福島県沖地震(2022.3.16)による原発の被害状況

『原子力資料情報室通信』第575号(2022/5/1)より

3月16日23時36分に福島県沖で発生したマグニチュード7.4の地震で、宮城県・登米市、蔵王町と福島県・国見町、相馬市、南相馬市の5箇所の震度計で震度6強を観測した(直前の23時34分にほぼ同じ位置を震源とするマグニチュード6.1の地震が発生している)。防災科学研究所の強震動観測網のKiKnet川崎(宮城県、MYGH07地点)で最大加速度1,233ガル(三成分合成値)を観測した。津波注意報が発せられ、最大で0.2メートルの津波が確認された。

 東北電力の女川原発では1号炉の使用済み燃料プールの冷却系ポンプが停止したほか、全号炉での変圧器避圧弁の作動と放水口の放射線モニターの停止、3号炉の使用済み燃料プールのスロッシングなどが発生した。使用済み燃料プールの冷却系ポンプは地震による振動で保護回路が働いたためと推定されており、3月17日0時29分に運転再開した。

 福島第二原発では1号炉の原子炉建屋基礎マット上で最大加速度として161.3ガル(水平)と137.8ガル(上下)を観測した。新福島変電所側の設備トラブルで、500kV富岡線2号の送電が自動停止した。1・3号炉の使用済み燃料プール冷却ポンプが自動停止した。3月17日0時22分に3号炉の冷却ポンプが運転を再開し、1時43分に1号炉の使用済み燃料プールの冷却が再開された。4号炉の使用済み燃料プールでスロッシングが確認され、1号炉の原子炉建屋南西角のブローアウトパネルで10センチほどのすき間ができているのが確認されている。

 福島第一原発では6号炉の原子炉建屋基礎マット上で水平方向221ガル、上下方向202ガルの最大加速度を観測した。3号炉の5階オペフロに設置された地震計は水平540ガル、上下248ガルの最大加速度を計測している。

 直前の23時34分におきたマグニチュード6.1の地震により5号炉の使用済み燃料プール冷却ポンプが自動停止した(3月17日4時8分に運転再開)。陸側遮水壁で冷媒を供給するポンプが過電流検知により自動停止した。2号炉の使用済み燃料プールスキマサージタンクの水位が低下しているのがみつかったため、プール冷却設備を手動停止したところ、水位低下がとまった。5・6号炉の使用済み燃料プールおよび共用プールでスロッシングを確認した。共用プールでは、共用プール建屋1階天井クレーンの走行ができなくなった。

 一時保管エリア「a」に保管しているコンテナ6基が転倒し、内容物が出ていることを確認した。5基が使用済みの保護衣、1基が鉄くずを保管していた(地震の前日の3月15日には一時保管エリア「o」でコンテナ8基が転倒しているのがみつかっており、こちらは強風のためと推定されている)。

 1号炉の原子炉格納容器では、圧力が一時上昇し(0.13kPa→0.28kPa)、その後低下していること(0.28kPa→0.00kPa)が確認された。水位がゆるやかではあるが低下していて、地震前と比べて3月22日までに約40センチ下がっており、注水量を増やしてもなかなか上がってこないことがわかった。

 ALPSで処理された汚染水のタンクなど、160基が最大200ミリの位置ずれを起こしており、連結管もメーカーの推奨値を超えて変位しているものが17本みつかっている。          

(上澤千尋)

 

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