【原子力資料情報室声明】IAEAタスクフォースの特例来日に疑義あり
2022年2月17日
NPO法人原子力資料情報室
ALPS処理水(汚染水)の調査を担当するIAEAのタスクフォースが14日に来日した。報道によれば、調査団は15人で、IAEA専門家7人に加え、中国や韓国など8カ国の外部研究者よりなる。
新型コロナとりわけオミクロン株により海外からの入国を禁止している中での特例扱いによる来日である。同タスクフォースが東電・政府が進める汚染水の海洋放出にお墨付きを与えるために来日するのなら、わたしたちはこの来日を断固として拒否する。
外部研究者を含むIAEAのタスクフォースが調査するのは、放出水の放射能特性(radiological characterization of the water)、放出過程の安全性、環境モニタリング、人々と環境の保護に関する環境影響評価、そして規制に関するものなどである。
東京電力HDは昨年11月に「海洋放出に係る放射線影響評価報告書」を公表し意見募集を行った。ところが、その結果を公表することもなく、応募締め切り3日後の12月21日に海洋放出関連設備の設置に関する許可申請を原子力規制委員会に提出した。未だに東電からは応募意見に対して何の対応もないが、何のための意見募集なのか、形式を整えるだけの手続だったとの批判は否めない。
また、評価内容もわずか2年間の放出を取出しただけのものであり、有機結合型トリチウムの評価をせず、長期にわたる放出結果としての環境への放射性物質の蓄積も考慮しない、極めて恣意的かつ不十分なものだった。
汚染水の海洋放出には漁業者団体をはじめ多くの市民が反対している。東電HDならびに政府は漁業者団体と、了解なしに海洋放出を実施しないと文書で約束している。にもかかわらず、これを無視して放出に向けた準備を進めるのは、明確な約束違反である。調査団はこのようなずさんな手続きや内容を棚に上げて、放出の「安全性」を評価すべきではない。
安価で短時間で済むとの理由で選択された海洋放出であったが、トンネル掘削費用や設備費用、放出にともなうモニタリング費用、漁業補償などを加えると安価という前提は崩れている。放出も30年程度かけることから、短時間で済むという前提もまた崩れている。
海洋放出による被ばくと環境汚染を避けるモルタル固化案*を改めて検討すべきである。
*http://www.ccnejapan.com/wp-content/uploads/2020/10/20201020_CCNE.pdf