六ヶ所再処理工場前処理建屋でプルトニウムを含む洗浄水が漏えい

六ヶ所再処理工場前処理建屋でプルトニウムを含む洗浄水が漏えい

■4月11日3時40分ごろ、六ヶ所再処理工場の前処理建屋で、プルトニウムを含む洗浄水の漏えい事故が発生した。
 事故は使用済み核燃料の剪断を行う前処理建屋の溶解槽セル(溶解槽の設置された小部屋)で発生した。前処理建屋では燃料棒を剪断(切断)し、切断片を溶解槽に落として硝酸で溶解する。

www.jnfl.co.jp/daily-stat/topics/060412-recycle-b01.html

 燃料棒は、ジルコニウムという合金の鞘(燃料被覆管)の中に燃料ペレットが詰められていて、剪断機で数センチの長さに剪断される。

 ウラン、プルトニウム、死の灰(高レベル廃棄物)を含む燃料ペレットは、溶解槽のなかで100℃近くに加熱された硝酸で溶かされ、硝酸溶液となって次の分離行程に向かう。

■溶解槽のバスケットに残った燃料棒の鞘(燃料被覆管=ハルと呼ばれる)は、溶解槽からハル洗浄槽に集められ、強い放射能汚染を取り除くために洗浄される。事故は、このハル洗浄槽で洗浄に使用された洗浄水(ウラン、プルトニウムを含む汚染水)を処理工程へ移送する作業中に発生した。

 日本原燃のホームページの図(下記参照)によれば、溶解槽からハル洗浄槽に集められた(落下した)ハルを洗浄した水は、スチームジェットポンプを使って、次の汚染処理工程へ移送される。

 そのジェットポンプとハル洗浄槽をつなぐために、作業員はマニュピュレーターと呼ばれる遠隔操作のためのマジックハンドを使って、フレキシブルホース(接続ホース)をハル洗浄槽接に接続しようとした。

 その際、本来は配管の閉止プラグを取り外すべきなのに、誤って配管とプラグを接続している接続用部品を取り外した。そのためハル洗浄槽の中のウランやプルトニウムを含んだ洗浄水が約40リットルも漏えいした。

■洗浄水には、大量の放射能が含まれている。
日本原燃の公表は以下のとおり。
(単位はミリリットルのものがあるので注意してください)

全ガンマ:約3.1×10の6乗ベクレル/ミリリットル
全アルファ:約4.1×10の5乗ベクレル/ミリリットル

(ウラン:約6.5グラム/リットル)
(プルトニウム:約0.025グラム/リットル)

■しかし日本原燃の公表した数値は、分かりにくく、放射能量を低く表示することを意図しているのではないか。事故情報の公開の方法、数値の扱い方にも問題がある。

漏えいした約40リットルの洗浄水に含まれる放射能は推計では以下のとおり。
ウラン:約260グラム
プルトニウム:約1グラム
他の放射能:全ガンマ:1240億ベクレル

■燃料棒の被覆管(ハル)の洗浄水にこれだけのプルトニウム、ウラン、放射能が含まれているのである。

■事故原因は明らかで、人為ミス(ヒューマンエラー)である。このようなミスが今後も多発する可能性は非常に高い。このヒューマンエラーを完全に防ぐことはできない。

 ところがそのヒューマンエラーを物理的に防止するはずの設備の問題が浮き彫りになった。ハル洗浄水の移送が固定された設備でないこと、人手によるホースの接続作業を行うという前近代的設備であることだ。この事故によって六ヶ所再処理工場の設備としての欠陥は明らかである。また多量の放射能を含んだ漏えいした洗浄水は、セル内の漏えい受け皿に集められた。漏えい受け皿があるからよいのではない。このような設備がないと運転できないのである。再処理工場はプルトニウムや他の雑多な放射能を含んだ各種の溶液等が漏えいすることを前提に運転される施設なのである。再処理工場の根本的な技術的未熟さである。

=================================
■関連報道

【東奥日報】
www.toonippo.co.jp/news_too/nto2006/0412/nto0412_17.asp
【デーリー東北】
www.daily-tohoku.co.jp/news/2006/04/13/new06041302.htm

=================================