【原子力資料情報室声明】東京電力福島第一原発事故から12年 未だ続く原子力緊急事態と規制・推進の一体化

東京電力福島第一原発事故から12年 未だ続く原子力緊急事態と規制・推進の一体化

2023年3月11日

NPO法人原子力資料情報室

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から12年を迎える今年、政府は、原発全面回帰政策を打ち出した。12年前、政府が発令した「原子力緊急事態宣言」は未だ解除されていない。事故は人々のくらしを一変させた。多くの人々が避難を強いられ、なりわいを失った。この間、避難者数は漸減してきたが、復興庁によれば福島県内・県外含め27,000人を超える方々がいまだに避難している(2023年2月時点)。

福島第一原発事故に至るまで、日本でも、大きな事故が繰り返し発生、また原発をめぐる数々のトラブル隠しや不正が内部告発などで暴露された。その度に、電力会社・原子力産業界全体は「猛省」し、「安全性を最優先に取り組む」ことが再確認されてきた。

福島第一原発事故での最大の教訓の一つは規制と推進の分離だった。事故後、独立した規制機関として2012年に原子力規制委員会が発足。規制の独立が安全の根拠となった。今度こそ、原子力利用は「安全性を最優先に取り組む」ことを誓ったはずだった。だが、それから11年たった今、私たちは、政府の原発回帰政策とともに、規制と推進が一体化した姿を改めて見せつけられている。

原子力規制委員会の事務局である原子力規制庁はもともと経産省の原子力安全・保安院であった組織が改組されたものだ。そのため、人事交流などによる政策のゆがみが懸念され、在籍していた推進官庁に職員が戻ることを禁止するノーリターンルールが設定された。ノーリターンルールは曲がりなりにも機能してきた。しかし、それだけでは十分ではなかった。今、原子力規制庁のトップ5はすべて経産省出身者で占められている。幹部職員の半分近くが経産省出身者で占められている。

「原子力規制組織に対する国内外の信頼回復を図り、国民の安全を最優先に、原子力の安全管理を立て直し、真の安全文化を確立すべく、設置」されたはずの原子力規制委員会は、設立以来、自らが主宰して市民と意見交換する場を一切設けてこなかった。一方、事業者とは数限りなく開催してきた。そして、12月、当室にあった内部通報によって、原子力規制庁が何らの制限なく、推進官庁と意見交換を繰り返していたことが明らかになった。原子力規制委員会はいったい誰のための組織なのか。

いま議論するべきは、原子力の推進ではない。政府は繰り返し福島原発事故の教訓と口にしている。であれば、まず劣化した規制の独立をまず議論すべきだ。

以上

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