【原子力資料情報室声明】経済産業省は寿命延長の画策を止めよ
2022年11月15日
NPO法人原子力資料情報室
経済産業省は、第33回総合資源エネルギー調査会原子力小委員会(11月8日)において、原発の寿命延長に対して以下の3案を提案した。①現行の原子炉等規制法(原則40年追加20年)の上限を維持する、②上限を設けない、③上限を設けつつ追加的な延長の余地は勘案する(長期停止期間中の除外扱いを含む)、である(委員会資料5)。委員会では委員の多数は②を選ぶべきだと主張した。原子力小委員会はごく少数を除いて、原子力を推進する立場の委員で構成されており、そのような見解を示すことは自明だった。
そもそも長期運転を考えざるを得ない背景にあるのは、原発の新増設が高コストや地元了解などから極めて困難である事情を確認しておきたい。
資料5から見えてくるのは、いずれの場合も「利用政策の観点から延長の認定を行う」ことを目論み、法「改正」に持ち込もうとしていることだ。原子炉等規制法の「改正」は経産省の権限の及ばないことなので、この場合の法「改正」は電気事業法あるいはその施行令などであろう。これはすなわち、事業者の原子力利用のあり方に経産省の権限を及ぼそうとの意図だといえる。
原子力資料情報室は原子力規制委員会が60年超運転を容認したことに対して、これを批判する声明を10月11日に発表した。長期運転がもたらす重大事故のリスクはこの発表で詳しく言及した。
原子力規制委員会は、第47回会合において、以下の点を確認している。①経産省が法「改正」に動かなければ、規制委も規制法の改正に動かない、②長期停止期間中の除外扱いをしない(あくまで暦年で見る)、である。そして経産省が法「改正」に動いた場合には、30年経過後の10年ごとの検査を審査に強化するとの方針だ。だが、上記の声明で指摘した圧力容器の脆性劣化度合いの予測は確定しておらず、検査を審査に強化したところで、事業者の提出した文書をレビューするだけに留まり、実質的な「強化」とは程遠いものだ。
未曾有の被害をもたらし続けている福島原発事故への反省から原子力の推進と規制が分離され、原子力事業者は原発の運転に関し、原子力規制委員会の規制のもとで実施することになり、経産省の許認可権限は消失した。したがって、経産省の今回の動きはその福島原発事故の反省と逆行し、原子力利用への経産省の復権を画策するものと言わざるを得ない。
経産省の原子力利用計画(発電に占める原子力の割合を2030年時点以降20~22%とする)からすれば、経産省の権限をもって、強力に原子力を推進するために法「改正」となることは明瞭である。また、これによって、再生可能エネルギーの進展が阻害される恐れもある。さらに、上記原子力小委員会の席上、原発立地地域である杉本福井県知事は、運転期間の延長によって事故リスクが高まることに懸念を表明した。経産省は原子力政策の推進に固執する法「改正」の画策をやめよ。