【原子力資料情報室声明】柏崎刈羽原発における中央制御室不正入室は重大な問題 同原発の再稼働は許されない
柏崎刈羽原発における中央制御室不正入室は重大な問題 同原発の再稼働は許されない
2021年2月16日
NPO法人 原子力資料情報室
2020年9月20日、東京電力ホールディングス(以下、東電)柏崎刈羽原発の所員が他人のIDカードを使って中央制御室に入室したことは多くの重大な問題をはらんでいる。不正入室が核物質防護規定に反するのはもちろんだが、そのことを東電と原子力規制委員会(以下、規制委員会)・原子力規制庁(以下、規制庁)が共通に軽視していることこそが由々しい問題だ。翌日に事態が発覚すると東電は規制庁に報告したが、自治体への報告も報道機関への通報もしなかった。規制庁は規制委員会には報告せず、更田豊志委員長が報告を受けたのは4ヵ月後の2021年1月19日だった。「どうも報道が出そうだからというのがその理由でした」と委員長は説明している。報道がなければ四半期ごとの原子力規制検査報告で済まされ、聞き置くだけとされた可能性が高い。
そのように軽視されてよい問題なのか。IDを紛失しながら報告も無効化措置もとらないこと(同日夜に発見したという)、容易に他人に持ち出される状態でIDカードを保持していたこと、あるいは入室前に通過した周辺防護区域出入口での警備員による顔認証で複数回警報を受信したり登録顔写真との相違に疑念を抱いたりしたにもかかわらず、権限のない所員の判断で誤った識別情報(掌紋?)をIDカードに登録してまで出入りを許した(そのため、翌日に本来のID保持者がエラーとなり不正が発覚した)ことは、「原子力安全文化と一体」として規制委員会の行動指針(2015年)などで強調され、電力各社も「醸成活動」を進めてきたはずの「核セキュリティ文化」が、原子力安全文化と同様に口先だけのものだったことを如実に示した。
規制庁が報告を受けた2日後の2020年9月23日、同庁は規制委員会に柏崎刈羽原発の保安規定変更認可申請の審査状況を報告し、委員会の了承を得ている。10月30日に認可された当該変更では東電に原発を運転する「適格性」があるのかが問われていたにもかかわらず、その点で疑義を抱かせる問題について委員の誰もが知らされていないまま「適格性」が認められてしまった。新潟県知事や柏崎市長らが改めて審査をと求めるように、保安規定変更認可には過誤欠落がある。
更田委員長は原子力の安全性とセキュリティは異なると言い訳をしているが、それこそ「核セキュリティ文化」に反する考えだろう。保安規定変更にとどまらず、原子炉設置許可の要件である「原子炉の運転を適確に遂行するに足りる技術的能力」も東電には欠如している。
さらに、規制委員会・規制庁も東電も、核セキュリティを情報隠蔽の口実としてしか考えていないようにすら見える。今回も東電はそのようにふるまい、原子力規制員会も「事業者の判断」と容認している。「社会への発信」をうたう保安規定だが、その点でも欠落がある。
原子炉設置変更許可及び保安規定変更認可は取り消されるべきであり、原子炉運転の適格性・能力を欠く東電による柏崎刈羽原発の再稼働は許されない。
以上