六ヶ所再処理工場:精製建屋で漏えい事故発生-「T字型継ぎ手」の欠陥放置の可能性
六ヶ所再処理工場:精製建屋で漏えい事故発生
-「T字型継ぎ手」の欠陥放置の可能性
■アクティブ試験中の六ヶ所再処理工場の精製建屋で、5月17日(木)19:00ころ、硝酸ウラン溶液の漏えい事故が発見された。この事故情報は、18日午後になって日本原燃が公表した。精製建屋には、プルトニウム溶液、ウラン溶液から不純物を除去する作業が行われる行程がある。
漏えい事故は、精製建屋1階の試薬分配第1室で発生した。19:00(午後7時)ころ同室の隣室にいた下請け会社の社員が異臭に気づき、扉を明けて発見した。漏えいした硝酸ウラン溶液の硝酸の異臭が隣室まで達したためだ。
漏えい確認後、プルトニウム精製工程を停止する作業が行われた。その結果9時間後の18日午前4時頃になって漏えいの停止が確認された。日本原燃は18日午前8時半、国や県、村に事故の発生を報告した。
■漏えいは、硝酸ウラン溶液を試薬分配第1室からプルトニウム洗浄器セルに移送するステンレス製の配管の接合部(T字部)で発生している。漏えい量は約7リットル、漏えいした溶液に含まれる全ウランは1リットル当たり約21グラム、全体で147グラム。溶液に含まれる全ベータ:約4.7×10^2ベクレル/ミリリットル、全アルファ:約6.5ベクレル/ミリリットルと日本原燃は公表している。
■「いつ漏えいが発生したのか、原因等は現在調査中、漏えい液は回収し、適切に処理します」と日本原燃は言っているが、報道では、漏えい溶液は作業員がふき取った、と伝えられている。
■今回の事故は、六ヶ所再処理工場の漏えい対策のお粗末な実態を浮き彫りにしている。発見は、たまたま隣室にいた下請け社員が「硝酸の異臭」に気づいたもので、漏えい検知システムが検知したものではない。このレベルの漏えい検知システムは無いのか、機器が作動しなかったのか。さらに漏えいを発見してから、漏えいの停止を確認するまで約9時間を要している。日本原燃の事故対応は妥当だったのか、プルトニウム精製工程全体の停止以外に漏えいを止める手段がないのか、等々多くの問題がある。
■事故情報の公開が遅い。日本原燃は18日午前8時半、国や県、村に事故の発生を報告したのだから、同様の第1報をマスコミに公表するべきだ。
■事故を起こした「T字型継ぎ手」は、ウラン試験中の昨年(2005年)7月にも、漏えいを起こしていた。
(参照:ウラン試験期間中の不適合:2005年7月分:No.6参照:
www.jnfl.co.jp/daily-stat/common/0508recycle-uran.pdf )
その時点の原因調査によれば、継ぎ手の製造時に不純物が混合し、硝酸溶液によって腐食したことが原因とされていた。しかし日本原燃は、今回の漏えい箇所も含めた同型の「T字型継ぎ手」が設置されている54箇所について目視によって問題なしとして、取替の措置を取らなかった。今回の漏えいは、「T字型継ぎ手」そのものでさらに腐食が進んで事故が発生した可能性が高い。
■今までの六ヶ所再処理工場の試験運転で、「T字型継ぎ手」のように特に大きな問題とされていなかった不適合箇所への対応の不十分さが露呈した。欠陥点検の方法、対応の妥当性判断など日本原燃の安全対策、「品質保証」そのものが再度問われるべきだ。
■関連情報
【日本原燃】
(精製建屋内における試薬の漏えいについて)
www.jnfl.co.jp/daily-stat/topics/060518-recycle-b01.html
(ウラン試験期間中の不適合:2005年7月分:No.6参照)
www.jnfl.co.jp/daily-stat/common/0508recycle-uran.pdf
【東奥日報】
「分配室にたまった薬品は防護服を着た作業員がふき取った」
www.toonippo.co.jp/news_too/nto2006/0518/nto0518_10.asp
【読売新聞】
www.yomiuri.co.jp/science/news/20060518i112.htm?from=main1
【デーリー東北】
www.daily-tohoku.co.jp/news/2006/05/19/new06051901.htm