBP(リン酸トリブチル)を灯油の成分の一つであるn-ドデカンで希釈した溶液と使用済み核燃料の硝酸溶液を混合接触させる操作は単純なものである。

ウランの量が1グラム程度でプルトニウムと核分裂生成物の量が放射能測定がどうにかできる程度に微量であれば、大学の学部学生が用いるような簡単な実験器具で目的を達することができる。

しかし、一日に4トンにおよぶ使用済み燃料を処理し、混合酸化物燃料を製造する六ヶ所村再処理工場では事情は変わる。その目的を達するには、非常に複雑な設備を建設せねばならない。強烈な放射線の存在は人の接近を困難にし、TBPのような化学薬品の分解、臨界の発生を防ぐこと、水素のような爆発の危険性のある物質を取り扱うことなどと多くの問題がある。

使用済み燃料1トンの中に含まれるセシウム-137の放射能強度は1×10^15ベクレル(1000兆ベクレル)を超える。この放射能から1メートルの距離に15分間いれば、致死量に近い放射線を浴びる。人の立ち入りは不可能である。

2.ウラン試験は慎重に進めるべきではないか

ウラン試験についての情報開示が不十分である。「再処理施設 ウラン試験報告書(その1)(各建屋におけるウラン試験)(概要版)」を見た限りでは、多くの情報が提供されているようにみえるが、重要な情報は開示されていない。

ウラン試験の中で、多くのことが確認されねばならない。しかし、各々の設備の動作がはっきりとわかるように示されていない。また、この段階になっても、仮設の設備ではあっても硝酸のもれがあったり、多くの器具の不具合のような初歩的な「不適合事項」がある。

この報告書に含まれる検査結果では、「目標値以内」のようなあいまいな表現が多すぎる。必要な情報をできる限り公開し、多くの人たちの判断をあおぐべきである。

いまだに全体を通した試験が十分におこなわれているようにみえない。既知量のウランを含む模擬燃料を処理して、製品の回収量、廃液などに含まれるウラン量などについて結果をわかりやすい形で示す必要がある。

 この状況でアクティヴ試験に入ることは、拙速といわれても仕方があるまい。予定が遅れていることを心配する向きもあろうが、すでに十年も遅れている。今さらあわてることはあるまい。

3.アクティヴ試験に入ってよいのだろうか

アクティヴ試験では、本操業で処理する核燃料に近いものを処理しなければならず、ウラン試験と大きく異なる。使用済み燃料は、溶解の段階からウラン模擬燃料とは異なるはずである。強烈な放射線の存在は多くの問題を提供すると思う。不具合な部分の修理もウラン試験の場合よりはるかに難しいである。

4.情報公開は不十分ではないか

企業秘密を理由として、情報開示が不十分になっている。この工場の設備の重要な部分はフランスで開発された技術に頼っているのであろう。自主開発された技術でなければ、公開できないことは多くなる。

核物質防護の名のもとに情報開示が不十分である。そのような必要があることは認めるが、実際にどのようなことがどこまで必要かははっきりしていない。

5.再処理は必要だろうか

再処理は、元はといえば核兵器製造のために開発された技術である。日本で稼動している軽水炉を運転し続けるためには、再処理の必要はない。核物質防護をいうのならば、再処理しないことがよいのではないか。

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1.情報公開は十分だろうか
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・企業秘密の名のもとに情報開示が不十分-自主開発された技術でないこともあって、公開できないことが多すぎる。

・核物質防護の名のもとに情報開示が不十分-そのような必要があることは認めるが、実際にどのようなことがどこまで必要かははっきりしていない。

・ウラン試験について情報開示が不十分-「再処理施設 ウラン試験報告書(その1)(各建屋におけるウラン試験)(概要版)」
www.jnfl.co.jp/press/pressj2005/pr051101-1.html
を見た限りでは、重要な情報が開示されていない。

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2.ウラン試験は慎重に進めるべきではないか
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・この試験の中で、多くのことが確認されねばならない。各々の設備の動作がはっきりとわかるように公開されていない。

・この段階になっても、硝酸もれ、器具の不具合のような初歩的な「不適合事項」がある。

・上の報告書に含まれる検査結果では、「目標値以内」のようなあいまいな表現が多すぎる。

・いまだに全体を通した試験が十分におこなわれているようにみえない。

・既知量のウランを含む模擬燃料を処理して、製品の回収量、廃液などに含まれるウラン量などについて結果をわかりやすい形で示す必要がある。

・この状況でアクティヴ試験に入ることは、拙速といわれても仕方があるまい。

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3.アクティヴ試験に入ってよいのだろうか
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・アクティヴ試験では、本操業で処理する核燃料に近いものを処理しなければならず、ウラン試験とは、大きく異なる。

・使用済み燃料は、溶解の段階から模擬燃料とは異なるはずである。強烈な放射線の存在は多くの問題を提供すると思う。

・不具合な部分の修理もウラン試験の場合よりはるかに難しいはずである。

【付録】再処理について考えるときの基礎

・再処理に用いる化学操作は単純なものである。ウラン量が1グラム程度でプルトニウムと核分裂生成物の量が超微量であれば、大学の学部学生が用いるような簡単な実験器具で目的を達することができる。

・六ヶ所村再処理工場では、一日に4トンにおよぶ大量の使用済み燃料を処理するので、非常に複雑な設備を用意せねばならない。

・強烈な放射線の存在は人の接近を困難にし、化学薬品の分解、臨界を防ぐこと、爆発の危険性のある物質を取り扱うことなどと多くの問題がある。

・使用済み燃料1トンの中に含まれるセシウム-137の放射能強度は1×10^15ベクレル(1000兆ベクレル)を超える。この放射能から1メートルの距離に15分間入れば、致死量に近い放射線を浴びる。人の立ち入りは不可能である。