連続ウェビナー報告「GX基本方針を徹底検証する」 第3回「核融合と核開発」

『原子力資料情報室通信』第587号(2023/5/1)より

 ウェビナーシリーズ「GX基本方針を徹底検証する」の第3回を4月11日に開催した。タイトルは「核融合と核開発」で講師はウェブサイト核情報を主宰する田窪雅文さんだった。氏は国際核分裂性物質パネルの日本メンバーの一人である。核融合は太陽や星を輝かせているエネルギーであり、水爆実験成功の後、「地上に太陽を」の標語を掲げ、その発電技術の開発が1950年代に始まった。70年後の今日、いまだに実験炉すら成功していないのが現状である。しかしながら、これをテーマとしたのは、GXに謳われている革新炉の対象である上、政府が核融合戦略有識者会議(座長、篠原弘道経団連副会長)を設置するなど積極的と思われるからである。なお、同有識者会議は2023年3月に「フュージョンエネルギー・
イノベーション戦略案」1)を公表している。
 今回のウェビナーでは、導入として、当室の松久保肇事務局長が上記有識者会合の戦略概要に触れた。そこでは「フュージョンエネルギーを新たな産業として捉え」、「世界のサプライチェーン競争に我が国も時期を逸せず参入」することが謳われている。今後GXの中でこれに関する費用が投入されていくことになると指摘した。
 その後に核融合の原理的な説明を行った。元素は原子核と電子で構成されており、これを超高温・超高圧の状態に置くとそれぞれバラバラのプラズマ状態になり、通常は反発するプラスの電荷を持った原子核同士が結合する。この時に膨大なエネルギーが放出される。核融合では重水素(Deuterium)とトリチウムが使われる。これらがプラズマ状態の中で結合してヘリウムが生まれる。D-T反応と言われる。
 核融合にはいくつかの方式があり、大きく磁場閉じ込め方式と慣性閉じ込め方式に分けられる。また、磁場閉じ込め方式はさらにトカマク型とヘリカル型に分けられる(図1参照)。
 

図1


 いくつかの課題がある。磁場閉じ込め方式ではプラズマ状態の維持時間や超高温、超高圧、高放射線量に耐えられる素材の開発、トリチウムの不足などである。福島第一原発の廃炉ではトリチウムを海に流そうとしているが、核融合の世界では貴重な素材である。民生用トリチウムはカナダの重水炉で製造されているが、遠くない将来に廃炉になり、その後の計画はない。リチウムと中性子の反応で製造する計画は進んでいない。核融合が実用化された時にはトリチウムが不足してしまう問題がある。さらに、設備は巨大になり、経済性も悪くなっていく問題もある。慣性閉じ込め方式(レーザー核融合)ではエネルギー効率が非常に悪い(田窪さんの報告参照)。
 政府は核融合に未来があるとか、すぐに実用化の時代が来るといった報道があるが、そもそも軽水炉さえコスト高でユーザーも見えない中、さらに難易度が高く、巨額の開発費が必要な核融合がエネルギーを生み出す選択肢になり得るのか、非常に疑問だ。

 

■レーザー核融合実験成功の意味
 田窪さんは上記のタイトルで、米エネルギー省が昨年12月13日の記者会見で発表した同5日の「レーザー核融合実験成功」について話した。「国立点火施設(NIF、National Ignition Facility)」でのこの実

験が「核兵器維持管理計画」の一部であることをさまざまな資料を紹介しながら説明した。実は、記者会見で登壇した関係者らは、NIFでの実験は、水爆の爆発過程を小規模で再現するものであり、それが核抑止に役立つと再三述べていると指摘した。
 だが、実験についての日本での報道のほとんどは、核融合エネルギー実用化にむけた素晴らしい成功だとし、実験と水爆の関係には触れなかった。
 NIFがある「ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)」は米国の3つある主要な核兵器研究施設の一つで、NIFはもともと、米国の核実験停止後、水爆の爆発研究を実験室内で行うためとして建設が決まったものだ。NIFの費用の全てが米エネルギー省の核兵器部門「国家核安全保障局(NNSA)」から出ている。この話が日本の主要紙では登場していない。
共同通信が例外的に「地下核実験を排除しつつ核抑止力の維持のための研究」と報じただけだ。ニューヨーク・タイムズ紙はより明瞭に「NIFの主要目的は、米国の核兵器維持に役立つ実験を行うことだ。このため、エネルギーの創出にとっての直接的意味合いは仮説的なものとなる」と報じた。
 水爆は第一段階に原爆を使い、そのエネルギーを使って第二段階の水素核融合爆発を起こす仕組みになっている。第二段階では、重水素化リチウム(核融合燃料)が第一段階で発生したX線で加熱・圧縮されると同時に、第一段階から来た中性子とリチウムの反応でトリチウムが生成する。これにより、重水素とトリチウムの核融合が起きる(図2参照)。

 

図2


 NIFの実験はこの第二段階の反応を再現するものだ。表面を金で覆った小さなシリンダーの両端からレーザー光を投射する。シリンダーの中心にDとTの入ったカプセルを置く。シリンダー内壁の金にレーザー光が当たって、X線が発生。それによる加熱・加圧で短時間の核融合爆発が起きる。(図3参照)。
 今回の実験では、2.05メガジュールのエネルギーを投入して、核融合反応で3.15メガジュールのエネルギーが得られたという。1.5倍となる。しかし、元の2メガジュールのエネルギーを投入するために300メガジュールのエネルギーが必要だった。

 

図3

 

 その意味で商業化までの道は遠い。さらに、ボブ・ロスナー元アルゴンヌ国立研究所長は、NIFは1日に1回2メガジュールのレーザー光を発射できる装置だが、発電設備のためには1秒に最低10回発射しなければならない、と述べている。
 NIFによる核融合実験成功の宣伝は、研究資金の確保のためでもある。実験を素晴らしいエネルギー研究の成功として称えることは、米国の「核兵器維持管理計画」の継続に手を貸すことを意味する。
 未臨界実験は第一段階、NIFは第二段階に関する実験で、双方により水爆のシミュレーション用情報を得ようという計画だ。未臨界実験は臨界ギリギリまでの現象を伴うものとの誤解があるが、発表されている内容を見る限り、プルトニウムの小片や薄片などを使用するもので、核分裂を起こす中性子の投入もなく、臨界とは関係のない実験だ。未臨界実験を批判しながら、NIFの水爆研究実験を称えることの矛盾が指摘された。

  (伴英幸

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