青森県知事への要請書
青森県知事
三村申吾殿
要請書
2006年1月23日
原子力資料情報室
六ヶ所再処理工場のアクティブ試験計画が公表されました。
この試験では実際の使用済燃料が約430トン使用され、約4.3トン(全プルトニウム)のプルトニウム、ウラン、高レベル廃液が分離されます。実質的な六ヶ所再処理工場の稼働開始と言えます。
しかしこのアクティブ試験計画を実行する為には、取り出されるプルトニウムの使途を明確にしなければなりません。それは原子力委員会の2003年8月5日の「わが国おけるプルトニウム利用の基本的な考え方について(決定)」に明確に規定されています。決定は、1)「利用目的のない余剰プルトニウムを持たないという原則」を示し、2)その為の措置として、電気事業者はプルトニウムの所有者、所有量及び利用目的(利用量、利用場所、利用開始時期と利用に要する期間のめど)を記載した利用計画を毎年度プルトニウムを分離する前に公表すること。プルサーマル計画の進捗状況、六ヶ所再処理工場の稼働状況等によって利用計画への影響が懸念される場合には電気事業者および日本原燃は取るべき措置についての検討を行い、必要があれば利用計画の見直しを行うこと、3)海外で保管されているプルトニウムについてもMOX燃料に加工される段階において国内のプルトニウムに準じた措置を行う、と明示しています。
1月6日に電力11社より「六ヶ所再処理工場回収プルトニウム利用計画」が公表されました。これはアクティブ試験全体の分でなく、2005?06年度分で、再処理予定量273トン、分離されるプルトニウムは約2.7トン(全プルトニウム:核分裂性プルトニウムでは約1.6トン)と報告されています。アクティブ試験では2007年度分としてさらに約157トンが再処理されることになっています。しかしこの計画は、内容的に原子力委員会決定を満たしていない部分が多くを占めます。多数の電力各社は、分離されるプルトニウムの利用場所、利用時期や利用量について、具体的に示すことができませんでした。
六ヶ所工場と最大の再処理契約を結ぶ東京電力はプルトニウムの「利用場所」について、号機はおろか原発名すら挙げていません。東京電力が原子力発電所を有する福島・新潟の両県がプルサーマルの事前了解を白紙撤回したためです。東京電力には、プルトニウムを利用できる原子炉はどこにも存在しないのです。次に契約量の多い関西電力も2004年8月に発生した美浜発電所3号機事故によって地元の信頼を失い、具体的な計画を示すことはできませんでした。他の電力会社のプルトニウム利用計画も、地元の了解が得られた計画は一つもありません。そのため国の認可も得ておらず建設されてもいない大間原発(電源開発)をプルトニウムの利用場所として挙げ、プルトニウムの多くの部分を譲渡することにするという非現実的な計画となっています。プルトニウム利用計画のこのような実態では、原子力委員会が計画の妥当性を確認できるはずがありません。
公表された「プルトニウム利用計画」は、日本がすでに国内外に既に保有している約43.1トン(海外37.4トン、国内5.7トン)のプルトニウムの利用計画についても全く曖昧にしています。これらのプルトニウムの多くの部分には明確な使途がなく、「余剰プルトニウムを持たない」という国際的公約から明らかに逸脱する状態となっています。今六ヶ所再処理工場を稼働させれば、余剰プルトニウムをさらに増大させることは避けられず、このような意味からも、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験開始を正当化することはできません。
「六ヶ所再処理工場回収プルトニウム利用計画」はアクティブ試験開始のため、従来の計画の形だけをなぞって辻褄を合わせたものにすぎないことは明白です。今回の計画公表によってむしろ、プルトニウム利用計画の不透明さがより明らかになっています。私たち原子力資料情報室は、青森県にたいして「六ヶ所再処理工場回収プルトニウム利用計画」を十二分に検討し、国策という方針だけに依存するのではなく、日本各地のプルサーマル計画のとん挫している現状を認識することを求めます。そして県民の立場に立ち、青森県の将来を見据え、「アクティブ試験」開始のための手続きに着手せず、11電力事業者と日本原燃に対し計画の見直しを行うよう要請することを求めます。
以上
■関連情報
【デーリー東北】
www.daily-tohoku.co.jp/kakunen/news2006/kn060124b.htm
【東奥日報】
www.toonippo.co.jp/kikaku/kakunen/new2006/0124_2.html
www.toonippo.co.jp/kikaku/kakunen/new2006/0124_1.html