【原子力資料情報室声明】3・11-東京電力福島第一原発過酷事故から11年
2022年3月11日
NPO法人 原子力資料情報室
東日本大震災がおきて11年の歳月が過ぎた。放射性物質がもつ時間(寿命)と人間社会の時間との違いに悩まされてきた11年間である。
巨大な地震と津波だけならば、自然の生態系も人間社会もそれなりの復興は可能である。だが、減衰を待つしかない放射能災害に対しては、何と無力なことかと痛感させられる。
東京電力の福島第一原発から環境に放出された放射性物質の中でもっとも大量に存在するセシウム137は、30年待ってようやく半分に減る。「半減期は30年」である。いままでの2倍ほどの時間を、さらに待たないと、半減することはないわけである。千分の一に減るには、半減期の10倍、300年を待たなければならない。
その放射性物質から出てくる放射線量がなかなか減らないために、事故の後始末の先行きが見通せない。デブリの取り出しも、汚染水の始末も、ふるさとへの帰還も、放射能の時間に縛られているのだ。
これらは、核を爆弾にではなく「平和利用するのだ」という悪夢がもたらした厳粛な事実である。「原子力は明るい未来のエネルギー」ではなかった。地震におそわれ、次いで津波がきて全電源喪失におちいった原発を制御できなくなった。水素爆発が次々におこった。そのプロセスの詳細は11年がたっても未だ判明していない。最近は、原子力は確立した技術なので、脱炭素を実現するために必要な技術だ、原子力を進めよう、との主張がある。しかし、いざという時に制御できない技術は確立した技術とはいえない。しかも、放射性廃棄物の始末の方法が今もってさだまらない。ここでも、時間という問題が越えられない壁になっているからだ。半減期が何万年という放射性物質が廃棄物の中に入っているのである。
ロシア軍の侵攻によるウクライナの戦火の中で、ザポリージャ原発やチェルノブイリ原発などが危険な状態にある。チェルノブイリ事故や福島事故は平和時におこったが、それらを上回る放射能災害が起こらないとはいえないのが現状である。
持続可能な社会、そして将来世代のために、原子力を利用しようとした現世代は原子力を終わらせる責任と義務がある。
以上