【原子力資料情報室声明】原発再稼働への交付金拡充は誤りである
2022年11月22日
NPO法人原子力資料情報室
原発再稼働への交付金拡充は誤りである
経済産業省は、「基盤整備支援事業交付金」の規則を10月末に改正し、2022年4月以降に再稼働した原発がある道県への交付金を最大5億円から2倍の10億円に引き上げた。さらに、立地市町村に隣接する県にも最大5億円を出すとした。11月10日には資源エネルギー庁の保坂伸長官が島根県の丸山達也知事、鳥取県の平井伸治知事とオンラインで面談し、その旨を伝えたという。
GX実行会議で打ち出された「再稼働への関係者の総力の結集」が、現状では掛け声倒れに終わることが見込まれるためのテコ入れ策である。
こうした進め方は、たびたび繰り返されている。2004年には「プルサーマルは特別なことでないので、交付金の増額はしない」と言っていたのに電力会社が立地自治体に事前了解願を出しただけで1億円を交付、実際にプルサーマルが始まると交付金を上乗せということになった。2007年度からは高レベル放射性廃棄物処分場選定に係る交付金を、文献調査で2.1億円から10億円、概要調査で20億円から70億円に大幅増額をした。
それどころか2011年、福島第一原発事故の翌月に原発新設への交付増を決めている。加えて既設の原発に対しては、全額支給から発電実績に応じて交付額を決める方式に変更した。原発の停止中は稼働率を一律81%とみなして支給することにして停止を求めにくくし、さらに2016年には基準稼働率を原発ごとに上限68%に引き下げた。再稼働しなければ交付金が大幅に減額される仕組みである。
40年超運転に交付金が加算される仕組みは2010年度から始まっていた。
いずれも経済産業省が進めようとする政策が停滞・頓挫したものを立地自治体への交付金という形で転換を図ったもので、それだけ世論の意向に反していることが明白である。財政難に苦しむ自治体につけこむ誤った手法であり、撤回されるべきである。