原発耐震指針の改訂と意見募集対応に関する要請書

原子力安全委員会 委員長 鈴木篤之様
原子力安全基準・指針専門部会 耐震指針検討分科会 主査 青木博之様

原発耐震指針の改訂と意見募集対応に関する要請書

原子力資料情報室
2006年7月18日提出

 原子力施設の安全性に関して、多くの住民・市民が不安を抱いていることは各種の世論調査の結果が示しております。特に地震が多発する日本における原子力施設の耐震性には、大きな震災が伴った1995年の兵庫県南部地震や2000年の鳥取県西部地震、2004年の中越地震などによって多くの疑問が提示されてきました。現行の耐震指針が28年前(昭和56年)に作成されたものであり、地震、地盤等に関する科学的・社会的な知見の著しい進展が反映されていないのではないか、耐震の安全性の考え方がこのままで良いのか、など根本的な問題が提起されてきました。

 このような経過の中で原子力安全委員会が耐震指針の全面的改訂作業に取り組まれ、住民・市民からの意見募集に680件もの貴重な意見が寄せられたことは、改めてこの問題に対する関心の高さを示すものです。また同時にこれは貴委員会とりわけ耐震指針検討分科会が、寄せられた意見について真摯に検討し委員会で議論を行い、積極的に新「耐震指針」に反映する姿勢を求めているものであることは言うまでもありません。
www.nsc.go.jp/box/bosyu060523/youkou_taishin.html

 しかし耐震指針検討分科会第44回で提示された『「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(案)」に対する意見募集にご応募いただいたご意見に対する対応方針について(事務局整理案)』のような貴委員会ならびに貴分科会の対応は、
www.nsc.go.jp/senmon/shidai/taisinbun/taisinbun044/taisinbun-si044.htm
沢山の意見を寄せた人々の期待を大きく裏切る対応となっています。この事務局整理案は単なる整理ではなく、寄せられた意見に対する事務局の見解が縷々述べられています。なぜ耐震指針検討分科会での委員の議論の前に、このような文書が提示されるのでしょうか。寄せられた意見に対しては本来、分科会の委員間で検討が行われるべきものでありましょう。もし寄せられた意見への対応が事務局整理案のような形で処理されるのだとしたら、意見募集が全くの「形式的な手続き」であるという批判は免れません。

 多くの住民・市民が不安を抱いているのは、原発の耐震性のみならず、今回のような指針改訂作業における原子力安全委員会事務局の拙速な対応にもあることを指摘したいと思います。寄せられた680件の作成者のみならず、大多数の住民・市民が耐震指針の改訂作業に注目しています。私たち原子力資料情報室は、原子力安全委員会ならびに耐震指針検討分科会に対して、意見募集によって寄せられた意見、さらに今までの分科会での検討で不足している問題等々に対し、十分な議論を尽くすことを要請いたします。